パラ陸上世界選手権 女子砲丸投げ 腕に障害 齋藤由希子が銅

パラ陸上の世界選手権は大会6日目の22日、女子砲丸投げ腕に障害があるクラスの決勝が行われ、齋藤由希子選手が銅メダルを獲得しました。

30歳の齋藤選手は、9年前に当時の世界記録をマーク、去年の世界選手権では銅メダルを獲得し、日本パラ陸上競技連盟の選考基準に基づいて、パリパラリンピックの代表内定を確実にしています。

22日は、齋藤選手の世界記録を2023年に更新したアメリカのノエル・マルカマキ選手も出場する中、齋藤選手は2回目の投てきで、シーズンベストとなる11メートル72センチをマークしました。

しかし、その後は記録を伸ばすことができず、銅メダルでした。

ライバルとなるマルカマキ選手が13メートル12センチをマークして、金メダルを獲得しました。

男子400メートル、腕に障害があるクラスの決勝には、鈴木雄大選手が出場しました。

鈴木選手は、最後のコーナーでは後方に遅れていましたが、直線で一気に追い上げ自己ベストとなる49秒43をマークし、メダルには届かなかったものの、4位に入りました。

女子100メートルの車いすのクラスの決勝では、村岡桃佳選手が出場しましたが、後半伸びを欠き、17秒47でフィニッシュし、6位でした。

このほか、女子1500メートル知的障害のクラスの決勝には、日本勢3人が出場し、
▽岡野華子選手がシーズンベストとなる4分52秒53で5位
▽藤原由奈選手が4分59秒73で6位
▽山本萌恵子選手が5分12秒26で7位

男子走り幅跳び、義足のクラスの又吉康十選手は、5メートル57センチで12位。

また、男子400メートル視覚障害のクラスの予選が行われ、去年の世界選手権の、この種目で金メダルを獲得した福永凌太選手がシーズンベストとなる48秒88をマークし、全体の2位で決勝に進みました。

齋藤由希子 “今できるパフォーマンスしっかり発揮”

齋藤選手は「体のコンディションが悪い中での試合で、難しさはあったが、今できるパフォーマンスはしっかり発揮できたと思う」と振り返りました。

そのうえで、パリパラリンピックに向けては「どうしても周りの選手が気になってしまうが、自分自身を磨いていくというところに一生懸命、集中してやっていきたい」と話していました。

齋藤由希子選手 これまでの歩み

齋藤由希子選手は、宮城県気仙沼出身の30歳。

生まれた時から左腕のひじから先がなく、中学1年生の時に砲丸投げを始めました。

身長1メートル66センチの体格から繰り出す力強い投てきが特徴で、2015年には世界記録を更新。

高校生の時に、東日本大震災で自宅が流され「被災地に元気を与えたい」とパラリンピックへの出場を目指します。

ところが当時、パラリンピックで砲丸投げの齋藤選手のクラスは実施されず、やり投げに転向。

やり投げでリオデジャネイロ大会と東京大会を目指しましたが、出場を逃しました。

その後、パリ大会で砲丸投げの齋藤選手のクラスが実施されることが決まり、本来の専門種目の砲丸投げに戻りました。

2022年3月には、長女を出産。

出産で大幅に低下した筋力を戻すため、下半身を中心に強化し、去年の世界選手権で11メートル42センチをマークして銅メダルを獲得し、日本パラ陸上競技連盟の選考基準に基づいて代表内定を確実にしました。

子育てと競技を両立させ、パリパラリンピックでは、メダルの獲得を目指します。

鈴木雄大 “うれしさよりも悔しさのほうが強い”

男子400メートル腕に障害があるクラスの決勝で自己ベストをマークし、4位に入った鈴木雄大選手は「うれしさよりも悔しさのほうが強い。最後追い上げたが及ばなかった。もうちょっとだった」と振り返りました。

そのうえで、パリパラリンピックに向けては「きょうの結果を踏まえて、まずは出場権を獲得することがいちばんの目標。そして、出るからにはメダルを目指せるところまで持っていきたい」と意気込んでいました。

大会7連覇 パラ陸上界のレジェンドが日本への思い語る

パラ陸上の世界選手権、男子走り幅跳びの義足のクラスでは、パラ陸上界のレジェンド、ドイツのマルクス・レーム選手が8メートル30センチの跳躍をみせ、大会7連覇を果たしました。

レーム選手は、この種目でパラリンピック3連覇を果たし、オリンピックの走り幅跳びの金メダリストの記録を上回ったこともあります。

今回の世界選手権は当初、東京パラリンピックの翌年に開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で2回の延期を経て開催されていて、海外のトップ選手はパリ大会を3か月後に控えているということもあり、出場を見合わせている状況となっています。

そうした中でもこの大会に参加したかったというレーム選手はその理由について、コロナ禍で無観客での開催となった東京パラリンピックを踏まえ「日本のファンが選手村の外まで来てくれて、僕へのメッセージの書いた看板を見せてくれたりして支えてくれたりしたことは本当にすばらしかった。日本の人たちはあの状況下でもできるかぎりのことをしてくれたと思う。残念なことに、僕たちは大会が無観客だったこともあり、いい形でそれに応えることができなかった。だから今回の世界選手権ではたくさんの人たちにきてもらいたい」と話していました。

決勝では競技会場にレーム選手が登場するとスタンドからは大きな歓声が上がりました。

そして1回目でいきなり8メートル近い跳躍をみせてスタンドを沸かせると、その後は観客に手拍子を求めるなどして会場を盛り上げました。

そして、5回目に8メートル30センチと大幅に記録を伸ばしたときにはひときわ大きな歓声が上がりました。

レーム選手は、金メダルを獲得し、大会7連覇を果たしました。

レーム選手は、「コンディションはそこまでよくなかったが、徐々に上がってきて最後に大きなジャンプを跳ぶことができてよかった。日本の皆さんの応援がモチベーションになったし、また日本に来たいと思った」と話していました。

そして最後に「一番好きなのは日本のカレーうどんだけど、神戸にいるので今回は神戸ビーフを楽しみたい」と笑顔で話していました。