米大統領選まで半年 バイデン大統領とトランプ氏が競り合う

秋のアメリカ大統領選挙まで、5月5日で半年となります。最新の世論調査では、民主・共和両党の候補者への指名が固まっているバイデン大統領とトランプ前大統領が競り合っていて、選挙戦が激しさを増しています。

アメリカ大統領選挙はことし11月5日に投票日を迎え、与党・民主党では再選を目指すバイデン大統領が、政権奪還を目指す野党・共和党ではトランプ前大統領が、党の候補者に指名されることが固まっています。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、各種世論調査の支持率の平均は、5月1日時点で差は1.5ポイントと競り合っていて、選挙戦が激しさを増しています。

このうちバイデン氏は、大統領に就任して以降、記録的な数の雇用を生み出したなどと実績をアピールしているほか「トランプ氏は民主主義に脅威をもたらす」などと訴えて、対決姿勢を鮮明にしています。

これに対してトランプ氏は、バイデン氏がインフレをもたらしたなどと強く批判するとともに、自身が大統領だった間、国際情勢は安定していたと強調しています。

また、トランプ氏は大統領経験者として初めて刑事裁判の被告となっていますが、裁判について「政治的な魔女狩りだ」などと述べ、選挙妨害だという主張を繰り返しています。

一方、今回の大統領選挙では、史上最高齢の大統領のバイデン氏と刑事事件で起訴されているトランプ氏のいずれも支持したくない有権者が一定数いるとみられ、ABCテレビなどが3月に行った世論調査では「大統領としてどちらがよりよい仕事をすると思うか」という問いに対し、30%が「どちらでもない」と回答しました。

こうした中、無所属で立候補を表明しているケネディ元大統領のおいのロバート・ケネディ・ジュニア氏が、全米で一定の支持を集めていて、バイデン氏とトランプ氏の支持層を取り込み、選挙戦にどこまで影響を与えるのかも注目されています。

バイデン氏とトランプ氏“支持率僅差” 各種世論調査平均

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」のまとめによりますと、5月1日時点の各種世論調査の平均では、
▽バイデン大統領を支持するとした人は45.1%、
▽トランプ前大統領を支持するとした人は46.6%で、
僅かな差となっています。

トランプ氏が大統領選挙への立候補を表明した1か月後にあたる、おととし12月15日時点では、バイデン大統領の支持率は44.8%で、トランプ氏を支持するとした人に比べ2.8ポイントリードしていました。

しかし、トランプ氏が東部ニューヨーク州の大陪審に起訴された去年春には、トランプ氏の支持率がバイデン大統領の支持率を一時上回ったほか、去年秋以降はトランプ氏にリードされる状況が続いていて、ことし1月には、▽バイデン大統領の支持率が43%、▽トランプ氏の支持率が47.3%と、4ポイント余りの差がつくこともありました。

また、接戦が予想される7つの州でそれぞれ行われた世論調査の支持率は、4月末時点の平均で、すべての州でトランプ氏がバイデン大統領を上回っています。

このうち、前回の大統領選挙でバイデン大統領が勝利した西部アリゾナ州では、▽バイデン大統領が43.3%、▽トランプ氏が48.3%と、トランプ氏がバイデン大統領に5ポイントの差をつけているほか、東部ペンシルベニア州では、▽バイデン大統領が47%、▽トランプ氏が48%となり、支持率がきっ抗しています。

欧州 極右や右派勢力 トランプ氏勢いに乗じ影響力拡大ねらいか

ヨーロッパの極右や右派勢力の間では、トランプ前大統領がことし11月の大統領選挙で再び勝利し、政権を奪還することへの期待が高まっています。

この集会は、4月下旬、ハンガリーの首都ブダペストで、地元のシンクタンクが、トランプ前大統領を支持するアメリカ最大規模の保守派の集会「CPAC」のヨーロッパ版として開きました。

集会にはアメリカの野党・共和党の議員が出席し、トランプ氏と、その元側近のバノン氏がビデオメッセージを寄せました。

このうちトランプ氏は「われわれは共にあらゆる邪悪な勢力から国家を解放する闘いに参加している」と述べ、6月に行われるヨーロッパ議会選挙と、11月のアメリカ大統領選挙での勝利に向けて連携を呼びかけました。

この呼びかけに応じる姿勢を示しているのが、ことし3月トランプ氏と会談するなど関係の近さをアピールするハンガリーのオルバン首相をはじめ、オランダやスペインの極右政党のトップや右派政党の議員などです。

オルバン首相は演説で、各国政府が国際的な規範などにとらわれず主権を優先して行動できるようにしようと訴え、「ヨーロッパを再び偉大に。ドナルド・トランプ、ヨーロッパの主権主義者たちに万歳。選挙を戦い抜こう」と述べました。

集会では、トランプ氏とオルバン氏の顔写真入りのシャツを着た人の姿もみられ、トランプ氏のメッセージやオルバン首相の演説に対して拍手を送るなどして、会場は熱気に包まれていました。

トランプ氏を支持するアメリカの保守勢力とヨーロッパの極右や右派勢力は、グローバリズムや国際協調に否定的で、自国第一主義的な考えで共通しています。

今回の集会は、双方が共通の立場を基盤にして勢力拡大に向けて連携を深めようとしていることを強く印象づけました。

ヨーロッパの極右や右派勢力は、トランプ氏の勢いにも乗じて、自分たちがヨーロッパの中で影響力を拡大することをねらっているとみられ、トランプ氏が大統領選挙で再び勝利することを待ち望んでいます。

専門家 “現時点ではいずれの候補も優勢と言えず”

ことし11月のアメリカ大統領選挙で対決することになるバイデン大統領とトランプ前大統領について、アメリカ政治に詳しい慶應義塾大学の渡辺靖教授は、「各種世論調査を見ても五分五分で、両候補ともいまひとつ人気のない候補だ。激戦州では第3の候補、あるいは第3の党がキャスティングボートを握る可能性もある」として、現時点ではいずれの候補も優勢とは言えないと分析しています。

そして、今後、それぞれの候補の勝敗に影響する課題として、バイデン大統領は、インフレやメキシコとの国境管理の対応に加えて、イスラエルによるガザ地区への攻撃に対する抗議デモの行方を、また、トランプ前大統領については、人工妊娠中絶の規制への対応のほか、トランプ氏に批判的な層が一定数いることや、刑事裁判の行方などをあげています。

一方、トランプ氏をめぐっては、自民党の麻生副総裁やハンガリーのオルバン首相、それにポーランドのドゥダ大統領など、各国の首脳や要人が相次いで面会を行っています。

これについて渡辺教授は、「一昔前までアメリカでは政権が代わっても外交政策そのものはほぼ一貫していたが、前回のトランプ政権では地球温暖化対策から自由貿易協定、同盟関係に至るまでかなりのぶれが生じた。その変動に備えておこう、リスクヘッジをしておこうという意図が各国で働いているのだと思う」と分析しています。

そして、ウクライナ支援や北朝鮮による拉致問題などそれぞれの国の課題について、トランプ氏に直接伝える機会となり、各国にとって有益だとしています。

その上で「トランプ氏からすれば、選挙前から自分の意向をくんで各国が動き出してくれるのは好都合であり、まさにトランプ氏の思惑どおりだと言える」と指摘しています。