米コロンビア大学 イスラエル抗議で建物占拠のデモ 強制排除

アメリカ・ニューヨークにあるコロンビア大学で、イスラエルによるガザ地区への攻撃に抗議して建物を占拠していたデモの参加者を警察が強制排除しました。

コロンビア大学では、キャンパス内にテントを張って抗議するデモを続けていた学生たちに対し、先月29日、大学側が期限を設けて「退去しない学生は停学処分にする」と通告しました。

これに反発する参加者の一部は翌日、ガラスをたたき割るなどして建物のひとつに侵入し、占拠しました。

現地の30日夜、日本時間の5月1日午前、大学側の要請を受けて大勢の警察官が窓などから建物内に入り、占拠していたデモの参加者の強制排除に乗り出しました。

現場ではデモの参加者を連行するバスが通過した直後に抗議活動を支持する人と警察官がもみ合いになるなど、緊迫した状況が続き、アメリカの各メディアは合わせて数十人が逮捕されたと伝えています。

ニューヨーク市警は強制排除に先立って開いた会見で、平和的なデモを外部の活動家が緊張を高める目的で乗っ取ろうとしているという見方を示していました。

コロンビア大学は、このあと今月15日の卒業式後の17日まで、キャンパス内に警察官を配置するよう要請しているということです。

アメリカ各地の大学では、先月18日にコロンビア大学で退去に応じないデモの参加者が逮捕されたことをきっかけに抗議活動が広がっていて、今回の大学や警察の対応に反発する動きが出る可能性もあります。

コロンビア大学とは

ニューヨークの中心部マンハッタンにあるコロンビア大学はアメリカで5番目に歴史があり、創立はアメリカが独立する前の1754年です。

ハーバード大学やイェール大学などと並び、アメリカ東海岸の名門校グループ、「アイビーリーグ」を構成しています。

大統領経験者では
▽セオドア・ルーズベルト元大統領
▽フランクリン・ルーズベルト元大統領
▽オバマ元大統領がコロンビア大学で学びました。

▽アイゼンハワー元大統領はコロンビア大学の学長を務めた後大統領に就任しました。

それに
▽オルブライト元国務長官や
▽イスラエルを訪問しているブリンケン国務長官などが学んだほか
世界的にも優れた研究機関として数多くのノーベル賞の受賞者を輩出しています。

日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹さんも客員教授を務めました。

また、大学では過去にも学生たちによる抗議活動で建物が占拠されたことがあります。

1968年には、ベトナム戦争の反戦運動や公民権運動の高まりなどにより1000人以上の学生らが5つの建物を占拠しました。

学生たちの行動は1970年に公開された映画「いちご白書」のモチーフとなったことで知られています。

30日に警察官が占拠していたデモ参加者らの強制排除に乗り出した「ハミルトン・ホール」も、当時、学生らが占拠した建物の1つでした。

専門家「他の大学に対する影響力も強い」

コロンビア大学の大学院で学び、中東情勢に詳しい放送大学の高橋和夫名誉教授は、コロンビア大学での抗議活動が、一部の参加者による建物の占拠にまで至った背景について「大学は主要メディアが集中しているニューヨークにあり、常にメディアを意識して行動できるということが刺激になっていると思う。他の大学に対する影響力も強い。ベトナムの反戦運動のときも先頭を切って戦争に反対するという学生運動が盛り上がった」と指摘しています。

また、ユダヤ系の人たちの影響力がさまざまな分野に及んでいるアメリカで、若い世代の考えが変化してきているといいます。

高橋名誉教授は「ユダヤ人の若い世代では、ホロコーストから時間がたち、ユダヤ人が受けた扱いは非常にひどいものであったことは確かだけれど、だからといってイスラエルが何をしてもいいという問題ではないと考え、政策に批判的な目を持つ人たちが出てきた。また、ガザ地区やヨルダン川西岸で何が起こっているのか、SNSで直接情報を得る時代になり若い人たちの考えを変えた」と指摘しています。

そのうえで、アメリカの大学での抗議活動が中東情勢に与える影響について「アメリカ政府が必ずしもアメリカ国民を代表していないんだというメッセージを世界に発している。イスラエルを徹底的に支持する政策に対する国際的な批判をさらに勇気づけることになると思う」と述べました。

さらに、11月のアメリカ大統領選挙への影響については「2020年の大統領選挙でバイデン大統領の支持層の重要な柱の1つが若い層だった。今後、こうした学生の抗議活動が続けば若い層が選挙に来ないという可能性が高く、若い学生の人口が多い激戦州でさらなる苦戦が予想される」という見方を示しました。

UCLA校では抗議活動めぐり激しい衝突

アメリカ西部カリフォルニア州ロサンゼルスの大学では、イスラエルによるガザ地区への攻撃に抗議する人々と、それに反対する人々の間で激しい衝突が起きています。

アメリカのABCテレビなどによりますと、UCLA=カリフォルニア大学ロサンゼルス校のキャンパスでは、イスラエルによるガザ地区への攻撃に抗議する人々がテントを張っていた場所で、現地時間の30日の午後11時ごろから、抗議活動に反対する人々との衝突が起きました。

ABCテレビがキャンパスを上空から撮影した映像には、集まった人たちが棒を持って殴り合ったり、スプレーを噴射したりして激しく衝突している様子が映っています。

アメリカのメディアは、緊迫する現場の様子を生中継するなどしていて、注目の高さがうかがえます。