スロバキア首相銃撃事件 政治的な動機に基づく可能性の見方も

ヨーロッパ中部のスロバキアの首相が銃撃された事件で、スロバキア政府の高官は当時の状況について、首相は至近距離から銃撃され、1発は腹部を貫通したなどとしています。一方、犯行について、スロバキアの内相は、現時点では、政治的な動機に基づく可能性があるという見方を示し、事件の背景などについて詳しく調べています。

スロバキアでは、15日に中部のハンドロバを訪れていたフィツォ首相が、政府の会議のあと地元の住民に歩み寄ったところ、何者かに銃撃されて病院に搬送されました。

首相を銃撃した男は現場で取り押さえられました。

フィツォ首相の容体について、スロバキア政府は声明で、命に関わる状態だと発表しています。

その後、ロイター通信は16日、首相が入院している病院の責任者の話として、5時間に及ぶ手術のあと状態は安定しているものの、依然として深刻な状態だと伝えています。

スロバキアのタラバ副首相は、事件当時の状況についてイギリスの公共放送BBCに対し、首相は至近距離から銃撃され、1発は腹部を貫通したなどと述べました。

また、首相を銃撃した男について、地元メディアは、71歳で銃を所持する許可を持っていたと伝えたほか、ロイター通信は、この男がSNSに、政府のメディア政策に反対する内容の動画を投稿をしていたと伝えています。

スロバキアのシュタイエシュトク内相は、犯行について15日の記者会見で、政治的な動機に基づく可能性があるという見方を示し、事件の背景などについて、詳しく調べています。

フィツォ首相 スロバキアでベテランの政治家

銃撃されたスロバキアのフィツォ首相は、中部トポルチャニ出身の59歳。

ブラチスラバの大学で法学を学び、1994年からはヨーロッパ人権裁判所のスロバキア代表となりました。

その後、2006年から通算で4期首相を務めるなど、スロバキアでベテランの政治家として知られています。

6年前の2018年には、政権の腐敗を取材していたジャーナリストが殺害された事件をきっかけに政権への抗議活動が広がり、辞任に追い込まれましたが、去年9月の議会選挙では、ウクライナへの軍事支援の停止を訴えるなど、ロシア寄りの姿勢を示して支持を集め、みずから率いる政党を勝利に導き、首相に返り咲きました。

一方、最近では、汚職事件を取り扱う特別検察局の廃止や、メディアへの統制を強化する計画を進めるなど、強権的な政治姿勢に国内から懸念の声があがり、市民による抗議活動も起きていました。

フィツォ氏は、これまで左派政党を率いながらも、世論や政治状況に応じて右派寄りの過激な主張を行ってきたとも指摘され、イギリスのガーディアン紙は「親EUの立場と過激なナショナリズムなどの主張を使い分ける戦術家だ」と伝えています。

銃撃があったハンドロバの市民は

首相が銃撃されたスロバキア中部のハンドロバでは、市民から驚きや憤りの声が聞かれました。

このうち、45歳の女性は「ことばもありません。とても悲しいです。法律で銃を規制していれば、こんなことにならなかったかもしれません」と話していました。

フィツォ首相を支持しているという33歳の男性は「息をするのが苦しくなるほどのショックを受けました。今回の事件は、命に関わることです。政治的にも、当然影響がでてくると思います。これはリベラル派が人々を扇動し、人々を分け隔てたことの結果だと思います」と述べ、政治的に不満があったとしても、首相を銃撃することは許されないと述べました。

また、76歳の女性は「事件はスロバキアに広がる憎しみの感情で起きた。たくさんの人が精神的に苦しんでいるからです」と話していました。