【詳細】イスラエル・パレスチナ 中東情勢(5月27日)

イスラエル軍は26日、ICJ=国際司法裁判所から攻撃をただちに停止するよう暫定的な措置を命じられたガザ地区南部のラファを空爆し、現地の保健当局によりますと45人が死亡しました。

イスラエル軍は「イスラム組織ハマスの拠点を精密に空爆した」などと主張していますが、ラファへの攻撃が繰り返され、住民の犠牲が増え続ける現状に国際社会から非難の声が高まっています。

※中東情勢に関する日本時間5月27日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 ラファの住民避難地域に空爆も正当化

イスラエル軍は26日も、ガザ地区各地で軍事作戦を続けています。

ガザ地区の保健当局は26日、イスラエル軍の攻撃で過去24時間に81人が死亡し、これまでの死者数は3万5984人にのぼっていると発表しました。

さらに、ガザ地区の保健当局によりますとイスラエル軍が26日夜、ラファ北西部の多くの住民が避難する場所を空爆し、これまでに45人が死亡し、このうち23人は子どもや女性、それに高齢者だということです。
また、249人がけがをしたということです。

これに対してイスラエル軍は、「ハマスが活動するラファの拠点を空爆した。正当な標的に対して、精密に行われた」などと攻撃を正当化し、ハマスの幹部2人を殺害したと主張しています。

そのうえで、複数の民間人に被害が及んだという報告を把握し、状況を調査しているとしています。

この攻撃について、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は27日、現地にいる同僚や避難している人々の安否が確認できないとしたうえで、「ガザはこの世の地獄だ。安全な場所はどこにもない」とSNSに投稿しました。

イスラエル軍は、ICJが24日にラファでの攻撃をただちに停止するよう暫定的な措置を命じたあともラファへの攻撃を繰り返していて、住民の犠牲が増え続ける現状に国際社会から非難の声が高まっています。

ハマス テルアビブに向けてロケット攻撃

イスラム組織ハマスは26日、イスラエルのテルアビブに向けてロケット弾による攻撃を仕掛けたと発表しました。

イスラエルのメディアによりますと、テルアビブへの攻撃は4か月ぶりで、攻撃の応酬が激しくなることが懸念されます。

EU上級代表 イスラエルにICJ命令に従うよう求める

ICJ=国際司法裁判所は24日、ガザ地区での人道状況は悪化の一途をたどっているとして、イスラエルに対し、ラファでの攻撃を直ちに停止し、人道支援が大規模に行われるようラファの検問所を開放することなどを暫定的な措置として命じましたが、その後もイスラエル軍は攻撃を続けています。

EUのボレル上級代表は26日の会見で、「ラファとその周辺でイスラエルの軍事作戦は続き、主要な検問所は閉鎖されて人道支援物資を入れることができないままだ。これらは国際司法裁判所の判断に反して行われている」と述べました。

そして、裁判所の命令には法的拘束力があり、確実に履行すべきものだとして、イスラエルに対し命令に従うよう求めました。

一方、ボレル上級代表は、26日にイスラエルに対してイスラム組織ハマスが行ったロケット弾による攻撃についても、「こうしたこともやめなければならない」と述べたうえで、停戦と人質の解放、それにガザ地区の人道状況の改善のため国際社会が力を尽くすべきだと訴えました。

林官房長官 “ICJの命令 誠実に履行されるべき”

林官房長官は27日午後の記者会見で、「ICJ=国際司法裁判所の暫定措置命令は当事国を法的に拘束するものであり、誠実に履行されるべきものだ」と指摘しました。

その上で、「多数の避難民が集中するラファで軍事作戦が継続することで、さらに多くの犠牲者が発生し、人道支援活動がますます困難になるような事態は許容できず、この地区での全面的な軍事作戦には反対する。改めてすべての当事者に対し、国際法の順守や関連する国連安保理決議に基づき誠実に行動することを求める」と述べました。

“戦闘休止交渉が再開の見通し” 報道も先行き不透明

行き詰まっている戦闘の休止や人質の解放をめぐる交渉について、アメリカのCNNテレビはエジプト当局者の話として、首都カイロで28日に再開される見通しだと伝えました。

ただ、交渉をめぐっては、双方の立場の隔たりは大きく、先行きは依然として不透明です。

ハンユニスの病院で燃料不足 命の危険も

ナセル病院 タンクからバケツで燃料を取り出す様子

ガザ地区の病院では、検問所の閉鎖や人道支援物資の搬入が滞っている影響で、発電用の燃料が不足していて、このまま医療機器が動かせなくなれば患者の命が危険だと訴えています。

NHKガザ事務所を含む現地メディアの取材に応じたのは、南部ハンユニスのナセル病院です。

ナセル病院では5月に入ってから医療機器を動かすための発電機に使用する燃料が手に入らなくなっていて、25日は備蓄用のタンクに残されたわずかな燃料をバケツで取り出して発電機を動かしていました。

また、新生児集中治療室では12人の新生児に治療を行っていますが、発電機が動かせなくなれば保育器が使用できず、死亡する可能性があると訴えていました。

ナセル病院のアーテフ・フート院長は、「ナセル病院ではこのままでは燃料不足からすべての発電機が停止してしまう。すぐに燃料が搬入されなければ患者や新生児が死んでしまうだろう」と話していました。

ナセル病院にはことし2月、イスラエル軍がイスラム組織ハマスの戦闘員が活動しているなどと主張して突入していて、ガザ地区の保健当局はその際も停電により酸素の供給ができなくなって少なくとも8人の患者が死亡したとしています。