海自ヘリ2機墜落1人死亡7人不明 防衛相“衝突した可能性高い”

20日夜、伊豆諸島沖で海上自衛隊のヘリコプター2機が訓練中に通信が途絶え、乗っていた隊員8人のうち1人が救助され、7人が行方不明になっている事故で、救助された1人の死亡が確認されました。
木原防衛大臣は、2機のフライトレコーダーを近接した場所で発見し、回収したことも明らかにしたうえで、「衝突した可能性が高いと判断している」と述べました。

20日夜、伊豆諸島の鳥島の沖合で海上自衛隊のSH60哨戒ヘリコプター2機が潜水艦を捜索する訓練をしていた際に通信が途絶え乗っていた隊員8人のうち1人が救助され、7人が行方不明となっています。

防衛省によりますと、通信が途絶えたのは鳥島の東の沖合およそ270キロの海域で、救助された1人は死亡が確認されたということです。

また、現場周辺では回転翼のブレードを含む機体の一部が見つかったほか、2つのフライトレコーダーが見つかり回収したということで、2機は墜落したと断定しました。

フライトレコーダーは近接した場所から見つかったということで、2機は空中で衝突した可能性もあるということです。

防衛省は隊員7人と機体の捜索を続けるとともに、今後、フライトレコーダーの解析を行って、墜落した詳しいいきさつを調べることにしています。

死亡確認の隊員 身元の確認など行う

防衛省によりますと、死亡が確認された隊員1人を神奈川県の自衛隊横須賀病院に移送し、死因の特定や身元の確認などを行っているということです。

また、回収した2つのフライトレコーダーは神奈川県の厚木航空基地への輸送が終わり、今後、解析作業を行う予定だということです。

21日16:30ごろ

木原防衛相「安全管理や緊急時の手順の教育改めて実施」

木原防衛大臣は、午後4時半ごろ、防衛省で改めて記者団の取材に応じました。

この中で、木原大臣は「このような事故が起こったことは、痛恨の極みだ」と述べた上で、回収した2機のフライトレコーダーの解析作業を進める考えを示しました。

また、今後の対応について「事故原因は確認中だが、航空機の安全管理は徹底しなければならない。自衛隊のすべての航空機に対して、飛行前後の点検を入念に実施することや、操縦者に対して安全管理や緊急時の手順の教育を改めて実施すること、さらに部隊の長には、隊員を適切に指導することなどを改めて大臣指示の形で速やかに発出したい」と述べました。

一方、木原大臣は「訓練の頻度を下げて運用能力を向上させないまま有事があった場合には、なおいっそう危険性が増すことにつながる。訓練をして十分に練度を上げたうえで、有事に備えることが必要だ」と述べ、訓練の必要性を強調しました。

海上自衛隊 事故調査委員会を設置 幕僚長が陳謝

海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長はは21日午後、会見を開き、2機にはそれぞれ機長1人と副操縦士1人、それに航空士2人の合わせて4人が乗っていたとしたうえで、機長の氏名について、▽長崎県の大村航空基地所属の松田拓也3等海佐と▽徳島県の小松島航空基地所属の板村一輝3等海佐だと明らかにしました。

事故当時、2機はほかのヘリコプターも含めて合わせて3機で海上自衛隊の潜水艦を目標に潜水艦を探知する訓練を行っていたということで、2機が著しく近接していたことを示すデータがあったことなどから、空中で衝突した可能性が高いとしています。

現場で見つかった2つのフライトレコーダーについては、解析を行う部隊に輸送しているということで、海上自衛隊内に事故調査委員会を設置し、原因の究明と7人の捜索を急ぐ考えを示しました。

酒井海上幕僚長は「このような状況になり無念でならない。国民の皆様に大変なご心配をおかけし心からおわびを申し上げる」と述べ陳謝しました。その上で、「過去の事故を踏まえて訓練の際には見張りや高度、距離をとるよう指導している。今回、どうしていたかが大きなポイントになる」と述べました。

訓練の詳細

海上自衛隊によりますと、墜落した2機は当時、潜水艦を探知して対処する「対潜戦」と呼ばれる任務の訓練を行っていました。

「対潜戦」では、哨戒ヘリコプターが低い高度でホバリングをして海中の音波を拾う「ソナー」と呼ばれる装置をケーブルでつり下げて海中に投下し、潜水艦からのわずかな音を探知するということです。

複数の場所で音波を拾うことで、潜水艦がいる方角や距離がより正確に把握できることから、「対潜戦」では通常、2機から3機のヘリコプターが連携して対応するということで、状況によってはヘリコプターどうしが近づくこともあるということです。

2021年7月には夜間に訓練を行っていた海上自衛隊のSH60哨戒ヘリコプター2機が接触して機体の一部が壊れる事故が起き、海上自衛隊は見張りを十分に行わず、お互いの動きを正確に把握しなかったことが原因だとしています。

こうしたことから複数の機体で訓練を行う際には見張りを万全にし、安全な高度や距離を保つようにしているということです。

今回の訓練には、哨戒ヘリコプター6機と護衛艦など8隻、潜水艦1隻が参加していたということで、墜落した2機は別の1機も含めて3機で現場周辺を飛行していたということです。

海上自衛隊は、夜間の飛行は昼間よりも視認性が劣るため危険を伴うとしていますが、暗視ゴーグルを装着すると護衛艦での発着が難しくなるなどとして、今回墜落した機体も含めて暗視ゴーグルは装着していなかったということです。

幕僚長 中国での国際会議出席は取りやめ

酒井良海上幕僚長は中国で開かれている29の国の海軍トップらが集まる国際会議に出席する予定でしたが事故の対応にあたるため取りやめるとしています。

21日09:00すぎ

木原防衛相 “フライトレコーダーを近接した場所で発見”

木原防衛大臣は午前9時すぎ、記者団に対し救助した1人の死亡が確認されたことを明らかにし、「このような状況に至り、とても残念でならない」と述べました。

そして「ほかの7人については、全力を挙げて捜索救難に当たっている」と述べました。

また、木原大臣は、2機のフライトレコーダーを近接した場所で発見し、回収したことも明らかにしたうえで、「衝突した可能性が高いと判断している」と述べました。

そして、墜落したヘリコプターと同型機の訓練飛行を見合わせると説明しました。

捜索のため巡視船と航空機が現場へ

海上保安庁によりますと、20日午後11時15分ごろ、海上自衛隊の護衛艦「いせ」から訓練中の海上自衛隊の航空機2機が墜落したと118番通報があったということです。

通報があったのは伊豆諸島の鳥島の東、およそ270キロの海域だということで、海上保安庁は捜索のため巡視船2隻と航空機1機を現場に向かわせました。

巡視船が現場海域に到着するにはまだ時間がかかるということです。

海上自衛隊によりますと、現場周辺の水深はおよそ5500メートルあるとみられ、捜索が難しい場所だということです。

アメリカ駐日大使「捜索と救助に協力申し出ている」

伊豆諸島沖で訓練中の海上自衛隊のヘリコプターが墜落した事故について、アメリカのエマニュエル駐日大使は、SNSに投稿し「アメリカ政府は、鳥島付近で墜落した海上自衛隊のヘリコプター2機の捜索と救助に協力を申し出ている」と明らかにしました。その上で「私たちは、友人であり同盟国である日本とともに、肩を並べて共に立ち向かう」としています。

21日02:30前

木原防衛相「2機は墜落したと考えられる」

木原防衛大臣は午前2時半前、防衛省で記者団に対し「きのう午後10時38分ごろ、SH60K哨戒ヘリコプター2機が伊豆諸島の鳥島東の洋上で訓練中、通信途絶した。現在、海上自衛隊が現場周辺の捜索を行っているが8人の搭乗員中1人は収容し、7人が行方不明で、収容した1人の安否については現在確認中だ。機体の一部と思われるものを洋上で確認しており、2機は墜落したものと考えられる。現時点で原因は不明だが、まずは人命の救出に全力を尽くしていく」と述べました。

そのうえで、自衛隊機の状況の把握と速やかな捜索の実施のほか、機体付近の船舶などへの被害の有無の確認、それに関係自治体に迅速に情報提供を行うよう指示したことを明らかにしました。

また、記者団が他国の関与の可能性について質問したのに対し「夜間の対潜水艦対応の訓練中だったが、今言ったようなことについては確認は取れていない」と述べました。

「SH60K哨戒ヘリコプター」とは

海上自衛隊のホームページによりますと、SH60K哨戒ヘリコプターは、全長およそ20メートル、幅が16メートルあまりで、エンジンは2基備えられ、乗員は4人だということです。

主に護衛艦に搭載されて運用され、潜水艦を探知するための専用の装置などを装備しているということです。

鳥島とは

鳥島は東京の都心から南へおよそ600キロ離れた火山島です。

鳥島の北にある青ヶ島とはおよそ220キロ、南にある小笠原諸島の父島とはおよそ420キロ離れています。

伊豆鳥島とも呼ばれ、気象庁のホームページなどによりますと島は直径2.7キロでほぼ円形、山の標高は394メートルあります。

過去繰り返し噴火が確認されていて1902年の噴火では125人のすべての島民が犠牲になったとされています。

また、1965年には群発地震があり、気象観測所が閉鎖されてからは無人島となっています。

1965年には島全体が国の天然記念物に指定されています。

気象庁 注意報や警報の発表はなし

気象庁によりますと、20日夜、伊豆諸島や小笠原諸島周辺は緩やかに高気圧に覆われていたということです。

人工衛星の画像からは鳥島の周辺に雲がかかっていた可能性もあるということですが、鳥島から小笠原諸島の周辺はレーダーがなく、鳥島で雨が降っていたかはわからないということです。

また、伊豆諸島南部や小笠原諸島には20日夜、注意報や警報は、発表されていませんでした。

自衛隊機 過去の事故

自衛隊機をめぐっては、去年4月に陸上自衛隊のUH60ヘリコプターが沖縄県の宮古島沖で墜落し、隊員10人が死亡する事故が起きています。

おととし1月には、航空自衛隊のF15戦闘機が石川県沖の日本海に墜落し、隊員2人が死亡する事故が起き、2019年4月には、青森県沖で航空自衛隊のF35戦闘機が墜落し、パイロット1人が死亡しました。
2017年8月には海上自衛隊のSH60Jヘリコプターが青森県沖の日本海に墜落し、隊員3人が亡くなっています。

今回の墜落事故について防衛省は2機が空中で衝突した可能性も含めて原因を調べていますが、3年前の2021年7月には鹿児島県の奄美大島沖で夜間の訓練中に海上自衛隊のSH60KヘリコプターとSH60Jヘリコプターが接触する事故も起きています。
この時は2機とも回転翼の羽根1枚が損傷しましたが、自力で護衛艦に戻り、けが人はいませんでした。

21日19:00時点

【解説動画】夜間の訓練中 何が起きたのか

(社会部 須田唯嗣記者)
Q.夜間の訓練中の事故が繰り返し起きているが、難しさは?

A.やはり視界が悪いということです。海上自衛隊トップの酒井海上幕僚長は21日の会見で「夜間については視認性が劣るので、非常に難しいオペレーションになる」と述べました。

ただ、潜水艦は隠密性を高めるため夜中でも活動を行うことから、夜間の訓練は必要だとしています。

Q.今回は3機で訓練を行っていたということだが、複数で同時に飛ぶことはよくあることなのか?

A.潜水艦の探知は通常、2機から3機のヘリコプターが連携して行うということです。「ソナー」と呼ばれる装置をケーブルでつり下げて海中に投下し、わずかな音を探知して潜水艦を追尾するということです。

潜水艦の位置よっては追尾を行うヘリコプターどうしが近づくこともあるとしています。

実際に3年前の2021年には、夜間に潜水艦などに対応する訓練を行っていたヘリコプター同士が接触する事故が起きています。

Q.今回のような事故が過去にもあったということで、対策はどのようにとられてきたのか?

A.海上自衛隊は複数の機体で訓練を行う際には見張りを万全にし、安全な高度や距離を保つようにしているということです。

酒井海上幕僚長は今回の事故調査を行う上で、見張りや互いの機体の距離などが適切だったかどうかがポイントの1つになるとしています。

海上自衛隊は、墜落した2機とともに訓練を行っていた別のヘリコプターの搭乗員から話を聞くなどして、原因の究明を進めることにしています。