【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月8日)

イスラエルとイスラム組織ハマスの間での戦闘休止と人質解放に向けた交渉は、双方の代表が仲介国エジプトに到着し、8日も続けられるものとみられます。
イスラエル軍がガザ地区南部ラファでの攻撃を続ける中、ハマスは「軍事的な圧力のもとでは新たな取り組みには応じられない」などと強く反発していて、交渉の先行きは依然、見通せないままです。

※中東情勢に関する日本時間5月8日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエルとハマス 戦闘休止など交渉継続の見通し

ガザ地区をめぐるイスラエルとハマスの間での戦闘休止と人質解放に向けた交渉で、ハマスは仲介国が示した提案を受け入れるとしたのに対し、イスラエル側は人質の解放などの中核的な要求を満たすにはほど遠いとしながらも仲介国のエジプトに交渉団を派遣しました。

ロイター通信は、双方のほか、仲介国のエジプトとカタール、それにアメリカの交渉団が、前日に続き8日もカイロで交渉を続けるとの見通しを伝えています。

また、アメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官は8日、イスラエルに向かうと報じられています。

そして、ネタニヤフ首相らと会談するとしていて、交渉を進展させるための外交も続いています。

米CIA長官が活発な動き イスラエル首相とも会談か

ロイター通信やアメリカのニュースサイト「アクシオス」によりますと、現在、中東を訪れているCIAのバーンズ長官は、3日にはエジプトの首都カイロに到着し、5日にはカタールの首都ドーハに移動し、その後、政府首脳と緊急に会談したということです。

そして、7日にはエジプトの首都カイロに戻ったと伝えられています。

ロイター通信は、カイロで行われた交渉について、エジプトの関係者の話として、ハマスとイスラエルに加え仲介国のエジプトとカタール、それにアメリカの交渉団が協議の継続に前向きな姿勢を示し、8日も話し合いを続ける見通しだと報じています。

ロイター通信は、バーンズ長官がネタニヤフ首相らと会談するため8日、イスラエルを訪問すると伝えており、活発な動きを見せています。

イスラエル軍 ラファ検問所のガザ地区側を掌握 空爆も

一方で、イスラエル軍は、およそ120万人が身を寄せるガザ地区南部ラファの東側での地上部隊による作戦を開始し、エジプトとの境界にあるラファ検問所のガザ地区側を掌握したのに加え、8日もラファでの空爆を続けているとみられます。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは8日、現地の医療関係者の話として、ラファでは過去24時間で35人が死亡し、129人がけがをしたなどと伝えています。

ハマスの政治部門の幹部は7日の会見で「軍事的な圧力のもとでは停戦や人質解放の新たな取り組みには応じられない」と強く反発していて、交渉の先行きは依然、見通せないままです。

こうした中、イスラエル軍は8日、ハマスの攻撃によって一時閉鎖していたガザ地区との境界にあるケレム・シャローム検問所の運用を再開したと明らかにし、ガザ地区に人道支援物資が搬入されているとアピールするねらいもありそうです。

林官房長官「軍事作戦は惨事に 即時の停戦を」

林官房長官は、午前の記者会見で「ラファには多数のパレスチナ避難民が集中している。そのような状況下での軍事作戦はさらに多くの犠牲者が発生する惨事となり、人道支援活動がますます困難になることは明らかだ」と指摘しました。

そのうえで「わが国としてはラファへの全面的な軍事作戦には反対だ。人道支援活動が可能な環境が確保され、人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、持続可能な停戦につながることを強く期待している」と述べました。

ハマス “ラファ検問所の攻撃は停戦と人質解放を妨げる”

一方、ハマスは7日「ラファ検問所の攻撃は危険なエスカレーションで、停戦と人質解放への努力を妨げるものだ」などと強く反発していて交渉が進展するかは予断を許さない状況です。

ガザ地区での戦闘は7日で7か月となりましたが、地元の保健当局によりますと、犠牲になった人はこれまでに3万4789人と連日、増え続けているほか、イスラエル軍が人道支援物資の搬入拠点となってきたラファ検問所を掌握したことで搬入が途絶えていると伝えられていて、人道状況のさらなる悪化が懸念されています。

グテーレス事務総長「ラファ攻撃は人道的悪夢」

国連 グテーレス事務総長は7日、ニューヨークの国連本部で急きょ会見を開きました。

はじめに、イスラエルとイスラム組織ハマスとの間の交渉について「両者の合意は、ガザのパレスチナ人、人質として拘束されている人とその家族の、耐え難い苦しみを止めるために不可欠だ」と述べ、イスラエルとハマスの双方に対し合意に向けて力を尽くすよう改めて呼びかけました。

一方で「しかし事態は誤った方向に進んでいる」と述べ、ガザ地区南部のラファでイスラエル軍の地上部隊が作戦を始めたことについて触れ、「イスラエル政府に対していかなるエスカレーションもやめ、現在進行中の外交交渉に建設的に関与するよう強く求める」と訴えました。

そして、グテーレス事務総長は「ラファへの攻撃は戦略上の誤りであり、政治的惨事であり、人道的悪夢だ。イスラエルに影響力を持つすべての関係者に対し、さらなる悲劇を避けるために全力を尽くすよう訴える」と述べ、イスラエルを擁護してきたアメリカをはじめ、すべての関係国に対し、ラファへの地上作戦の中止をイスラエル政府に働きかけるよう呼びかけました。

ユニセフ「子どもたちの映像や現地の話すべてが無視された」

イスラエル軍の地上部隊がガザ地区南部のラファで作戦を始めたことを受け、国連機関は、現地の人道状況の悪化に一層懸念を強めています。

ユニセフ=国連児童基金の報道官は、7日、スイスで行った記者会見で「あらゆる警告、殺傷された子どもたちの映像や現地の絶望的な話などすべてが無視された。最も恐れていた悪夢が現実のものとなった」と述べ、停戦が必要だと訴えました。

また、OCHA=国連人道問題調整事務所の報道官は、ラファの検問所は現在、イスラエル軍が掌握しておりガザ地区への人道物資の搬入ができなくなっているとした上で、「一定期間燃料が来なければ、ガザ地区での人道活動は墓場に追い込まれてしまう」と述べ、人道状況の悪化に強い危機感を示しました。

国連によりますと、ラファでは現在、安全な水や食料の不足が深刻な上、トイレはおよそ850人に1つ、シャワーはおよそ3500人に1つしかないなど、衛生環境も劣悪となっているということです。

バイデン政権 イスラエルへの弾薬輸送を一部停止 米報道

イスラエルによるガザ地区への攻撃が続き、民間人の犠牲が拡大する中、アメリカの複数のメディアはバイデン政権がイスラエルへの弾薬の輸送を一部、停止していると報じました。

このうち、アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」は、輸送を停止しているのはアメリカ製の2種類の精密爆弾だとしたうえで、アメリカがイスラエルに対する武器の供給を停止するのは、去年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃して以降、初めてとみられるとしています。

アメリカはこれまで一貫してイスラエルへの軍事支援を続けてきましたが、ガザ地区での民間人の犠牲の拡大に国内外から批判が強まる中、イスラエルに対して民間人の保護を強く求めています。

ポリティコは弾薬の輸送停止の理由について、イスラエルに政治的なメッセージを送るためだとするアメリカの当局者の話を伝えています。

ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は7日、記者団から弾薬の輸送停止について問われたのに対し「個別の輸送については話さない。イスラエルの安全保障に関与していく姿勢に変わりはない」と述べるにとどめました。