頼清徳新総統は20日、台北の総統府で就任の宣誓をしたあと、屋外に設けられた舞台で演説しました。
台湾 頼清徳氏が新総統就任 “中国との関係 現状維持”と強調
台湾で20日、民進党の頼清徳氏が新しい総統に就任しました。
就任演説では台湾の現状維持を強調し、中国とともに平和と繁栄を追求したいと訴える一方「台湾を併合しようという中国のたくらみは消えない」として、防衛力の強化に取り組む姿勢も示しました。
頼清徳新総統 就任式で宣誓と演説
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中国との関係 “現状維持” を強調
この中で中国との関係について、頼新総統は「卑屈にもならず、ごう慢にもならず、現状を維持する」と述べ、台湾の現状維持を強調しました。
そして、中国に対し「台湾の人たちが選んだ合法的な政府との間で、対等と尊厳の原則のもと、対話と交流を進め、協力しあうことを望む。まずは相互の対等な観光往来と学生の台湾での就学の再開から始め、ともに平和と繁栄を追求することができる」と訴えました。
防衛力強化の姿勢も
一方で「中国の主張を全面的に受け入れて主権を放棄したとしても、台湾を併合しようという中国のたくらみは消えないということを理解すべきだ」としたほか「中国の各種の脅威と浸透に直面しているわれわれは、国を守る決意を示さねばならない」として、防衛力の強化に取り組む姿勢も示しました。
さらに「世界の民主主義国家と肩を並べて平和共同体を形成し、抑止力を発揮して戦争が起きるのを避ける。実力に依拠して平和の目標を達成する」と述べました。
野党には政権運営への協力呼びかけ
議会・立法院で民進党の議席が過半数を下回っていることについて、頼新総統は「国の利益は政党の利益より優先される」と述べて、政権運営への協力を野党に呼びかけました。
このほか「いかなる政党も併合に反対し、主権を守るべきだ」と述べ、中国の脅威に与野党が一致して対抗するよう求めました。
AI技術の産業化を促進「台湾を“AIの島”に」
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また「現在の台湾は半導体の先進的な製造技術を掌握し、AI革命の中心にいる。『世界の民主的なサプライチェーン』の鍵を握る存在であり、世界経済の発展、人類の幸福と繁栄に影響を与えている」と述べ、台湾の半導体産業が国際社会で重要な役割を果たしていると強調しました。
そして「台湾は世界を必要としているが、世界も台湾を必要としている」と強調しました。
また「台湾を『AIの島』になるよう推進しAI技術の産業化を促進する」と述べ、AIを活用して軍事力や経済力などを強化していく方針を示しました。
このほか頼新総統は、台湾はすでにTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入を申請しているとして「地域経済の統合を積極的に推進する」と述べたほか「世界の民主主義国家と2か国間の投資協定を締結し、貿易のパートナーシップを深めていく」と強調しました。
中国 頼新総統を“台湾独立派” として警戒
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中国は頼新総統のことを「台湾独立派」として警戒し「台湾は自国の一部だ」とする「1つの中国」という考え方を受け入れることを対話の前提条件としていますが、頼新総統は演説で「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」などと述べて「台湾は中国の一部だ」とする中国の主張を否定しました。
中国側は、先週には「平和と発展、挑発と対立の、どちらの道を歩むのか、『台湾地区の新しい指導者』は明確に答えなければならない」と頼新総統をけん制しています。
「台湾は中国の一部 変えられない事実」
中国外務省によりますと、王毅外相は20日、訪問先のカザフスタンで、台湾の頼清徳新総統の就任を受けて中国側の立場を表明しました。
この中で、王外相は「世界に中国は1つしかなく、台湾は中国の一部だ。これは台湾の情勢がどのように変化しようとも、変えられない事実だ」と指摘しました。
そして、王外相は「『台湾独立』という行為は、国際秩序に対する最大の挑戦で台湾海峡の現状に対する最も危険な変更であり、平和を大きく破壊するものだ」と主張し、「独立派」とみなす頼新総統をけん制しました。
「台湾独立は破滅への道」
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中国外務省の汪文斌報道官は20日の記者会見で「台湾独立は破滅への道であり、どのような名目や旗印を掲げようと、台湾独立を推し進めようとすることは失敗する運命にある」と述べ、頼氏を「台湾独立派」だとして非難しました。
「台湾海峡の平和と安定損なう危険なシグナル放った」
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頼清徳新総統の就任演説について、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は20日、コメントを発表し「演説ではかたくなに『台湾独立』の立場を堅持し、分裂というでたらめを公然と宣伝し、両岸の対立と対抗をあおっている」などと主張しました。
そして、頼新総統について「民意を顧みず、時流に逆行し、台湾海峡の平和と安定を損なう危険なシグナルを放った。『台湾独立工作者』の本性が完全に露呈された」と指摘し、頼氏がかつて「自分は現実的な台湾独立工作者だ」と発言したことを重ねて取り上げ非難しました。
そのうえで「台湾独立は、いかなる形式であろうと決して容認しないし、容赦もしない。祖国は統一されなければならないし、必然的に統一される」として、台湾統一への強い意欲を改めて示しました。
台湾本島に最も近い中国 平潭島では関係改善望む声
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台湾で頼清徳新総統が就任したことについて、台湾本島に最も近いとして中国本土各地から大勢の観光客が訪れる中国南部・福建省の平潭島では20日、関係改善を望む声が聞かれました。
このうち東部浙江省から観光で訪れた男性は「両岸関係はますます緊張している。双方の交流が増えて、多くの調和が生まれることを希望します」と話していました。
また、別の観光客の女性は、台湾の新たな総統について「あまりよく知らない」と話した一方で「台湾を旅行したことがあるのでとても親しみを感じられ、同じ家族のように感じる。台湾の新たなリーダーが両岸関係をよりよくしてくれるのを願っています」と話していました。
平潭島には10年前、中国の観光客向けに台湾の人たちが特産品などを販売する観光施設が設けられました。
しかし、台湾で民進党政権が発足し中台関係が悪化して以降、台湾に引き揚げる人が相次ぎ、今では閑散としています。
8年前から特産品を扱う店の営業を続けている台湾の男性は「両岸の融合は、私たち一般の人々にとって最大の福利です」として、ビジネスのためには中台間の関係改善が欠かせないと話していました。
日本の国会議員の就任式出席 中国大使が強く反発
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台湾で、民進党の頼清徳新総統の就任式が行われる中、東京にある中国大使館は20日、日本の政界関係者や有識者らを招いて座談会を開き、鳩山元総理大臣や社民党の福島党首ら10人余りが出席しました。
この中で呉江浩駐日大使は、日本から超党派の国会議員で作る「日華議員懇談会」のメンバーら30人余りが頼新総統の就任式に出席することに触れ「公然と台湾独立勢力に加担するもので、極めて誤った政治的シグナルを送っている。断固反対する」と述べ、強く反発しました。
そして「『1つの中国』の原則を順守し台湾独立に反対することこそ、台湾海峡の平和と安定を守る唯一の正しい道であり、中日関係の健全な発展の基盤だ」と中国側の立場を主張しました。
頼新総統 日本の国会議員と昼食 “まさかの時こそ真の友”
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頼清徳新総統は就任式のあと、日本と台湾の交流を進める超党派の議員連盟「日華議員懇談会」の会長を務める自民党の古屋元国家公安委員長など、日本の国会議員およそ30人との昼食会に臨みました。
この中で頼新総統は、台湾と日本の協力について「特に自然災害や感染症対策では、われわれは『まさかの時こそ真の友』という気持ちを示した」と強調しました。
そして「きょうから新しい政権がスタートする。今後も台湾への協力と新政権との連携をお願いしたい」と述べました。
これに対し、古屋元国家公安委員長は、能登半島地震や台湾東部沖での地震では互いに見舞いのことばや義援金をおくりあったことを紹介したうえで「これこそが真の絆の象徴だ」と述べ、引き続き台湾との関係を強化していく考えを示しました。
林官房長官 “台湾めぐる問題 対話による平和的解決を期待”
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林官房長官は午後の記者会見で「台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが、わが国の従来一貫した立場だ」と述べました。
そのうえで「台湾海峡の平和と安定の重要性について引き続き中国側に直接しっかりと伝えるとともに、アメリカをはじめとする同盟国・同志国と緊密に連携しながら各国共通の立場として明確に発信していくことが重要だ。両岸関係の推移をしっかりと注視し、今後もこうした外交努力を続けていく」と述べました。
頼新総統 米の非公式代表団と会談
頼清徳新総統は20日、就任式のあと、アメリカ政府の元高官などによる超党派の非公式の代表団と会談しました。
この中で、頼新総統は台湾海峡の情勢は新しい政権にとっても重要なテーマだとしたうえで「価値観に基づく外交を通じて台湾と各国のつながりを深め、地域の平和と安定をともに守り、世界の繁栄と発展を促進する」と強調しました。
そして「今後もアメリカの行政部門と議会が、台湾とアメリカの強固な相互信頼の基礎の上に、安全保障や経済・貿易、それに科学技術などの分野の協力を引き続き支持することを期待する」と述べ、双方の関係を強化していく姿勢を示しました。
これに対し、バイデン政権で去年まで国家経済会議の委員長を務めたブライアン・ディーズ氏は、アメリカが台湾とのパートナーシップを重視していることを改めて強調したうえで「アメリカと台湾の関係はこれまでで最も良好だ」と述べ、今後も双方の協力を深めていく考えを示しました。
米国務長官「台湾海峡の平和と安定維持 ともに取り組む」
アメリカのブリンケン国務長官は、台湾で頼清徳氏が新しい総統に就任したことを祝福する声明を出しました。
この中でブリンケン長官は「台湾の人々が改めて民主主義制度の強さを示したことにも祝意を示したい」としたうえで「われわれの共通の利益や価値観を推進するとともに、長く続いてきた米台の非公式な関係を深め、台湾海峡の平和と安定を維持するため、頼総統とともに取り組んでいくことを楽しみにしている」としています。
中国が米企業3社に制裁 “台湾に武器売却”
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中国商務省は、台湾への武器売却に関わったとしてアメリカ企業3社について、中国の主権や安全を損ねる外国企業などのリストに追加し、中国との貿易を禁止するなどの制裁を科すと発表しました。
台湾の頼清徳氏の総統就任を受け、台湾への関与を強めるアメリカをけん制するねらいがあるとみられます。
中国商務省によりますと、中国の主権や安全を損ねる外国企業などのリストに追加されたのは、アメリカの軍事用ドローンなどを手がける「ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ」、戦車などを製造する「ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ」、それに大手航空機メーカー「ボーイング」の防衛部門です。
商務省は、3社に対し、台湾への武器売却に関わったとして中国に関連する貿易や中国国内への新たな投資、幹部の入国などを禁止するとともに中国の滞在資格を取り消すなどとしていて、「ボーイング」に対しては、これに加え、2020年以降に台湾との間で契約した武器売却額の2倍の罰金を科すとしています。
中国政府は、台湾への武器売却に関わったとしてこれまでにも繰り返しアメリカの企業に制裁を科しています。
台湾では20日、民進党の頼清徳氏が新しい総統に就任していて、これに合わせて制裁を発表することで、台湾への関与を強めるアメリカをけん制するねらいがあるとみられます。
【記者解説】中国・台湾の関係は (台北支局・逵健雄支局長)
Q: 中国側は演説に強く反発しています。今後の中国と台湾の関係はどうなっていくのでしょうか。
A: 中台関係の改善の可能性は当面、低いと見ます。
頼総統としては、中国が台湾にさまざまな圧力をかけてきている中でも、台湾は中国と交流して、ともに平和と繁栄を追求したいと呼びかけ、これが中国に対する善意だという立場です。
しかし、中国側が「善意」だと受け止めることは望み薄です。演説全体が「台湾と中国は別」というトーンで貫かれたからです。
中国は早速、頼総統のことを「『台湾独立工作者』の本性が完全に露呈された」と非難しました。また「台湾海峡の平和と安定を損なう危険なシグナルを放った」とも主張しています。
中国はこれまで同様、台湾周辺で軍事活動をエスカレートさせたり、野党に働きかけたりして、頼清徳政権を揺さぶろうとすると予想されます。