将棋「名人戦」第5局 藤井八冠が豊島九段に勝利し初防衛

将棋の八大タイトルで最も歴史のある「名人戦」の第5局が北海道で行われ、藤井聡太八冠(21)が挑戦者の豊島将之九段(34)に勝って4勝1敗で「名人」を初めて防衛し、八冠を維持しました。

「名人戦」七番勝負は去年、最年少で「名人」のタイトルを獲得した藤井八冠が、ここまで3勝1敗と初めての防衛まであと1勝に迫っていました。

第5局は26日から北海道紋別市で始まり、2日目の27日は、先手の藤井八冠が26日の対局終了時に次の1手を書いた「封じ手」を立会人が開封して対局が再開しました。

対局は藤井八冠が自陣の守りを固めたのち攻めを仕掛けると、豊島九段も応じて激しい攻め合いになります。

しかし、藤井八冠が持ち駒の角や銀を活用するなどして徐々に豊島九段の守りを崩して玉を追い詰め、午後7時49分に豊島九段が99手までで投了しました。

この結果、藤井八冠が4勝1敗で七番勝負を制して「名人」のタイトルを初めて防衛し、八冠独占を維持しました。

藤井八冠は、ことしすでに「王将」と「棋王」のタイトルも防衛していますが、現在並行して行われている「叡王戦」五番勝負では、挑戦者の伊藤匠七段(21)にここまで1勝2敗と、防衛に向けて1敗もできない「角番」に追い込まれています。

次のタイトル戦「叡王戦」の第4局は今月31日に千葉県柏市で行われます。

藤井八冠「防衛という結果出せてよかった」

勝利した藤井聡太八冠は、豊島将之九段が飛車を横に移動させる「振り飛車」の戦型をとったことについて「考えられる作戦の1つかなと事前に思っていました。ずっと手が広かったので、急所がつかめないまま指していたところが多かったと思います。終盤はどういう寄せ方がいいか分かっていませんでしたが、金を打って攻めがつながりそうな形かと思いました」と話していました。

そのうえで、初めての「名人」防衛について「いろいろ反省点もあったと思いますが、防衛という結果を出せてよかったと思います。駒組みの段階から1手1手、手探りになるような将棋が多かったですが、形勢判断や構想の立て方に課題が残りました。これからも対局が続くので引き続き精いっぱい頑張りたいと思います」と話していました。

一方、敗れた豊島九段は「端を突いて受けられなかったら『振り飛車』にしようと思っていました。封じ手の前のあたりで悪くなって、そのあとはかなりきつい展開でした。シリーズを通して、序盤と中盤で悪くなると厳しいと思っていましたが、全体的によくない手が多かったと思います。名人戦の経験を生かして今後も頑張っていけたらと思います」と話していました。

藤井八冠「構想力が問われる将棋が続いた」

「名人」を初めて防衛した藤井聡太八冠は、感想戦のあと、記者会見に臨みました。

この中で藤井八冠は豊島将之九段との対局について「これまでもタイトル戦で何度も対戦していますが、今回の名人戦は序盤から構想力が問われる将棋が続いたと感じています。内容という点ではうまくいかないところも多くて、前の名人戦と比べてそれほど手応えがあったわけではないですが、いろいろな戦型や展開の将棋を指して、すごくいい経験ができたと思っています」と振り返りました。

そのうえで藤井八冠は今年度、ここまでの対局について「対局の結果や内容がよくなく、少なからずミスが出てしまっている」と述べたうえで、「要因というのははっきり分からないですが、少し読みの精度が下がってしまっていることがあります。これまで経験の少ない将棋になることが多かったので、そういった局面における判断力がまだ十分ではないのかなと思います」と話していました。

そして、1勝2敗とリードされて迎える「叡王戦」の第4局については「角番という状況で迎えることになりますが、臨む気持ちや、やるべきことは今までと変わらないと思っているので、対局までに準備をして全力を尽くしたい」と意気込みを語りました。