井上尚弥 スーパーバンタム級の4団体統一王座の防衛戦に勝利

プロボクシングの井上尚弥選手が6日夜、東京ドームで行われたスーパーバンタム級の4団体統一王座の防衛戦でメキシコのルイス・ネリ選手に6ラウンド、テクニカルノックアウト勝ちし、4団体統一チャンピオンとして初めて防衛に成功しました。

去年、スーパーバンタム級で2階級目となるボクシング主要4団体の王座統一を果たした井上選手は6日夜、東京ドームでこれまで2階級で世界チャンピオンになっていたメキシコのルイス・ネリ選手と対戦しました。

第1ラウンド、井上選手は接近戦からネリ選手に左のフックで顔面を捉えられ、いきなりダウンを喫しました。

しかし、直後の第2ラウンドに相手のパンチの打ち終わりで左のフックを顔面に合わせてダウンを奪い返すと、第5ラウンドにはロープを背負いながら再び左のフックを打ち込み、相手をリングに倒しました。

そして、続く第6ラウンドにも相手をコーナーに追い込んだあと右のパンチを打ち込んで3回目のダウンを奪うと、相手が立ち上がることができず、6ラウンド1分22秒でテクニカルノックアウト勝ちし、4団体統一チャンピオンとして初めて防衛を果たしました。

東京ドームで世界タイトルマッチが行われたのは、ヘビー級元統一世界王者のマイク・タイソンさんがノックアウトで敗れた試合以来、34年ぶりでした。

井上尚弥「いつになく最高の瞬間だった」

井上尚弥選手は「倒した瞬間はいつになく最高の瞬間だった。東京ドームで34年ぶりの世界タイトルマッチでプレッシャーはあったが、皆さんの応援が僕の力になった」と喜びを語りました。1ラウンド目でいきなりダウンを喫したことについては「ダウンした瞬間も落ち着いて対処することができた。ボクサーとして燃え上がるところでもあるので非常にハイテンションで試合をしていた」と振り返りました。

そして、「きょうは駆けつけてくれたお客さんが満足する試合だったと思う。また皆さんが期待する試合、最高の試合をしていきたいので今後とも期待してください」と力強く話していました。

「世紀の番狂わせ」の舞台で番狂わせを阻止

34年前、1990年2月11日に東京ドームで行われた世界タイトルマッチではヘビー級の統一世界王者だったマイク・タイソンさんが挑戦者にノックアウト負けし、「世紀の番狂わせ」と呼ばれました。

同じ舞台で行われた4団体統一王座の防衛戦で井上尚弥選手は試合開始直後にダウンを喫する劣勢から冷静さを取り戻して巻き返し、「番狂わせ」を阻止しました。

井上選手は「モンスター」の異名を取り、破壊力のあるパンチを持ち味にプロでは26戦全勝。去年は史上2人目となる2階級での4団体統一を達成して日本選手として初めて100年を超える歴史があるアメリカのボクシング専門誌、「ザ・リング」の年間最優秀選手にも選ばれるなど世界を代表するボクサーの1人です。

試合前には「5万人近いファンの声援は自分にとってプラスになる。とてつもない試合をしたい」と自信をみなぎらせていましたが日本ボクシング界では異例となる4万3000人のファンが集まった東京ドームという大舞台に実際に立つと重圧を感じたと言います。

試合後の会見では「気負っていた部分はあった。入場したときに東京ドームの景色を見て舞い上がってはいないが、浮き足だつ感じはあった」と明かしました。

こうした中で始まった防衛戦、ピンチはさっそく訪れました。

第1ラウンド、「番狂わせを皆さんが目撃するだろう」と虎視眈々(こしたんたん)とチャンスをうかがっていたルイス・ネリ選手のパンチの軌道が読めず左フックを顔面に受けてダウンを喫し、ファンの大歓声は悲鳴に変わりました。

しかし、井上選手自身はダメージはさほど感じなかったことと、ポイントを取り戻すためにどう戦うかを考えることで冷静さを取り戻したと言います。

そして、続く第2ラウンドで、すぐにダウンを奪い返したことで「第1ラウンドのダウンをチャラにできた」と完全にペースを取り戻しました。

その後はネリ選手を相手にガードを下げてパンチを誘うなど余裕も見せ、テクニカルノックアウト勝ちにつなげました。

所属ジムの大橋秀行会長が「寿命が縮まった」と振り返ったあわや「番狂わせ」という展開。しかし、井上選手は大舞台の重圧にも負けず、劣勢から巻き返し、4団体統一チャンピオンとしての実力を改めて世界に示しました。