愛媛・高知 震度6弱 地震の影響 被害受けた地域では【19日】

17日に震度6弱の揺れを観測した愛媛県と高知県では、余震が相次ぎ、影響が続いています。

影響や19日の動きをまとめました。

《愛媛県》

宇和島市のホール 天井の一部が崩落で使えず

震度5強の揺れを観測した愛媛県宇和島市では、音楽コンサートや演劇などの会場として使われるホールで天井の一部が崩れ落ち利用できなくなっています。

宇和島市中央町の市立の南予文化会館は、およそ1400人が収容可能なホールを備え、音楽コンサートや演劇などの会場として使われ、地元の人たちから「なんぶん」の愛称で親しまれています。

18日朝、地震の被害状況を確認していた市の職員が、文化会館のホールで石こうでできた天井が幅30メートルほどにわたって崩れ落ちて、観客席に散乱しているのを見つけました。

また、ホールの舞台上の天井も一部が崩れ落ち、壁には亀裂が入ったところもありました。

このホールでは今年度中は、ほぼ毎週末、催しの予定が入っていましたが、当面、利用を休止するということです。

一方、文化会館の会議室などホール以外の施設には被害がなく、通常どおり利用できるということです。

南予文化会館の西田一洋館長は「天井の崩落がホールの使用中ではなかったので、けがをする人などがいなくてよかった。市民に親しまれた場所なので使えなくなって残念だ」と話していました。

水道水濁った状態 小学生は弁当で対応

宇和島市の小学校では、地震の影響で18日から水道の水が濁った状態が続いていて、給食を取りやめて弁当を持参する対応を取っています。

宇和島市によりますと、津島町と三間町、吉田町の一部の地域から、「水道の水が濁っている」という相談が複数、寄せられているということです。

このうち、津島町の北灘小学校では、児童や教職員およそ40人分の給食を作っていますが、地震の影響で水道の水が濁り、安全な給食を提供できないとして、18日から給食を取りやめ、19日は児童や教職員に弁当を持ってきてもらいました。

牧野友美校長は、「子どもたちは不安な毎日を過ごしています。水道水が早くきれいになって、大好きな給食をみんなで食べられるようになればと思います」と話していました。

学校では、給食の調理場や手洗い場の水を出しっぱなしにして、濁りをとる作業を続けていて、今月22日から、給食を再開する予定だということです。

被害確認の宇和島城で土砂の撤去作業

宇和島市にある宇和島城では、天守に通じる道が崩れるなどの被害が確認され、19日から市の職員が土砂などの撤去作業を始めています。

震度5強の揺れを観測した宇和島市にある国の史跡、宇和島城は、天守の壁に亀裂が入ったり、天守に通じる道の一部が崩れたりする被害が確認されました。

19日から市の担当者ら3人がスコップを使いながら、崩れた道の石や土を回収しては、トラックの荷台に積み込んでいました。

天守の被害については、今後、国と連携しながら修繕を進めるということです。

宇和島市文化・スポーツ課の安藤裕之さんは「宇和島城の被害の状況はきのう把握できたので作業を始めました。いまできる作業をひとつずつ進めていきたいです」と話していました。

ホテルの予約 キャンセルも

宇和島市のホテルでは、地震の直後から予約のキャンセルが相次いでいて、大型連休を前に観光客の減少が懸念されています。

宇和島市中心部にある「JRホテルクレメント宇和島」では、今回の地震で客室のテレビが倒れて買い替えるなどしましたが、建物に目立った被害はありませんでした。

ホテルでは地震のあとも通常どおり営業を続けていますが、再び地震が起こることへの不安を理由に予約のキャンセルが相次いでいるということです。

キャンセルは、18日朝から19日正午までに団体も含めておよそ70人に上っているということで、ホテルは大型連休を前に観光客の減少を懸念しています。

ホテルの木下侑良副室長は「大型連休を前に一度に大勢のキャンセルがあるのは、ほとんどないので心配です。今後の地震を心配して足を運ぶのをためらう方もいると思いますが、迎える準備はしているので、ぜひ、宇和島に来ていただきたいです」と話していました。

また、ホテルに宿泊する60代の女性は「同窓会に出席するため、静岡県から帰省しました。出席するか悩みましたが、JRの運転も再開しているし、友達も『大丈夫だよ』と話していたので参加することにしました」と話していました。

震度6弱の愛南町では地盤沈下も

震度6弱の揺れを観測した愛南町では、地盤沈下が起きるなどの被害が確認され、19日、町の職員が現地調査を行いました。

愛南町の漁港では、17日の地震で、地盤沈下や地割れなどの被害が確認されました。

被害が確認された漁港は、柏崎、御荘、猿鳴、西浦、福浦、船越、深浦のあわせて7か所です。

このうち柏崎漁港では19日朝から町の職員たちが詳しい被害を調査するために地盤沈下の程度を測量したり、港の写真を撮ったりしていました。

最大8センチほどの地盤沈下が確認されたということで、今後、修繕工事の必要性を検討するとしています。

愛南町の漁港では、この時期旬を迎える「初ガツオ」などの水揚げが盛んに行われていて、これまでのところ水揚げや競りに影響はないということです。

愛南町水産課の宮脇司課長補佐は、「ここまで広い範囲で漁港の地盤沈下が確認されたのは私の経験としては初めてで今回の地震の大きさを改めて実感しました。港を利用する人は注意していただきたいです」と話していました。

大洲市の国道で落石の除去作業

震度5弱の揺れを観測した大洲市では、国道197号線の山側から落ちてきた大きな石や木が道路に散乱し、通行止めが続いています。

19日午前9時ごろから県の土木事務所の職員や業者らによる撤去作業が始まりました。

重機で石や土砂を撤去したところ、道路上に落石による幅1.6メートル深さ30センチほどの大きな穴が確認されたということです。

今後、道路の補修作業や仮設の防護柵を設置したうえで、今月22日の夕方には通行止めの解除を目指すとしています。

大洲土木事務所道路課の相原俊史課長は「落ちてきた岩が非常に大きく予想以上に深い穴だったため、大きな衝撃だったと思う。安全を図りながらできる限り早期の復旧を目指して作業を進めていきたい」と話していました。

重要文化財の住宅 壁はがれ落ちる被害

震度4の揺れを観測した松山市では、国の重要文化財に指定されている住宅の壁がはがれ落ちる被害が出ました。

被害が出たのは、江戸時代末期に3000平方メートル余りある敷地に建てられた豪農の住宅で、国の重要文化財に指定されている「渡部家住宅」です。

松山市によりますと、17日の地震で、家財道具を保管するために使われた倉の外壁14平方メートルと「米倉」の内壁2.5平方メートルがはがれ落ちたということです。

壁はいずれもしっくいでできていて、住宅を保存・管理する団体では、19日から専門の技術者を呼んで被害状況を確認し、修復にかかる費用などについて相談していました。

今後、文化庁などの指示を踏まえて修復作業を進めるということです。

「重要文化財渡部家住宅保護財団」の渡部浩三理事長は、「これまでも地震や台風のたびに被害に遭ってきました。修復にかかる費用が見通せず、今後が心配です」と話していました。

《高知県》

宿毛市では1日遅れの「全国学力テスト」

地震の影響で18日、臨時休校となった高知県宿毛市の小中学校が再開され、生徒たちは1日遅れで「全国学力テスト」に臨みました。

高知県宿毛市は17日の地震で震度6弱の揺れを観測し、18日は市内に12ある小中学校が臨時休校となりましたが、19日から再開されました。

このうち、片島中学校では生徒たちが自転車などで次々に登校し、中学3年生などを対象にした「全国学力テスト」が1日遅れで行われました。

教室では教員が生徒たちに対し、「地震の影響できのうは家庭学習となりました。しばらく心配な状況が続くと思いますが、不安なことがあれば相談してください」と呼びかけました。

登校した生徒は「自宅は大きな被害はなく安心しました。きょうは友達に会えてよかったです」と話していました。

また、別の生徒は「これだけ大きな地震は初めてで怖かったです。みんなが無事でほっとしましたし、休校になったきのうの分をこれから取り戻したいです」と話していました。

このあと、問題用紙が配られ、テスト開始の合図とともに3年生45人が最初の国語のテストに取りかかっていました。

片島中学校の西本貴俊校長は「地震で生徒が動揺しテストに影響が出るかもしれないと心配していましたが、元気そうに登校していたのでよかったです」と話していました。

り災証明書の受け付けも

宿毛市では、り災証明書と被災証明書の申請の受け付けが始まっていて、被害を受けた人たちが申請に訪れています。

宿毛市では、17日の地震で屋根の瓦が落ちたり、窓ガラスが割れたりするなど多くの住宅で被害が出ています。

宿毛市は、被害の程度を証明し、さまざまな支援を受けるために必要な「り災証明書」と保険金などの請求に必要な「被災証明書」の申請を18日から受け付けています。

申請には、被害が確認できる写真が必要で、市役所に設けられた窓口を訪れた人たちは、スマートフォンで撮影した写真を見せながら状況を説明していました。

市によりますと、19日の午後4時までにり災証明書は5件、被災証明書は92件の申請があったということで、証明書が発行された人にはブルーシートを無料で配布しています。

家の壁やトイレの床にひびが入ったという60代の女性は「家にひびが入ったところがあったので保険の申請のために被災証明書をもらいに来ました」と話していました。

また、70代の男性は「市役所で被災証明書の申請ができると聞いて来ました。家の屋根の瓦が壊れたので、このあと業者に頼んで修復してもらいます」と話していました。

宿毛市は、20日と21日も午前8時半から午後5時15分まで申請を受け付けることにしています。

被災証明書を申請した金子淳子さんは、母親の家の屋根の瓦が横8メートルにわたってずれました。

金子さんは家に戻ると知り合いに応急処置を依頼し、週末の雨に備えて市役所で受け取ったブルーシートで屋根を覆ってもらいました。

金子さんは「週末からすごく雨が降るみたいなので、雨漏りが心配で急いでブルーシートを受け取りました。長年住んでいた家がこんな状況になってしまってとてもショックです」と話していました。

観光地でも地震の被害が

観光地として人気の大月町の柏島でも地震の被害が確認され、地元の人からは観光への影響などを懸念する声が聞かれました。

大月町の柏島は、透明度が高い海が人気を集め、さまざまな生き物を見ることができるダイビングスポットとしても知られています。

柏島漁港では、17日の地震でダイバーなどが渡る桟橋と地面の間に亀裂が入り、10センチほどの段差が生じる被害が確認され、地元の人からは夏の観光シーズンに向けて影響を懸念する声が聞かれました。

すくも湾漁業協同組合柏島支所の沖和希さんは、「ダイバーがガスボンベを積んで車で桟橋を渡ることもあるのでこのままにしておくと危険です。観光シーズンまでにはコンクリートで埋めるなどして修復したいと思います」と話していました。

柏島では、ほかにも被害が確認されていて、島の高台にある墓地では多くの墓石が倒れています。

この墓地に先祖の墓がある中シマ栢子さんは、墓石や灯ろうが倒れているのを確認しました。

1人で元に戻すのは難しく、倒れたままの墓石に水をかけて手を合わせていました。

中シマさんは、「こんなことになってしまって先祖に申し訳ない気持ちです。早く修復したいと思いますが、自分たちだけではなかなか大変です」と話していました。
(中シマさんの「シマ」は「山へん」に「島」)