能登半島地震「復興プラン」最終案まとまる “創造的復興を”

石川県は、能登半島地震からの復旧・復興の基本方針とする「復興プラン」の最終案をまとめました。単に被災前の姿に戻すのではなく、人口減少も踏まえて、新しい時代にふさわしい地域をつくる「創造的復興」を目指すとしています。

最終案は20日、馳知事らが出席した会議でまとまりました。

「復興プラン」では甚大な被害を受けた能登地方について、この10年で人口がおよそ2割減少し、以前から厳しい状況にあったとしたうえで、「単に被災前の姿に復元するのではなく、課題を踏まえ、未来志向に立つことが必要だ」として、新しい時代にふさわしい地域をつくる「創造的復興」を目指すとしています。

主な施策のうち、インフラについては、人口減少や施設の老朽化といった観点から「原形復旧」にとらわれず、集落単位で電気や上下水道を賄う「自立・分散型」の推進も選択肢のひとつだとしています。

また、若い世代が減少し、地域の活性化には多くの人が多様な形で関わる「関係人口」の拡大が不可欠だとして、例えば、支援に入るNPOや企業、大学などと住民のニーズを調整する「連携復興センター」を設置する方針です。

このほか、能登地方では、祭りが絆をつなぐ大きな役割を果たしているとして、支援に力を入れることにしています。

この計画の対象期間は2032年度までの9年間で、石川県は、自治体や被災者の意見も踏まえて事業に取り組んでいくとともに、国に対して財政支援を求めていくとしています。

「復興プラン」詳しい内容は

「復興プラン」の詳しい内容です。対象期間は今後9年間で、2年後の短期、5年後の中期、9年後の長期の3段階に分けて施策を推進します。

「能登が示す、ふるさとの未来」をスローガンに掲げ、能登の自然や伝統文化を生かしながら地域の魅力をさらに高める「創造的復興」につなげるとしています。

施策の柱として
▽「災害に強い地域づくり」
▽「特色あるなりわいの再建」
▽「暮らしとコミュニティの再建」
▽「誰もが安全・安心に暮らし、学ぶことができる環境・地域づくり」
の4つを掲げています。

▽1つ目の「災害に強い地域づくり」では、地震で大きな被害が出た道路や上下水道、農地、それに港湾などインフラの早期復旧と強じん化を進めるとしています。

公費解体と災害廃棄物の処理を再来年3月までに完了させるとともに、施設の耐震化や液状化対策、通信基盤やエネルギー源の強化・多様化を図り、今後の災害に備えるということです。

▽2つ目の「特色あるなりわいの再建」では、被災した事業者の再建や雇用の維持、販路の開拓を後押しするとしています。

能登地方の人口の1割ほどが関わる農林水産業のほか、輪島塗や珠洲焼など伝統産業の維持・再建に力を入れるとしています。

▽3つ目の「暮らしとコミュニティの再建」では、特に住まいの再建を重要課題として、仮設住宅や災害公営住宅の整備を急ぐことにしています。

このうち、仮設住宅については、必要な戸数を6000戸余りと見積もり、ことし8月までに建設することにしています。

また、能登地方を代表する観光地、七尾市の和倉温泉や輪島市の朝市などの復興とまちづくりを支援するとともに、コミュニティーの維持に向けて祭りの再開や文化財の修復に対する財政的な支援に力を入れるとしています。

▽4つ目の「誰もが安全・安心に暮らし、学ぶことができる環境・地域づくり」では、災害関連死の増加が懸念される中、被災者の孤立や健康状態の悪化を防ぐため見守りや相談支援を強化することにしています。

学校については施設の復旧を急ぐとともに、オンラインや遠隔での授業を活用するなどして学びの場を確保するとしています。

また、地震で隆起した地盤や断層などを震災遺構として活用できないか、調査や保存を検討することにしています。

こうした施策と並行して、能登半島地震から得られた教訓を今後の災害に生かすため、災害対応を検証しながらプランの見直しも行い、地域防災計画への反映や後世への伝承に取り組むとしています。

石川県は、この案を今月28日に始まる議会に示して意見を反映させたうえで、正式に決定することにしています。