【随時更新】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月21日)

イスラエル軍のガザ地区南部ラファでの地上作戦について、地元メディアは軍がラファの3割から4割の地域を制圧したと伝えました。人道状況の悪化が懸念される中でも、イスラエル軍は、ラファへの攻撃を続け、徐々に作戦を進めているとみられます。

※中東情勢に関する日本時間5月21日の動きを随時更新してお伝えします。

“イスラエル軍 ラファの3~4割を制圧” イスラエルメディア

ラファでの地上作戦について、複数のイスラエルメディアは20日、イスラエル軍の話として、軍がラファで3割から4割の地域を制圧したと伝えました。

また、エジプトとの境界地帯ではガザ地区とエジプト側とをつなぐ多くの地下トンネルを破壊したと伝えています。

イスラエル軍は、人道状況の悪化が懸念され、アメリカが一貫して大規模な地上作戦に反対する立場を伝える中でもラファへの攻撃を続け、徐々に作戦を進めているとみられます。

エルサレムでネタニヤフ首相の辞任求めるデモ

イスラエル国内では、人質の解放が実現しないことを巡り、ネタニヤフ首相への不満が高まっていて、20日にはエルサレムで数百人が集まって首相の辞任を求めるデモが行われました。

警察は放水を行ってデモに集まった人たちを解散させようとしたほか、一部の参加者が警察と衝突するなど、現場は騒然となりました。

参加していた男性は、「人質が戻ってきてこのひどい戦争も終わってほしい。ガザでは多くの民間人が死亡していて、こんなことはばかげている」と訴えていました。

80万人以上がラファから避難 国連

イスラエル軍は21日、南部ラファなど各地で作戦を続け、ラファへの空爆で複数のハマスの戦闘員を殺害したなどと発表しました。

パレスチナの地元メディアは、21日にかけても各地でイスラエル軍の攻撃があり、子どもや女性を含む数十人が死亡したと伝えています。

ガザ地区の保健当局は20日、これまでの死者は3万5562人にのぼったとしています。

国連は20日、これまでに80万人以上がラファから南部ハンユニスなどへ避難を強いられたとしています。

こうした中、NHKガザ事務所がハンユニスで14日に撮影した映像には、ほとんどの建物が破壊された一帯で暮らす避難者の様子が写っています。

ラファから避難した男性は、「ここが安全な場所だと言われ苦労して避難してきたが、この避難所も破壊されている。ここには水がなく生活ができない」と話し、厳しい状況に置かれていると訴えています。

イスラエル軍がラファでの地上作戦をさらに拡大させた場合、人道危機が一層深まることが懸念され、今後の出方が焦点となっています。

米ホワイトハウス “ラファ大規模地上作戦の代替案説明受けた”

アメリカ・ホワイトハウスは20日、安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官が訪問先のイスラエルで、ガラント国防相や軍トップのハレビ参謀総長と会談したと発表しました。

サリバン補佐官は会談で、多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部ラファへの大規模な地上作戦の実施に改めて懸念を伝えたということです。

そして、ホワイトハウスは「ガラント国防相らがアメリカ側の懸念に応えるため、代わりとなる新たなアプローチを説明した」として、サリバン補佐官がイスラエル側から大規模な地上作戦の代替案について説明を受けたと明らかにしました。

代替案の詳しい内容は明らかになっていませんが、両者は協議を続けることで合意したとしています。

一方、ガラント国防相はSNSに、「ハマスを壊滅させ人質を取り戻すため、ラファでの地上作戦を拡大することがイスラエルの義務だと強調した」と投稿し、ラファでの作戦を拡大させる構えを重ねて示しました。

ラファをめぐって、イスラエル軍が追加の部隊を派遣して攻撃を強化する姿勢を見せる中、アメリカ側の働きかけによって軍事作戦の大規模化を回避できるかが焦点です。

米国防長官 民間人保護に努めるよう重ねて求める

イスラエルがガザ地区南部のラファで地上作戦を拡大する構えを示していることを受け、アメリカのオースティン国防長官は20日、記者会見で「われわれが望むのは、より精密で、民間施設の破壊を減らし、民間人をもっと保護するものだ。効果的に軍事作戦を行うことと戦場にいる民間人を考慮することは両立できる」と述べ、民間人の保護に努めるよう重ねて求めました。

ICC イスラエル首相やハマス指導者ら双方計5人の逮捕状請求

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐって、ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官は、20日に声明を発表し、戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いで、イスラエルとハマスの双方の合わせて5人に逮捕状を請求すると明らかにしました。

このうちイスラエル側は、ネタニヤフ首相とガラント国防相の2人に対してで、去年10月8日以降、戦争の手段として民間人を飢餓に陥らせたり、意図的に民間人に対して攻撃を行ったりした戦争犯罪などに責任があると信じるに足る合理的な理由があるとしています。

一方、ハマス側は、ガザ地区トップのシンワル指導者や、ハニーヤ最高幹部ら3人に対してで、去年10月7日のイスラエルに対する襲撃で民間人を殺害したり、少なくとも245人を人質にとったりした戦争犯罪などの責任があると信じるに足る合理的な理由があるとしています。

カーン主任検察官は、声明で「国際法はすべての人に適用される。歩兵も司令官も政治家も罰を免れることはできない」と強調したうえで、今後さらなる逮捕状を請求する可能性もあるとして、改めて国際法の順守を求めています。

裁判所では今後、予審裁判部が、検察官が提出した証拠などを検討したうえで、逮捕状を出すか判断することになります。

双方 ICCに対し反発

これに対してネタニヤフ首相は20日の声明で、「ICCの検察官が大量殺人者であるハマスと民主的なイスラエルを対比したことを嫌悪感をもって拒否する。われわれの手を縛ろうとする試みは失敗する」と非難しました。

また、ハマスも20日の声明で、「被害者と死刑執行人を同等に扱おうとすることを強く非難する」と反発しました。

ICCは今後、予審裁判部が、検察官が提出した証拠などを検討したうえで逮捕状を出すか判断することになります。

米 バイデン大統領 “イスラエルとハマス 同等ではない”

アメリカのバイデン大統領は20日、声明を発表し、「イスラエルの指導者たちに対する逮捕状の請求は言語道断だ」と非難しました。

また、バイデン大統領は、ユダヤ系アメリカ人を招いたホワイトハウスでのイベントであいさつし、「イスラエルとハマスは同等ではない。民間人を守るためにできることはすべてするが、はっきりさせておきたいのは、ICCの主張と違って、いまガザ地区で起きていることはジェノサイドではない。われわれはそうした主張を拒絶する」と述べました。

その上で、「われわれは常にイスラエルと共にあり、イスラエルの安全保障への脅威に立ち向かう」と述べ、イスラエルの防衛を支援していく姿勢を強調しました。

ICC逮捕状請求の意義と影響は

ガザ地区で続く衝突の双方の当事者に対する逮捕状を請求することについて、ICC=国際刑事裁判所のカーン主任検察官は声明で「法を公平に適用する姿勢を示さず、選択的に適用していると受け止められれば、法が崩壊する条件をつくってしまう」と説明し、捜査の公正さと中立性を強調しています。

ICCが逮捕状を出すかどうかはこのあと予審裁判部の判断に委ねられますが、実際に逮捕状が出されれば、ICCに加盟する日本を含む124の国や地域は、域内に対象の人物がいれば身柄を拘束し裁判所に引き渡す義務を負うことになります。

このため、ネタニヤフ首相らはこれらの国や地域への渡航が難しくなり、外交活動などが制限される事態も想定されます。

ICCがウクライナでの戦争犯罪の疑いで逮捕状を出したロシアのプーチン大統領は、去年、ICCに加盟する南アフリカで開かれた国際会議への対面での出席を見送りました。

イスラエルはICCに加盟しておらず、首相や国防相に対する逮捕状が請求されたことに激しく反発していて、今後の捜査などにも一切協力しないものと見られます。