能登半島地震から4か月余 被災者の心のケアが課題に

能登半島地震から4か月余りがたつ中、被災者の心のケアが課題となっています。被災地の見回りを行っている精神科医によりますと、気分の落ち込みを感じる人や飲酒量が増えたという人も多く、避難先でのストレスや将来への不安などが背景にあるとみられます。

石川県穴水町にある「穴水こころのクリニック」の院長で精神科医の林正男さんは、先月から穴水町や隣接する市町で精神的なケアが必要な人たちのもとをボランティアで訪問しています。

9日は能登町の「白丸地区」にある仮設住宅を訪れ、住民たちに健康や生活に関する困り事がないかなどを聞き取っていました。

林さんによりますと、地震から4か月余りがたつ中、気分の落ち込みを感じる人や飲酒量が増えたという人も多く、避難先でのストレスや将来への不安などが背景にあるとみられるということです。

また、長引く避難生活の中で認知機能が低下しているお年寄りもみられるということです。

震災直後は全国から精神科医などが石川県内の被災地を訪れ、最大30チームが連日、活動していましたが、現在は1チームが週1回程度活動するにとどまっています。

林さんは自治体の保健師などと連携して地域の見回りを続け、被災者の長期的な心のケアを進めていくことにしています。

林さんは「仮設住宅に入れても、次のステップに進めるか不安に思う人がいる。自殺など防ぐために、地域の人たちの声を聞いていきたい」と話しました。

仮設住宅で暮らす女性 ストレスも

石川県能登町にある仮設住宅に4世代家族5人で暮らす女性は、仮設住宅に入居できたことに安どする一方、手狭な空間で暮らすことにストレスも感じています。

能登町白丸の豊若幸紀さん(70)は自宅が津波で流されました。

ことし3月末から自宅近くに設けられた仮設住宅で93歳の義母と40代の息子夫婦、それに高校生の孫と一緒に、4世代家族5人で暮らしています。

豊若さんは仮設住宅の状況を見に来た林医師に現在の状況を話し「ストレスを抱えている人も多いのでこうした活動をしてくれるとありがたい。頼りにしています」と話していました。

豊若さんは地震の前までは2階建ての住宅2軒に分かれて住んでいて、それぞれに広い部屋があったといいます。

今は、仮設住宅に入居できたことに安どする一方、家族5人で暮らすにはせまく、お互いの生活音などが気になりストレスに感じているということです。

室内についたてを設けるなどしていますが、深夜に小さな物音で目が覚めるなどして寝不足に悩まされています。

大学受験を控えた孫の勉強にも支障が出ないか心配だということです。

豊若さんは「ごはんや風呂を済ませると自分の部屋にこもっています。仮設住宅ではうまく生活しないとストレスもたまります。近所の人と話すことでストレスを発散しています」と話しています。