“長期金利上昇 財政強じん化を” 財務相の諮問機関が提言

財務大臣の諮問機関は、長期金利の上昇で「金利のある世界」が現実になっているとして、国債の利払い費が増えるリスクを意識し、基礎的財政収支の一定の黒字幅を確保するなど、中長期的に財政の強じん化を図っていくべきだという提言をまとめました。

財政制度等審議会は、21日の会合で政府のことしの「骨太の方針」に向け、財政運営などに関する提言をまとめ、十倉雅和会長が鈴木財務大臣に手渡しました。

提言の中では、「長期金利は1%近い水準まで上昇し、『金利のある世界』はすでに現実のものになっている」と指摘しました。

そのうえで「巨額の債務残高を抱えるわが国は、諸外国以上に金利上昇に伴う利払い費の増加リスクを意識し、節度ある財政運営にあたるべきだ」としています。

さらに、大規模地震や新たな感染症の拡大といった有事の際に備えて、財政上の余力を確保するためにも基礎的財政収支の一定の黒字幅を確保し、債務残高のGDP=国内総生産に対する割合を安定的に引き下げるなど、中長期的に財政の強じん化を図っていくべきだとしています。

また現時点では政府が目標とする来年度の基礎的財政収支の黒字化も楽観できないとして、これまでに6兆円を超える予算を投入しているガソリン補助金を早期に取りやめるなど、ここ数年で膨らんだ歳出を平時に戻すことが不可欠だとしています。

増田寛也分科会長代理 “金利上昇の今こそ緊張感を”

財政制度等審議会の増田寛也分科会長代理は、会議の後の記者会見で「災害や新たな感染症のリスクに備えて財政余力を蓄えることが大変重要だというのが審議会の共通認識だ」と述べました。

そのうえで「これまでも歳出を平時に戻すことが必要だと提言してきたが、日本は欧米と比べても戻すのに時間がかかっている。金利の上昇局面である今こそ、財政当局は一層の緊張感を持って対応するべきだ」と述べました。

林官房長官「着実に財政健全化の取り組み進めたい」

林官房長官は午後の記者会見で「政府としては今後『骨太の方針』の策定に向けて検討を進めていくことにしており、引き続き『経済あっての財政』という考え方のもと、歳出の効率化の努力を含め着実に財政健全化の取り組みを進めていきたい」と述べました。