バスケBリーグ 広島ドラゴンフライズが初優勝 琉球に勝利

バスケットボール男子、Bリーグの今シーズンのチャンピオンを決めるファイナルの第3戦が28日行われ、広島ドラゴンフライズが琉球ゴールデンキングスに65対50で勝って、対戦成績を2勝1敗としてリーグ初優勝を果たしました。

先に2勝したほうが今シーズンのチャンピオンとなるBリーグのチャンピオンシップファイナルは28日の夜、第3戦が行われ、会場の横浜アリーナには平日の夜にもかかわらず1万2000人を超える観客が詰めかけました。

チームを引っ張った広島 中村 拓人選手(右)

第2戦で逆転勝ちした広島は、その勢いに乗って第1クオーター開始から主導権を握り23歳の司令塔、中村拓人選手がこのクオーターだけで7点を奪う活躍で17対12とリードしました。

琉球は第2クオーター、チームの中心、岸本隆一選手が厳しいディフェンスから相手のボールを奪って速攻につなげるなど守りからリズムを作り、一時、3点差に迫ります。

広島 中村 拓人選手

第3クオーターの開始直後、その岸本選手のドライブを中村選手がブロックするなど、広島が厳しいディフェンスで流れを取り戻し、山崎稜選手のスリーポイントシュートなどで得点を重ねて、広島が6点リードでこのクオーターを終えました。

第4クオーターも広島は体を張ったリバウンドやゴール下のディフェンスで相手の攻撃を自由にさせず、勝負どころでは中村選手がスリーポイントを決めて突き放し、広島が65対50で琉球に勝ってリーグ初優勝を果たしました。

広島は相手のボールを奪うスティールが7つ、相手のミス、ターンオーバーを19回誘ったディフェンスが光り、攻守に存在感を発揮した中村選手が12得点を挙げ、高い確率でスリーポイントを決めた山崎選手がファイナルのMVP=最優秀選手に選ばれました。

琉球は相手のディフェンスに苦しみ、得意のスリーポイントをわずか4本しか決められず、成功率も16.7%に抑えられてリーグ連覇はなりませんでした。

今季で引退 キャプテン朝山正悟「声援が最高の力に」

広島のキャプテンで、今シーズンで現役を引退する42歳の朝山正悟選手は「本当にファイナルの舞台にふさわしい展開でどっちに転ぶか分からないなか自分たちが我慢して勝利を信じて勝ちとった勝利だ」と試合を振り返りました。

そのうえで「自分はコートには立たなかったが、みんなと一緒に戦ったと胸を張って言える。広島は本当に最高のチームだ。僕自身もこんな終わり方はないと思う。最後までバスケできてうれしいし、皆さんの声援が最高の力になった」と感謝を口にしました。

司令塔 中村拓人「誰1人優勝を信じていない人はいなかった」

攻守にチームを引っ張った23歳の司令塔、中村拓人選手は「ブザーが鳴ったあとあまり実感がわかなかったがチームメートやファンが喜んでいる姿を見て優勝したんだなと改めて思った。誰1人として優勝することを信じていない人はいなかった。選手やスタッフ、ファンを含めて一緒に戦えて優勝できたことを誇りに思う」と話していました。

ファイナルMVP 山崎稜「全員の信じる力と信頼の形が優勝に」

また、ファイナルのMVPに選ばれた山崎稜選手は「広島がまさかここまで上がると思っている人はたぶん誰もいなかったと思うが、そういったものは一切気にせず自分たちを信じて戦った結果、きょうがあると思っている。チーム全員の信じる力と信頼の形が優勝につながった」と、ワイルドカードから勝ち上がり頂点に立ったチームの躍進に胸を張っていました。

琉球 岸本隆一「すべてが終わったという喪失感が大きい」

琉球の岸本隆一選手は「今は悔しいという実感もなく、長くシーズンを戦ってきて、きょう一日ですべてが終わったという喪失感が大きい」と敗戦を受け止められない様子でした。

そのうえで「応援してくれる人たちに今シーズンは何回も期待してもらって何回も失望させてというのをずっと繰り返してきた中で、最後に期待に応えられなかった。もう少し時間をかけて自分の中で整理をしてまた来シーズンに向かっていけたらいい」と話しました。

10得点を挙げたエースの今村佳太選手は「2連覇を目の前にして自分たちで取りこぼしてしまった。自分がもっとできていればという気持ちもあるし、負けたのは自分の責任だと思う。ただ、横浜アリーナまで沖縄のファンの皆さんが駆けつけてくれてここまで戦ってくれたことは本当に感謝している」と話していました。

広島 下克上の裏には…

初優勝を果たした広島の快進撃を支えた23歳の若きポイントガード、中村拓人選手。実は今シーズンの途中まではスターティングメンバーではありませんでした。

チームの先発ポイントガードは4歳年上の寺嶋良選手でしたが、試合で右ひざに大けがをしてチームを離脱したため、ことし3月になって先発としての出番が回ってきました。

それでも中村選手はすぐにチームの司令塔として中心的な存在になりました。

中村選手は「スターターになってからは本当に責任感というのをさらに感じるようになったし、メンタルは常に準備していたので常に僕の100%のパフォーマンスをしようということだけに集中していた」と話します。

チームはレギュラーシーズンで西地区の3位でしたが、ワイルドカードでチャンピオンシップに進出。そこから、各地区の1位のチームを次々と撃破する快進撃でファイナルまで駒を進めました。

その中心としてチームを引っ張ってきた中村選手はふだんから仲がいいという寺嶋選手の思いも背負って戦ってきました。

中村選手は「チャンピオンシップ入る前も良さんから『頼んだぞ』と連絡をもらった。良さんがけがで出られなくなった3月に言われたことばでもあって、そのときから僕は、ずっと良さんのために、頑張らないといけないと思っていた」と2人のやりとりを明かしました。

そのことばどおり、中村選手はチームが初めて進出したファイナルでも冷静なゲームメークや持ち味のドライブ、そして、相手の中心選手に対するハードなディフェンスでチームをけん引し続けました。

勝てばリーグ初制覇が決まる第3戦。中村選手はタイムアウトのたびに寺嶋選手の元へ向かってグータッチをしていました。

その理由について問われると「一緒に戦っている気持ちだった。僕自身は本当に良さんへの思いが強かったので、とにかく一緒に戦っているということを伝えたかった」と話しました。

そして「良さんとタッチしたおかげでシュートも入ったのかもしれない」と笑顔で話しました。

代役にとどまらない活躍を見せた中村選手に引っ張られ初めてのリーグ優勝を果たした広島。躍動する後輩の姿に、寺嶋選手は第3戦の試合終了を前に涙を見せていました。

格上のチームを次々と破り頂点まで登り詰めた広島の「下克上」の裏には、ケガによって離脱を余儀なくされた先輩から若き司令塔に託された“信頼”とそれに応えた23歳の強い思いがありました。

今シーズンのBリーグはかつてない盛り上がり

去年、日本で開催されたワールドカップで男子の日本代表が48年ぶりの自力でのオリンピック出場権を勝ち取り、注目を集めたバスケットボール。

その直後に開幕した、今シーズンのBリーグはかつてない盛り上がりを見せました。

26日の日曜日に横浜アリーナで開催された琉球ゴールデンキングスと広島ドラゴンフライズのファイナル第2戦には1万3203人の観客が詰めかけ、1勝1敗で迎えた28日の第3戦も平日の夜にもかかわらず、1万2000人を超える観客でアリーナは埋め尽くされたました。

平均入場者数が全チームの中でトップと、高い人気を誇る琉球だけでなく、ファイナル初出場の広島のファンも多く訪れ、大歓声に包まれました。

Bリーグの今シーズンの観客数はB1とB2の合計で429万人を超え、前のシーズンから124万人以上増えて、過去最多となり、バスケットボールの人気を裏付ける数字となりました。

さらに収容人数の85%以上の観客が入った「満員試合」の割合はB1では79%に上りました。

Bリーグは2026から構成が変わり、トップのカテゴリーが「Bリーグプレミア」となって、そこに参入するための基準の1つが「平均入場者数4000人」となっています。

今シーズンは、この平均4000人という数字を上回ったクラブが22チームに上り、昨シーズンの5チームから大幅に増えました。

これについてBリーグの島田慎二チェアマンは「4000人を上回ったのが22チームというのは開幕前に想定していなかった。予想を超えた結果だ」と驚きを口にしました。

高い人気を追い風に、この夏のパリオリンピックでは男子の日本代表が世界の強豪に再び挑みます。

世界最高峰のNBAで6シーズンを過ごした渡邊雄太選手も、来シーズンはBリーグでプレーする考えを明らかにしていて、代表選手たちが再びチームに戻ってくる来シーズンのBリーグも、さらなる盛り上がりへの期待は膨らみます。

さらに、各地で進む新しいアリーナの建設も人気を後押ししています。

今シーズンは新たにアリーナを建設した群馬クレインサンダーズや佐賀バルーナーズが大幅に観客数を増やしました。

4月には、人気クラブの千葉ジェッツが新たに本拠地とするアリーナもオープンし、今後も長崎やB2の神戸ストークスが本拠地とする神戸市などに新たなアリーナの建設が予定されています。

ただ、この人気を継続させていくには、日本代表の活躍や、アリーナの建設だけでなく、Bリーグの選手たちが魅力あるプレーをコートで表現し続けることが不可欠です。

今回のファイナルでは第1戦で琉球が岸本隆一選手や今村佳太選手のスリーポイントシュートで昨シーズン王者の力を存分に示し、第2戦では、ワイルドカードから勝ち上がり「下克上」を掲げる広島が中村拓人選手を中心とした激しいチームディフェンスで大逆転で雪辱を果たし、会場を沸かせました。

そして第3戦も両チームの意地がぶつかり合う魅力あふれる試合を見せ、最後は広島が初優勝を果たしました。

見どころあふれる今回のファイナルのような試合をいかに続けることができるのか。

バスケットボール人気をいっときのブームに終わらせないために、オリンピックを終えて迎える来シーズンこそが真価を問われることになります。