クマ出没増加 市街地などで特例的に猟銃使用可能とする方針案

クマによる被害が相次ぎ、市街地への出没も増加している中、国の専門家などによる検討会は、法律で禁止されている市街地や住宅地での猟銃の使用について、被害が出るおそれがある場合は、警察官の指示がなくても特例的に可能とする方針案を取りまとめました。

環境省によりますと、クマの被害を受けた人は昨年度、全国で219人と過去最悪で、去年12月の被害の67%は市街地で発生したということです。

クマの駆除をめぐっては、市街地や住宅地でハンターなどが猟銃を使用することは、危険性が高いことから鳥獣保護管理法で禁止され、警察官の指示があった場合や捕獲者が緊急と判断した場合にかぎって使用が認められています。

クマによる被害が深刻化する中、環境省が設置した専門家や警察庁などによる法律の運用について議論する検討会は、
▽住宅地や市街地でクマの被害が出るおそれがある場合や、
▽クマが建物などに立てこもっている場合は
警察官の指示なしで特例的に猟銃を使用できるよう法律を改正すべきだとする方針案を取りまとめました。

環境省によりますと、検討会はことし7月に方針を決定し、方針を受けて法改正の手続きが進められる見通しだということです。

秋田県 佐竹知事「被害防止に大きな効果 まずは一歩前進」

クマによる被害が相次ぐ中、国の専門家などによる検討会が市街地や住宅地での猟銃の使用を特例的に可能とする方針案を取りまとめたことについて、秋田県の佐竹知事は「クマによる被害を防止するために大きな効果があり、まずは一歩、前進だ。なるべく早く法改正を進めてほしい」と述べました。

そのうえで安全面での懸念については「猟銃を使用していい場面や、責任の所在があいまいだと猟友会などが発砲しようにもできない。事故はあってはならないが、万が一、事故が起きた場合も想定してしっかりと規定を定めてほしい」と述べました。

専門家「資格を持った人だけが撃てるようにすべき」

クマによる被害が相次ぐ中、国の専門家などによる検討会が市街地や住宅地での猟銃の使用について特例的に可能とする方針案を取りまとめたことについて、クマの生態に詳しい東京農業大学の山崎晃司教授は「猟銃使用の道が開かれることはよいが、銃器を扱う人はプロフェッショナルに限るべきだ」と指摘しました。

そのうえで、山崎教授は「使う銃の種類によっては弾が遠くまで飛んでしまうし、取り扱う人も訓練が必要だが、現状ではなかなか経験が積めない。講習や打ち合わせを重ね、資格を持った人だけが撃てるようにすべき」と述べ、銃を取り扱う人の資格や条件、扱う銃の種類など、事前の体制作りの必要性を訴えました。