「核のごみ」処分地 調査受け入れの請願審査 佐賀 玄海町議会

いわゆる「核のごみ」の処分地の選定に向けた「文献調査」の受け入れを求める請願書が提出された佐賀県玄海町の町議会で、請願を審査する特別委員会が開かれ、国などの担当者が出席し、調査に理解を求めました。

原子力発電に伴って出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」は、長期間強い放射線を出し続けることから、地下300メートルより深くに埋めて最終処分を行うことが法律で決まっていて、処分地の選定に向けた調査は、3段階で行われます。

玄海町では4月に町内の旅館組合と飲食業組合、それに防災対策協議会の3団体から、第1段階の「文献調査」への応募を町に働きかけるよう求める請願書が町議会に提出されました。

これを受けて、町議会では17日に請願を審査するための特別委員会が開かれ、資源エネルギー庁や、処分地の選定を担う国の認可法人NUMO=原子力発電環境整備機構の担当者4人が参考人として出席しました。

この中で、NUMOの担当者は「文献調査」が全国で北海道の2つの自治体でしか行われていないことを踏まえ、「できるだけ多くの地点で実施したい」と述べて理解を求めました。

一方、2017年に政府が作成した「科学的特性マップ」では、玄海町の多くが、鉱物資源が存在し、将来掘削される可能性あるとして「好ましくない特性があると推定される地域」に分類されています。

これについて、NUMOの担当者は「色分けした範囲全域で鉱物資源の存在が確認されているわけではなく、最終処分地としての適否を判断するためにも、文献調査が必要だ」と述べました。

議会では、4月25日に再び特別委員会を開き、4月中にも本会議で議決する見通しだということです。

NUMOによりますと、原発が立地する自治体で処分地の調査に向けた請願が出されるのは、NUMOが把握する範囲で初めてだということです。

玄海町長 “今後の議論見守っていく”

特別委員会終了後、玄海町の脇山伸太郎町長が報道陣の取材に応じ、「請願については、今後の議論を見守っていくとしか言えない。今後、その時が来れば自分の判断を示さざるをえないというのは、自分の中に覚悟を決めているが、まだ、どう判断するかは決めていない」と話していました。

「文献調査」への応募求める請願書とは

玄海町では、
▽玄海町旅館組合
▽玄海町飲食業組合
▽玄海町防災対策協議会
の3団体が、それぞれ町議会に対して「核のごみ」の処分地の選定に向けた第1段階にあたる「文献調査」への応募を求める請願書を提出しています。

このうち飲食業組合は、玄海原発1号機と2号機が廃炉となったことで、客の多くを占める原発関連の作業員が減少したことや、その後の新型コロナによる影響で売り上げが大幅に落ち込んでいるとして、厳しい現状を説明しています。

そのうえで、「最終処分場に関しては、新たな産業振興策における『選択肢の1つ』と考えている」として、文献調査への応募を求めています。

また、旅館組合も、旅館の利用者の多くは原発関連の作業員が占めており、廃炉の影響を受けているとしています。

そのうえで、処分地の選定が進まない状況を踏まえ、「高レベル放射性廃棄物を発生させる自治体の責務として、文献調査に応募し、課題解決に苦労している国に協力すべきである」としています。

一方、防災対策協議会は、地震がどこで発生するかわからない中にあって、玄海原発が立地している場所が安全かどうかを確かめるため、文献調査で地質状況を調べるべきだとしています。

資源エネルギー庁とNUMOの担当者は

特別委員会に参考人として出席した資源エネルギー庁の下堀友数 放射性廃棄物対策課長は、委員会終了後、報道陣に「熱心に議論いただき、『理解を広める努力をすべき』との指摘も受けた。原発の立地自治体であるにもかかわらず、関心を持ってもらうことは、国としてはありがたい。議会での審議を見守り、追加説明の要望があれば、しっかり対応したい」と述べました。

また、NUMO=原子力発電環境整備機構の田川和幸専務理事は「議員のエネルギーへの問題意識の高さを感じた。日本社会全体の課題であり、理解を広めるため、積極的に対話活動を国と連携しながら進めたい」と話しました。

原発反対の市民グループは

17日の特別委員会には、原発に反対する市民グループも傍聴におとずれました。

玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会の石丸初美代表は「放射能の影響についての議論が欠けている。『核のごみ』の問題は、自分たちも含め、皆で考えるべきだとは思っているが、そもそも、何万年も管理が必要な危険な廃棄物の発生を止めないままに、処分地の議論を進めることは筋が通っていない」と話していました。

北海道知事 “道内で次の段階の調査に反対”

いわゆる「核のごみ」の処分地の選定をめぐって、佐賀県の玄海町議会で第1段階の文献調査への応募を町に働きかける請願の審査が始まったことについて、全国で初めて文献調査が2つの町村で行われてきた北海道の鈴木知事は「全国的な状況によって、現時点での考えが覆る話ではない」と述べ、次の段階の調査に進むことには反対する意向を改めて示しました。

鈴木知事は17日、要望活動のために訪れた東京で、報道陣の取材に応じました。

この中で、佐賀県玄海町で4月に、町内の3つの団体から「核のごみ」の処分地選定に向けた第1段階の「文献調査」への応募を求める請願書が町議会に提出されたことについて、受け止めを聞かれたのに対し、「個別自治体についてコメントすることは控える」としたうえで、「私が懸念しているのは、『北海道だけの問題』となってしまうのではないかということで、国が前面に立って全国に最終処分について伝えていくことを求めたい」と話しました。

そのうえで、「道としては、最終処分場を受け入れることはならんという趣旨で条例が制定されている。文献調査が概要調査に移行する場合は、現時点で反対の意見を申し上げるという思いに変わりはない。全国的な状況うんぬんで、現時点での考えが覆るとか、そういった話ではない」と述べ、仮に玄海町が調査を受け入れた場合でも、道内での調査を次の段階に進めることには反対する意向を示しました。

林官房長官 “全国で情報提供に取り組む”

林官房長官は午前の記者会見で「『文献調査』に関心を持ってもらえることはありがたいことだ。最終処分事業にはさまざまな意見があり、まずは地域で丁寧に議論を深めてもらうことが重要だ」と述べました。

そのうえで「高レベル放射性廃棄物の最終処分は決して特定の地域の問題ではなく、日本全体で取り組むべき課題だ。地域の声を踏まえながら、国として『文献調査』の実施地域の拡大を目指し、引き続き全国で必要な情報提供などに取り組みたい」と述べました。