「夫(未届)」の住民票交付 男性カップル「本当によかった」

長崎県大村市から、続き柄の欄に「夫(未届)」と記載された住民票の交付を受けた、男性どうしのカップルが会見を開き、「大村市に引っ越してきて本当によかった」と喜びを語りました。

会見を行ったのは、松浦慶太さん(38)と藤山裕太郎さん(39)です。

2人はことし3月に大村市に転入し、市の地域おこし協力隊として活動する松浦さんが、5月2日に、引っ越し費用の助成を受けるために必要な住民票を得ようと、市役所で続き柄の欄に藤山さんを「夫(未届)」と記載して申請したところ、その場で受理されました。

会見の中で、松浦さんは「パートナー、夫と書いてもらった公的な書類は今までひとつもなかったので、大村市に引っ越してきて本当によかった」と喜びを語りました。

藤山さんは「これからも同じような自治体が増えて、多様性が認められ、住みやすい日本になればいいと思う」と話しました。

大村市長「自治体の裁量でできることについて 確認し対応」

一方、大村市の園田市長は、市役所で住民票を交付した経緯について説明し、「事実婚であることを認めるために交付したわけではない」と述べたうえで、事務処理については、総務省が示している要領の記載方法に基づき「内縁の夫婦の続き柄に準ずる」と判断したと説明しました。

そして、「パートナーシップ宣誓制度を導入している自治体として、自治体の裁量の中で、できることについては、できるかぎりの対応を現場で確認して対応したので、問題だとは考えていない」と話しました。

専門家「住民に近くで寄り添う自治体だからできた」

大村市が男性どうしのカップルに対し、事実婚の状態であることを示す「夫(未届)」と記載した住民票を交付したことについて、性的マイノリティーの人権に詳しい青山学院大学の谷口洋幸教授は、「この記載が同性カップルにも認められたのは、すごく重要で、意味があることだ」と評価します。

大村市の対応について、谷口教授は「同性カップルを『結婚相当の関係』と認めるパートナーシップ制度を導入していながら、自治体の裁量で対応できる住民票の記載に矛盾があると気付いたのではないか。住民にいちばん近くで寄り添う地方自治体だからこそ、できたことだと思う」と話し、ほかの市区町村でも広がる可能性があるとしています。

そのうえで、「国は、実態にあった法整備や社会制度を作っていく必要がある」と話していました。