IHI子会社 エンジン4300台余の測定データ改ざん 国交省調査へ

エンジンメーカーのIHI原動機が2003年以降に出荷した船舶などのエンジン4300台余りについて、燃料消費率の測定データを改ざんしていたことが分かりました。
国土交通省は今後、立ち入り検査を実施するなどして詳しいいきさつを調査する方針です。

東京に本社をおくエンジンメーカーのIHI原動機はエンジンの試運転のあと取引先に報告する成績書に、実際に測定された燃料消費率とは異なる数値を記載していたと発表し、24日、国土交通省に報告しました。

IHIによりますと2003年以降に国内外に出荷された船舶用と陸上用のエンジン、合わせて5500台余りのうち4361台でデータの改ざんが行われていたということです。

また、2058台が取引先との間で決められた値を満たしていなかったということです。

排気ガスの排出量については海外向けの船舶用のエンジンの一部で基準を超えているおそれがあることが確認されたとしています。

国土交通省は会社側に対して今回、明らかになった2003年より前に不適切な行為がなかったかや、改ざんが行われたエンジンを搭載している船舶に法令違反の可能性がないかなどについて確認するよう指示しました。

国土交通省は性能を確保する観点から極めて遺憾だとして、今後、立ち入り検査を実施するなどして詳しいいきさつを調査することにしています。

IHI副社長ら陳謝「企業の根幹問われるゆゆしき行為」

IHIは、子会社が出荷した船舶用エンジンなどで測定データの改ざんが明らかになったことを受けて、都内で記者会見を開き、盛田英夫副社長らが陳謝しました。

この中で、IHIの盛田副社長は「皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしていることを深くおわび申し上げます」と陳謝したうえで、「ものづくりを担う企業としての根幹が問われるゆゆしき行為だ」と述べました。

会社がこれまでに行った関係者への聞き取りでは、
▽燃費データをよく見せたり、データのばらつきを整えたりするために改ざんが行われていたという証言があったほか
▽改ざんは1980年代後半には行われていたという証言もあったということです。

一方で、エンジンの安全性を疑わせるような事案は、今のところ確認されていないとしています。

IHIでは、2019年にも資格の無い従業員が航空機のエンジンや部品の検査を行うなどの不正が発覚しています。

これについて、盛田副社長は「コンプライアンス意識の向上について不断の取り組みを進めてきたが、道半ばであったと認めざるをえない」と述べました。

IHIは近く、外部の有識者を中心にした特別調査委員会を立ち上げ、原因究明などを進めるとしています。

データ改ざんのエンジンは

IHIによりますと、測定データの改ざんがあったのは、漁船やタグボートなどに搭載される船舶用エンジンと、発電装置や鉄道車両に搭載される陸上用エンジンです。

子会社のIHI原動機の新潟市にある「新潟内燃機工場」と、群馬県太田市にある「太田工場」で改ざんが行われたということです。

また会社によりますと陸上用エンジンは原子力発電所の非常用発電機向けに、これまでに43台が出荷されているということです。

このうち一部のエンジンでデータの改ざんがありましたが、実際の測定値はいずれも取引先との間で決められた基準を満たしていたとしています。