ラグビー リーグワン 東芝ブレイブルーパス東京が初優勝

ラグビーリーグワンのプレーオフトーナメントの決勝が東京・国立競技場で行われ、東芝ブレイブルーパス東京が24対20で埼玉パナソニックワイルドナイツに勝って初めての優勝を果たしました。

ブレイブルーパスは前身のトップリーグ時代を含めて14シーズンぶりの国内リーグ優勝です。

東芝ブレイブルーパス東京が競り勝ち初優勝

決勝はレギュラーシーズン16戦全勝のワイルドナイツと2位のブレイブルーパスの顔合わせとなり、国立競技場にはリーグワン最多となる5万6486人の観客が詰めかけました。

前半、ワイルドナイツはスタンドオフの松田力也選手が2つのペナルティーゴールを決めて6対0とリードしました。

一方、ブレイブルーパスは持ち味のスクラムで優位に立ち徐々にペースを握ると、27分にスクラムから右への展開で日本代表のウイング、ジョネ・ナイカブラ選手がトライを決め、ニュージーランド代表のリッチー・モウンガ選手のトライ後のキックも決まって7対6と逆転しました。

ブレイブルーパスは前半35分にもモウンガ選手がペナルティーゴールを決めて、10対6で試合を折り返しました。

ワイルドナイツ 堀江翔太選手

ワイルドナイツは後半開始から今シーズンかぎりでの引退を表明している堀江翔太選手などフォワード最前列の3人を交代して巻き返しを図り、両チームともトライを2つずつ奪って24対20とブレイブルーパスの4点リードで終盤に入りました。

ブレイブルーパス 森勇登選手が逆転トライ

そして終了間際の39分、ワイルドナイツは連続攻撃から途中出場のウイング、長田智希選手がトライを決めて土壇場で逆転したかと思われましたが、ビデオ判定の結果、トライにつながる前の堀江選手のパスがスローフォワードとなってトライが取り消され、24対20でブレイブルーパスが接戦を制しました。

胴上げされるリーチ マイケル選手

ブレイブルーパスはリーグワン3シーズン目で初めての優勝で、前身のトップリーグ時代を含めて14シーズンぶりに国内リーグの頂点に立ちました。

一方、ワイルドナイツは昨シーズンに続いて決勝で敗れ、堀江選手の有終の美を飾ることができませんでした。

リーチ マイケル「やっと勝つことができてうれしい」

学生時代を通じて自身初の優勝となったブレイブルーパスのキャプテン、リーチ マイケル選手は、試合後にグラウンドで行われたインタビューで「本当にハラハラする試合だった。やっと勝つことができてうれしい。さすがのワイルドナイツで、最後の最後まで戦うチームだった」と喜びを語りました。

試合後の会見でリーチ マイケル選手は、日本代表で長年一緒にプレーした堀江選手の引退について聞かれると「堀江さんと最後まで同じピッチに立つことができたが、勝った瞬間、寂しさ半分、勝った喜び半分で複雑な気持ちだった」と答えました。
人生初めてという胴上げには、ぎこちない「気をつけ」の姿勢で臨み「すごくしっかり体幹を固めて臨みました。もっと上げて欲しかった」と笑顔で話しました。
そして「府中に優勝トロフィーを持って帰ることができてうれしい。勝ったことによって、見ていた学生もブレイブルーパスでプレーしたい選手も増えると思うし、ファンも増えると思う。非常に意味は大きいと思う」と話し、自身初の優勝の喜びをかみしめていました。

リッチー・モウンガ「選手全員がすばらしい努力」

チームの司令塔、スタンドオフのリッチー・モウンガ選手は「まずはじめにワイルドナイツの選手に感謝したい。選手全員がすばらしい努力をして優勝できたことをうれしく思う」と話しました。

ワイルドナイツ 堀江翔太「悔いないラグビー人生」

ワイルドナイツの堀江翔太選手は「最後は負けてしまったが、プロ生活15年間、幸せな、最高のラグビー人生が送れたと思う。相手は非常にフィジカルがあり、どうなるか分からない試合で最後の最後で運がついてこなかった。プロとして最後負けてしまったら意味がないと思うが、今まで勝ち続けたことは誇りに思うし、出ていないメンバーを含めて胸を張っていいと思う」と落ち着いた様子で試合を振り返りました。
そのうえで引退について問われると「ここからは嫌なプレッシャーから解放されると思うとホッとしている。本当に悔いなく、ラグビー人生を終えることができた。生まれ変わってもラグビーはしません。それくらい幸せなラグビー人生を送れたと思う」と笑顔で話し、最後まで独特の“堀江節”で会場を沸かせていました。

◇勝負を分けたビデオ判定 堀江選手は

一進一退の攻防が続き、どちらが勝つかわからない試合展開の中で勝負を分けたスローフォワードの反則。そのパスを出したのは、くしくも今シーズンを最後に引退する堀江翔太選手でした。

それでも試合後の堀江選手はいつもと変わらない落ち着いた様子で報道陣の取材に応じ、その場面を振り返りました。

「後ろに投げたつもりだったんですけどね。最後に運がついてこなかったです。『全勝優勝で引退』という漫画みたいなことにはなかなかいかなかった。うまくいかんなあという気持ちです」

試合終了まで残り1分。明らかにブレイブルーパスの選手たちの足が止まり、ディフェンスが後手にまわった時間帯で、ボールを大きくまわしてスペースを使うワイルドナイツらしい攻撃が形になった瞬間でした。

しかし、ビデオ判定の結果、その攻撃が結実することはなく、2シーズンぶりの優勝につなげることはできませんでした。

ワイルドナイツの司令塔、松田力也選手は試合後にグラウンド上で堀江選手と会話した際「パスは後ろに出してください」と冗談で伝えたことを明かしました。

その真意について松田選手は「堀江さんにあのプレーを引きずってほしくなかった。ここは仲のいい僕が言わないといけないと思い、伝えました」と笑顔で話し、最後の試合を終えた先輩への気遣いを見せていました。

(左から)リーチ マイケル選手 松田力也選手 堀江翔太選手

ワイルドナイツの地元 埼玉 熊谷でも応援

決勝で惜しくも敗れた埼玉パナソニックワイルドナイツの地元、熊谷市ではファンから選手をたたえる声が聞かれました。

ワイルドナイツが拠点とする熊谷ラグビー場の近くにあるカフェには、地元のファン10人余りが集まり、決勝をテレビで見守りました。

ワイルドナイツは前半の途中で逆転されて以降、追い上げる形になりましたが、後半、トライを奪い合う展開になるとワイルドナイツが得点をあげるたびに歓声があがっていました。終了間際には逆転かと思われたトライがビデオ判定の結果、その前のパスに反則があったため取り消されると、会場は静まり返りました。

ワイルドナイツはそのまま敗れましたが、ファンは拍手を送るなどして選手たちをたたえていました。

40代の男性は「悔しいですが、決勝にふさわしい見ごたえのある試合でした。来年こそは、王座を奪還できるよう応援したいです」と話していました。

50代の男性は「とてもよい試合で、熊谷の誇りだと改めて感じました。堀江選手は引退されると聞いていますが、できることなら次のシーズンもプレーを見たいです」と話していました。