イスラエル軍は、ガザ地区南部のラファでイスラム組織ハマスへの攻撃を続けていて、パレスチナのメディアは、22日、空爆で複数の民間人がけがをしたと伝えました。
イスラエルメディアは、軍がラファの3割から4割の地域を制圧したと伝えていて、ガラント国防相はラファでの軍事作戦を拡大する構えを示しています。
【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月22日)
多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部ラファでのイスラエル軍の作戦について軍はこれまでに3割から4割の地域を制圧したと伝えられていて、軍事作戦を拡大する構えを示しています。
※中東情勢に関する日本時間5月22日の動きを随時更新してお伝えします。
イスラエルメディア 「ラファの3割から4割を制圧」
欧州3か国がパレスチナを国家承認へ
イスラエル軍によるパレスチナのガザ地区への攻撃が続く中、アイルランド、スペイン、ノルウェーの3か国は、パレスチナを国家として承認すると相次いで表明しました。
すでに多くの国が承認していますが、3か国は足並みをそろえた動きを見せることでイスラエルとパレスチナという2つの国家が共存する形での和平の実現を促すねらいがあるとみられます。
これは、アイルランド、スペイン、ノルウェーの3か国の首相が22日、それぞれ会見などで明らかにしました。
アイルランドのハリス首相は、イスラエル軍による攻撃が続くガザ地区について「パレスチナ人たちはひどい苦しみ、苦難、そして飢えにさらされている」と指摘しました。
そのうえで「恒久的な平和は、自由な人々の自由な意思に基づいてのみ確保される」と述べ、パレスチナを国家として承認する手続きに入ると明らかにしました。
スペインのサンチェス首相とノルウェーのストーレ首相も同じような発表を行い、実際の承認は、今月28日となる見通しです。
戦闘に終わりが見えない中、3か国は足並みをそろえた動きを見せることでイスラエルとパレスチナという2つの国家が共存する形での和平の実現を促すねらいがあるとみられます。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「ガザ地区がイスラエルにとって2度と脅威とならないよう、イスラエルが地区の安全を管理し続けなければならない」として、パレスチナの主権を将来にわたって認めない立場を強調しています。
パレスチナ暫定自治政府によりますと、これまでに140か国以上がパレスチナを国家として承認しているということです。
ヨーロッパなどではほかの国も承認に向けて動いていると伝えられていて、イスラエルに対する国際的な圧力がいっそう強まることも予想されます。
パレスチナは歓迎 イスラエルは批判
これついて、パレスチナ暫定自治政府は声明で歓迎する意向を示しました。その上で国家承認をしていない他国、特にヨーロッパ諸国に対してもこの例に続くよう呼びかけました。
一方、イスラエルのカッツ外相は、22日、対応を協議するためアイルランドとノルウェーに駐在するイスラエル大使を呼び戻すよう指示したと明らかにしました。
その上でアイルランドなどの表明について「パレスチナ人と世界に『テロは報われる』というメッセージを送ることになる」と批判しました。
米国務長官 ICCに対し何らかの措置をとる可能性示唆
アメリカのブリンケン国務長官は21日、議会上院の公聴会に出席し、ICCの主任検察官がイスラエルのネタニヤフ首相とイスラム組織ハマスのシンワル指導者などに対して戦争犯罪などの疑いで逮捕状を請求すると明らかにしたことについて、「イスラエルとハマスを同一視するのは恥ずべきことだ。判断は多くの点で間違っている」と指摘しました。
そして、「大いに誤った判断に対処するために適切な対応をとることを検討しなければならない」と述べ、ICCに対して何らかの措置をとる可能性を示唆しました。
これに先立ちバイデン大統領も20日、「逮捕状の請求は言語道断だ」とする声明を出し、イスラエルを支持する立場を改めて明確にしています。
アメリカはICCに加盟しておらず、トランプ前政権はアフガニスタンでのアメリカ兵の行為に対するICCの捜査への対抗措置として主任検察官などに制裁を科しましたが、バイデン政権はその制裁を解除した経緯があり、対応が注目されます。
ネタニヤフ首相「反ユダヤ主義の火に油注いでいる」
ICCのカーン主任検察官は20日、戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相らとイスラム組織ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者ら双方のあわせて5人の逮捕状を請求すると明らかにしました。
ネタニヤフ首相は20日のビデオ声明で「イスラエルの指導者とハマスの一味を同列にする誤りをした」と非難して不当なものだと主張し、21日もアメリカのABCテレビの番組にイスラエルから出演し、「世界中に広がる反ユダヤ主義の火に油を注いでいる」などと述べ、連日激しく反発しています。
今回の事態について、イスラエルの有力メディアのハーレツは、21日、イスラエル政府はICCの動きを阻むため後ろ盾のアメリカに支援を求めるとの見通しを伝えました。
また、タイムズ・オブ・イスラエルは「逮捕状が出ればネタニヤフ氏は独裁者のプーチン大統領などに並ぶことになる。イスラエルの世界での立場は失墜する」などと伝えていて、ネタニヤフ首相をはじめ政府は神経をとがらせているものとみられます。
UNRWA ラファでの食料配布 停止
イスラエル軍は、多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部のラファでイスラム組織ハマスへの攻撃を続けていて、21日もラファ東部で戦闘員を数十人殺害したと発表しました。
こうした中、ガザ地区で避難者の支援活動を行う主要な機関のUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、21日、ラファでの食料の配布を物資の不足と安全上の理由から停止していると、SNSで明らかにしました。
UNRWAによりますと、ラファ東部でのイスラエル軍の作戦の影響で、UNRWAの物資の配布拠点、それにWFP=世界食糧計画の倉庫も近づけない状況だということで、「イスラエル軍の軍事作戦は重要な人道物資を運ぶ援助機関の能力に直接、影響を及ぼしている」と指摘しています。
ラファからはすでに多くの人がガザ地区の別の場所へと避難を強いられていますが、イスラエルメディアは軍の話としてラファにはいまも30万人から40万人がいるとも伝えています。
イスラエルはラファでの軍事作戦を拡大する構えで援助機関の活動に対する影響の長期化と人道状況のさらなる悪化が懸念されています。
AP通信 “カメラなどの機材 イスラエル当局が押収”
AP通信は21日、イスラエル南部からガザ地区の様子の映像を配信するために使用していたカメラなどの機材が、イスラエル当局に押収されたと発表しました。
発表によりますと、映像を中東の衛星テレビ局アルジャジーラに提供していたことをイスラエル当局が法律違反にあたるとしているということです。
イスラエルでは4月、政府が国家の安全を脅かしているとみなした外国メディアに対して、事務所の一時閉鎖や放送の停止などの規制を可能にする法律が成立していて、5月、アルジャジーラの事務所を閉鎖する措置がとられていました。
AP通信は声明で「イスラエル当局がわれわれが長期間行ってきたガザ地区の映像の配信を停止させ、機材を押収したことを最も強いことばで非難する」としたうえで、機材を返すよう求めています。