【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月23日)

イスラエルはパレスチナのガザ地区南部ラファへの攻撃を続ける一方で、戦時内閣の閣議で人質解放などのための交渉を継続することを決定し、行き詰まっている交渉が進展するのかが焦点です。

※中東情勢に関する日本時間5月23日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 ガザ地区南部ラファへの攻撃続ける

イスラエル軍は23日もガザ地区南部ラファへの攻撃を続けていて「住民の被害を避けながら作戦を続け、複数のハマスの戦闘員を殺害し多くの地下トンネルを破壊した」と発表しています。

しかし、ラファでは検問所の閉鎖などによって人道状況はさらに悪化していて、WFP=世界食糧計画は22日、過去2週間にガザ地区に搬入された人道支援物資の量は去年12月以降最も少ないとして「支援活動は崩壊寸前だ」と訴えています。

戦闘休止と人質解放に向けた交渉の進展 楽観できず

行き詰まっているイスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放に向けた交渉について、イスラエルのメディアは関係者の話として、22日に戦時内閣が閣議を開き、交渉を継続することを指示し交渉団により柔軟に協議する余地を与えることが決定された、と伝えています。

また、カタールメディアも23日、仲介役のエジプトが交渉の再開のために関係者と連絡を取っていると伝えています。

ただ、ハマス側は一貫して完全な停戦を求め、軍事的な圧力のもとでは交渉に応じられないとしていただけに、イスラエル軍がラファへの攻勢を強める中、実際に交渉が進展するのか楽観できない情勢です。

欧州3か国がパレスチナを国家として承認表明 緊張高まる懸念

アイルランド、スペイン、ノルウェーの3か国の首相は22日、パレスチナを国家として承認すると相次いで表明しました。

パレスチナ暫定自治政府によりますと、140か国以上がパレスチナを国家として承認していますが、EU=ヨーロッパ連合の加盟国は少ないということで、パレスチナ暫定自治政府やガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは歓迎しています。

一方、イスラエル側は強く反発していてネタニヤフ首相は22日、ビデオ声明で3か国の対応を非難しました。

さらに極右政党の党首でもあるベングビール国家治安相はエルサレムの旧市街にあるイスラム教の聖地「ハラム・アッシャリフ」を訪問し、「パレスチナを承認した国は、人殺しに賞を与えるようなものだ」と述べ、容認しないと強調しました。

「ハラム・アッシャリフ」は過去の取り決めでイスラム教徒にだけ礼拝が認められるなどの厳格なルールがあり、過去にはイスラエルの政治家が訪問したことでパレスチナ側による大規模な抗議活動につながったこともあります。

ハマスは、国家治安相の訪問を非難する声明を出していて、今後、イスラエルとパレスチナの間で緊張が一段と高まることも懸念されています。

アメリカ “一方的な承認ではなく両国の直接交渉で”

これを受けてアメリカのサリバン大統領補佐官は22日の記者会見で、それぞれの国の判断だとしたうえで、「バイデン大統領はこれまで『2国家解決』を支持してきた。そしてこれは一方的な承認ではなく、当事者どうしの直接交渉によってもたらされるべきだと強く主張してきた」と述べ、パレスチナ国家の実現には、イスラエルとパレスチナによる協議が欠かせないと強調しました。

米政府高官「民間人の被害考慮に入れた計画について説明受けた」

アメリカ政府の高官はイスラエル軍によるガザ地区南部ラファでの軍事作戦をめぐり、イスラエル側から民間人の被害を考慮に入れた計画について説明を受けたと明らかにしました。

イスラエル軍は、多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部のラファでイスラム組織ハマスへの攻撃を続けています。

アメリカのバイデン政権は民間人を危険にさらすとして大規模な地上作戦は行わないよう繰り返し自制を求めています。

こうした中、今月19日から20日にかけてイスラエルを訪問していたホワイトハウスのサリバン大統領補佐官が22日、記者会見しました。

この中でサリバン補佐官は「イスラエルの政府当局者などから民間人の被害を考慮しながら軍事的な目標を達成するための計画の改善点について説明を受けた」と明らかにしました。

その上で「この地域でのこれまでのイスラエル軍の軍事作戦はより標的を絞った、限定的なもので密集した市街地の中心部での大規模な作戦を伴うものではなかった。今後の展開を見守る必要がある」と述べて軍事作戦が大規模化しないか、動向を注視する考えを示しました。

ラファをめぐり、イスラエルのガラント国防相はハマスの壊滅のためだとして軍事作戦を拡大する構えを示していて、イスラエル側が民間人への被害を防ぐための実効性ある対応をとれるのかが今後の焦点です。