円安で輸入穀物の価格高騰 畜産農家は国産飼料への切り替えも

円安などの影響で輸入品の価格が上昇する中、畜産の飼料用の穀物も高騰しています。飼料用トウモロコシの輸入価格はここ数年で2倍ほどに上昇。

こうした輸入価格の高騰をむしろ「チャンス」と捉えている現場を取材しました。

輸入飼料に頼る畜産業

豚や鶏などの畜産業では、生産性を高めるため、トウモロコシや大麦などを組み合わせた配合飼料が使用されています。

農林水産省によりますと、畜産用の飼料の自給率は2022年度で26%で、この30年間横ばいとなっています。

特に、トウモロコシは輸入量が1100万トンに対して、国内生産量は1万トンと、およそ0.1%にとどまっています。

自給率が低い背景には、農地が限られていることに加え、コストが高く輸入品に価格面で対抗できないことなどが影響してきました。

国産の飼料用トウモロコシ

しかし、このところの円安やウクライナ侵攻などで、輸入の配合飼料の価格は上昇していて、農畜産業振興機構の統計では、遺伝子組み換えも含むトウモロコシ1キロあたりの輸入価格が、10年前の27円から、昨年度は43.3円に高騰しています。

一方、飼料用のトウモロコシの生産者団体、「日本メイズ生産者協会」によりますと、扱っているトウモロコシのうち、半数以上を占める北海道産の昨年度の手取り価格は、1キロあたり45円となっています。

安価な遺伝子組み換え商品が多くを占める輸入品とは単純に比較できませんが、国産並みとなっています。

今後の動向について、農林水産省は、昨年度アメリカのトウモロコシの生産量が過去最大となり世界市場の相場価格が落ち着いてきているものの、為替や輸送コストも関わってくるため見通せないとしています。

国産に切り替える畜産農家も “ブランド価値高めたい”

輸入の飼料が高騰する中、畜産農家の中には、国産に切り替える動きも出ています。

北海道登別市の養豚場では、およそ1万頭の豚を飼育していて、エサには、小麦やトウモロコシなどを組み合わせた配合飼料を使っています。

ブランド価値を高めるため、国産の飼料への切り替えを目指していて、小麦の一部は、およそ6年前から北海道産を使用していました。

一方、トウモロコシは国産の価格が高いためすべて輸入に頼ってきましたが、このところの円安などの影響で価格差が縮まったことや、為替相場に左右されないといったメリットがあることから、2か月前に国産の導入に踏み切りました。

養豚場によりますと、物価高の影響で電気代や衛生管理にかかる費用などが値上がりし、1頭あたりのコストが5000円以上増え厳しい経営を強いられているということで、国産の割合を増やしてられれば利益率の改善につながると期待しています。

養豚場を経営する中岡亮太さん
「輸入のトウモロコシは価格が変動しどうにもならない問題があるが、北海道産のトウモロコシは安全面でも信頼できるため、今後も使用していきたい」

栽培農家は販路拡大に期待

北海道長沼町で農業を営む柳原孝二さんは、国によるコメの生産調整いわゆる「減反政策」を受けて、小麦や大豆を栽培するようになり13年前からはトウモロコシの栽培を始めました。

トウモロコシは、ほかの作物に比べて栽培が難しくないうえ、水はけの良い土壌を作ることもできるなど将来性が見込まれるとして、おととし、全国の生産者と団体「日本メイズ生産者協会」を立ち上げ、飼料用のトウモロコシの普及に取り組んできました。

柳原さんが栽培を始めた当初は、輸入品と価格差に大きな開きがあり、国産のトウモロコシを扱う畜産業者は少なかったものの、このところの輸入品の高騰で、問い合わせが増えているということです。

団体では、国産の飼料は為替に左右されず安定的にエサを供給できることをアピールし、販路の拡大と定着を目指すとともに、課題となっている増産に取り組んでいきたいとしています。

柳原孝二さん
「国産トウモロコシを増やすことで、畜産側と供給する側の経営の安定につながってほしい」