晴海フラッグ 法人所有4分の1以上の街区も 投資目的の実態は

東京オリンピックの選手村を改修し、ファミリー向けのマンションを整備するとされた「晴海フラッグ」について、NHKが1000戸以上の部屋の所有者を登記簿から調べたところ、全体の4分の1以上が法人だったことがわかりました。その多くは投資や不動産業で、中には38戸を所有しているところもあり、元選手村が、投資対象となっていた実態が明らかになりました。

東京・中央区にある「晴海フラッグ」は、東京オリンピックの選手村を改修した巨大マンション群です。

土地を所有する東京都が総事業費、およそ540億円をかけて、道路などを整備し、三井不動産レジデンシャルなど11の事業者が、ファミリー層向けの分譲マンションなどを建設しましたが、販売時の抽せんで、最高倍率が266倍となるなど、希望者が殺到する事態となっていました。

このうち、ことし1月から入居が始まり、最も戸数の多い1089戸が入る「サンビレッジ」という街区について、NHKが登記簿をもとに部屋の所有者を調べたところ、全体の4分の1以上の292部屋が、法人名義で取得されていたことがわかりました。

棟によっては、法人名義の部屋が全体の4割以上を占めているところもありました。

法人のうち、最も多く所有していたのが、福岡市の投資会社で38戸、不動産売買などを行う都内の会社が17戸、同じく都内の会社が10戸で、個人名義でも、10戸所有している人もいました。

東京のマンションが高騰するなかこうした部屋の多くは、投資用として賃貸や転売に出されているとみられ、取材に応じた3戸を所有する法人の代表は、「分譲価格が安かったので通常の2倍近い利回りで貸せている。販売時の1.9倍の価格で外国人に転売して多額の利益を得た知人もいた」と話していました。

“晴海フラッグ”とは?

東京・中央区の湾岸部にあるマンション群、「晴海フラッグ」は、東京オリンピック・パラリンピックの選手村として活用された宿泊施設を、マンションとして改修しました。

この再開発は、都がおよそ540億円かけて造成工事や道路整備などを行い、三井不動産レジデンシャルを代表とする11社が建物の整備や改修を担う官民連携の事業で、地権者でもある都が事業全体を監督しています。

「ファミリー層向けを中心に」という方針のもと、17棟の分譲マンションと、現在建設中の2棟のタワーマンションを整備するほか、商業施設や学校なども作り、1万2000人が住む新たな街が誕生することになっています。

抽せん倍率は最高で266倍に

「晴海フラッグ」に17棟ある分譲マンションは、5年前の2019年4月から販売が始まりました。

周辺相場と比べて、価格が割安だったことを理由に、販売を重ねるごとに一般世帯だけでなく、投資目的の法人などによる申し込みも殺到しました。

1回目は、抽せん倍率が平均で2.57倍、最も人気の高い部屋で71倍でしたが、2022年5月からの5回目に、平均で13.8倍、最高で96倍となり、2023年1月からの7回目では、平均で71.1倍、最高で266倍に達しました。

申し込みの戸数に制限はなく、資金があれば、何部屋でも申し込みができたため資金力のある法人や投資家に有利だという声が上がり、事業を監督する東京都は販売事業者に改善を求め、以後のタワーマンションの応募については、2部屋までに制限されました。

1079戸のうち292戸が法人名義

NHKは、「晴海フラッグ」の所有者の実態を調べるために、最も戸数が多い街区、「サンビレッジ」にある6棟のあわせて1089戸の登記をすべて取得し、内容を分析しました。

その結果、まだ登記されていない10戸を除く、1079戸の所有者のうち、全体の4分の1以上にあたる292戸が法人名義でした。

このうち、最も多い38戸を所有していたのは、福岡市の投資会社で、会社のホームページには、晴海フラッグについて「価値上昇を予想し、分譲初期から積極的に参加。安定的な投資収益を確保」と記していました。

次いで、都内で不動産売買などを行う会社が17戸、別の都内の会社が10戸、都内の医療法人が7戸、札幌市の投資会社が6戸などとなっていて、あわせて45の法人が2戸以上の部屋を購入していました。

6棟ごとに集計したところ、最も多い棟では、全体の4割以上の部屋が法人名義でした。一方、個人名義では、最も多いケースで10戸を所有していました。

複数購入の法人代表 “ほかの物件と比べ投資効率がいい”

「晴海フラッグ」で複数の部屋を持つ法人の代表が取材に応じ、購入した理由を語りました。

このうち、都内を中心に、総額30億円規模の不動産を所有する法人の代表は、投資用として5000万円から6000万円ほどの3つの部屋を購入しました。

現在、すべての部屋を家賃30万円ほどの賃貸として運用しているということですが、ほかの物件に比べて投資効率がいいということです。

法人の代表は、「周辺相場より安い価格で買えたので、利回りが6%ほどとほかの物件と比べても2倍近くある。海外からも人気があるようで購入時の1.9倍で転売して利益を得た知人もいた」と話していました。

東京都 “投資目的で多数の部屋購入は想定できず”

こうした事態を、地権者で事業監督者の東京都はどのように受け止めているのか。

「晴海フラッグ」の開発を担当する東京都都市整備局の井川武史 市街地整備部長は、「2019年の販売当初は、駅から距離がある立地などから売り切れるのか懸念があり、現在のような投資目的で多数の部屋が買われるような状況は想定できず、販売において制限は設けていなかった。急激に状況が変化したと捉えている」と話してました。