能登半島地震 必要な支援と課題は?首長発言から【5月8日】

8日、石川県の「災害対策本部員会議」が開かれました。被災自治体からは、「公共施設の公費解体を認めてほしい」という要望が相次ぎました。

また穴水町では、この春入学した小中学校の児童数が昨年度と比べ、12.8%減ったことが報告され、町長は学校教育への支援を改めて要望しました。

6つの自治体の首長の発言をまとめました。

※発言の順番に掲載しています。

輪島市 坂口茂市長『公共施設の公費解体は喫緊の課題』

「かねてから課題だった家庭内の給水管の修繕の遅れに対し、遠方業者の経費補助という新しい制度を設けて頂き、お礼申し上げる。(輪島市では)通水率は90%だが、宅内配管の修繕待ちは現在約500件と聞いており、制度を活用した修繕が進むと考えている」

「輪島市では市内の一次避難所の数は前回と比較して2か所減り45カ所。避難者の数は140人減の1023人。宅内配管の修繕や応急仮設住宅の完成に合わせ、8月中の避難所閉所に向け、取り組んでいきたい」

「輪島市から1つだけお願い。かねてから話している公共施設の公費解体に関する要望。公共施設の公費解体は43施設をリストアップして要望していたが、1日も早い被災者の生活再建、なりわい支援、復興まちづくりの加速化の観点からこのうち12か所に絞って公費解体の対象としていただきたく要望する。輪島市は地形的にももともと平地が少なく、被災後すぐに活用できる公共所有の土地には応急仮設住宅を建設しているが、それでも不足しているため、農地などを購入し、建設を進めている。災害公営住宅や仮設商店など復興に必要な施設を建てるのが非常に困難となっている。今後の復旧・復興のためには、復興に必要な施設を建てる土地を早急に生み出す必要がある。被災した公共施設の速やかな解体・用地の確保が不可欠であり、喫緊の課題。被災公共施設の迅速な解体は、被災者の早期の再建に直結するものであり、公費解体の対象としていただくよう、格別の支援ご配慮お願いする。単独災害復旧事業債で対応できるのではないかという考えもあるが、公費解体のスキームなら早期に解体できるという大きなメリットがある。単独災害復旧事業債で行う場合、設計業務発注の手続きに時間がかかって遅くなるというデメリットがあり、ぜひとも(公共施設の)公費解体を認めいただきたい」

珠洲市 泉谷満寿裕市長『公共施設 公費解体対象に』

「ゴールデンウィーク期間中の10日間、一般・専門のボランティア、合計で2384人に活動いただき、依頼のあった374か所について完了していただいた」

「断水解消は、発災直後から国土交通省、名古屋市の上下水道局始め、全国各地の自治体に尽力いただき、現在、給水件数は3290件まできた。全体では4800件なので、68.5%まで来ている。宅内の配管工事を待つ人の中には“3ヶ月待ち”のところもあり、およそ1700件ほどが工事を待っている。こうした中で市外の業者の費用補助は本当に助かる。心から感謝申し上げる」

「公費解体については、申請を受理したものが1418件、棟数では2184。申請がはかどってきているが、まだまだ手続きなどにお困りの方もおり、4月30日から市内10地区それぞれで説明会を開催している。参加者は二日間で約200人で、『公費解体について説明を受けたい』という被災者が多くいらっしゃる。5月11日と12日には石川県庁でも説明会を予定している。その後もできれば県庁内で申請の受付まで行わせていただければと思っている。具体的に詰めてはいないが、その際は県始め、関係の皆様方に協力をお願い申し上げたい」

「公共施設の解体撤去については、市においては沿岸部を中心に津波で地域全体が壊滅的な被害を受けたエリアもあり、市の施設を被災したままにしておくと、市民に影響与えることもある。復興に向けた取り組みが遅れる事はあってはならないので、復興計画の推進にあたって早急に撤去する必要がある公共施設については、公費解体の対象としていただきたい」

「最後に職員の派遣について。石川県、そして県内の市町から、家屋調査や仮設住宅の入居支援、また税の減免手続きなどで支援をいただいているが、6月以降も同じ規模で引き続き支援をいただけるよう、また調整をお願いしたい」

「本日の記者会見で、県において任期付き職員を採用し、県内の市町に派遣することを、明らかにしていただいた。ありがたく思っている。ぜひとも珠洲市にも派遣いただくようお願い申し上げたい」

穴水町 吉村光輝町長『小中学校の入学児童数 昨年度比12.8%減』

「はじめに総括支援、および※対口支援について5月6日付で一区切りさせていただいた。対口支援をいただいた静岡県、栃木県、奈良県、福岡県の4県には心より感謝申し上げる。4月からは全国の自治体から応援職員を派遣いただき、現在25人の方が町の各部署に配属され、これから本格的な復旧・復興を進めていく。5月10日には自衛隊生活支援隊の帰隊式が行われる。自衛隊の方々にも、発災当時から昼夜問わず、物資の輸送や給水に尽力いただき、心より感謝申し上げる」

※対口支援
避難所の運営などの災害対応業務について被災した都道府県内の応援だけでは難しい場合に、国が被災した自治体に支援する自治体を割り当てて職員を派遣してもらう仕組み。

「避難者の数は84人、避難所の数は10か所、LINEおよび電話登録者数は758人」

「仮設住宅の着工戸数は501戸、完成戸数は424戸、入居者数は758人」

「公費解体の申請棟数は1518、解体の発注済み棟数は29、解体の完了棟数が12。今後は5月に155件の3者立ち会いを予定しており、うち50棟を解体発注予定。申請のうち書類の不足は4割、そのうち8割が相続関係書類の不足という状況」

「小中学校の児童生徒の現状だが、令和6年度の入学児童生徒数が確定し、小学校については昨年度比で34人減となる173人。中学校は昨年度比で7人減となる107人となり、義務教育学校全体で41人の減。率にして12.8%の減となった。震災の影響も大きく、穴水小学校校舎の建て替えが必要となった状況の中、児童生徒数の確保と学校教育の復旧と充実化を図るため、引き続きのご支援をお願い申し上げる」

「次に人的支援についての要望。仮設住宅入居者へのケアについて。発災して4か月余りが経ち、応急仮設住宅やみなし仮設住宅の入居者へのケアが重要となっている。これから健康面・精神面での角度からの福祉的なサポートが重要な時期に入っていると感じている。特に町内に建設された応急仮設住宅の入居者に加え、在宅避難者の健康管理を行うための保健士といった専門職が不足してきている。保健士を2人程度、おおむね2年間の追加派遣をぜひお願いしたい」

「また税務関係事務について。被災家屋認定調査やり災証明発行事務はある程度落ち着いてきたが、今後、被災家屋の固定資産税等の減免事務を行うための税務経験者が不足している状況。税務経験のある職員を2人程度、おおむね1年間の追加派遣をお願いしたい」

能登町 大森凡世町長『公共施設の公費解体の対象にして』

「避難者は148人、前回(4月23日)から11人減少。避難所は13か所となった」

「断水は全戸で解消した。日本水道協会や大阪市水道局をはじめ、ご支援をいただいた皆様に本当に心から感謝を申し上げる」

「被災家屋の公費解体については691人から申請を受け付けていて、現在、9棟の解体工事を実施している。今月(5月)中には三十数棟の解体を実施する予定だ」

「公共施設の公費解体は、輪島市からも要望があったが、能登町でも、半壊以上の21施設をリストアップし要望している。このうち町の復興計画の策定にあたり、早急に撤去する必要がある内浦総合運動公園内の施設を、対象としていただきたい。広大な総合運動公園の土地の活用方策は、住民の皆様に選択肢をお示しする必要がある。しかし、活用方策が決まるまで、現在の状況のまま放置すれば、選択肢の検討をする際に必要な最低限の測量または地盤調査等に支障が生じるなど、地域全体のまちづくりが遅れ、ひいては住民生活に影響を与える。まちづくりを加速していくためにも、公費解体の対象としていただきたい」

「災害廃棄物の広域処理については、県が廃棄物処理計画に基づいて、令和7年度末をめどで処理を完了させるべく取り組んでいる。ただ、東日本大震災や熊本地震では、市町村から県へ地方自治法上の事務委託を行い、県が中間処理を備えた2次仮置き場を設置して災害廃棄物を受け入れた。町では6月以降、月100トン以上の解体の実施を見込んでおり、仮置き場が満杯となれば、公費解体の流れが滞ってしまう。パンクしてからでは手遅れなので、石川県には熊本などの事例も参考に、市町の仮置き場の状況を見ながら、先手で相談に乗っていただきたい」

「義援金の配分について。4億円を超える義援金が寄せられている。ご支援をいただいた方々に本当に感謝申し上げる。新たな生活に向けた動機付けとなるよう、被害を受けられた全町民に、被災者応援給付金と合わせて合計6万円をお渡しすることにしている。円滑に義援金等をお送りするために、石川県の義援金情報を活用させていただきたい。情報の提供にご協力をお願いしたい」

七尾市 茶谷義隆市長『解体業者などの宿泊場所の確保を』

「避難所は前回(4月23日)より2か所減り、指定避難所が5か所となった。避難者は前回より59人減って、167人となった。仮設への入居がこれから進む状況の中で、今後、指定避難所は3か所、避難者も90人から100人くらいになるのではないかと考えている」

「り災証明の二次調査は、申請件数が2904件、調査実施が1341件で、半分くらいの状況だ。他の自治体から応援をいただき班を増強した上で進めていきたい」

「ボランティアの受付件数は2177件で、うち完了件数が1588件。まだ残りが約600件あるが、1日あたり20件程度なので、この状況だとまだ1か月ほどかかるのではないか」

「公費解体の申請件数は1023件、自費解体の申請件数が22件。公費解体は調査を10件終わらせて、本日5月8日から1件着手している。自費解体については21件終了している」

「※掛かり増し経費の補助により、県に宿泊費・交通費を負担していただき、個人の費用負担が少なくなるのは非常にありがたい。ただ、宿泊場所がなかなか確保できないのが現状で、これから様々な事業者が入ってくる中で、宿泊場所をどう確保するか。従来から仮設の宿泊場所という話もあるが、今後、解体業者や建設業者が入ってくる中で、宿泊場所もしっかり確保していただいた上で、それが後々、例えば、自宅を失った高齢者などが生活できる住居になるような取り組みをしていただければと思う。外から業者を入れるのも1つだが、地元の業者で新たに雇用を産むのも1つではないか。他の地域から来ていただき、雇っていただいて、仕事をしていただくというのも、事業をスムーズにいくための大事なことだと思うので検討してほしい」

※掛かり増し経費
遠隔地の事業者が復旧工事などで被災地まで移動した場合にかかるガソリン代や宿泊費など、通常よりも多くかかる費用のこと。県が補助する制度を創設した。

志賀町 稲岡健太郎町長『ボランティア 6月から木金土に限定』

「避難所は前回の報告から2か所減り7施設に。避難者は39人減って172人となった」

「住宅の被害家屋の調査については、おととい(6日)から、未申請の住家、残り約1400戸に対して全戸調査を開始した。今月の中ほどに、すべての家屋調査を終わらせる予定だ」

「公費解体は、きのう(7日)から解体工事に着手した。来週からは町内5か所同時に工事に着手する予定。受付件数は1674棟」

「災害ごみは、前回の報告と同じで、1日約105トンで推移している」

「ボランティアのニーズの受付は累計で1844件、参加ボランティアの累計は7775人。ボランティア活動は6月以降、木曜日、金曜日、土曜日に限定する予定だ。7月1日に『地域ささえあいセンター』の設立を予定していて、その業務との兼ね合いで、徐々に縮小していく」

「仮設住宅の三次募集を5月15日から開始するが、その募集の数字次第で、追加で仮設住宅の着工をお願いするかもしれない。柔軟に対応していただきたい」

石川県の「災害対策本部員会議」の内容は県のホームページから誰でも確認できます。資料を確認できるほか、会議の動画を見ることもできます。