売れ残り品が人気? 不動産不況 厳しい若者の雇用…中国経済は

中国のことし1月から3月までのGDP=国内総生産の伸び率は、去年の同じ時期と比べて実質でプラス5.3%となりました。伸び率は前の3か月からわずかに拡大しましたが、景気回復の勢いを今後持続できるかが焦点となります。

中国経済は今、どうなっているのでしょうか?

節約、節約…売れ残り品、賞味期限が近くても

中国では、消費者の間で節約志向が高まる中、安く購入できる「売れ残り品」に人気が集まっています。

上海に本拠を置くディスカウントストアチェーンでは、賞味期限が近づいているスナック菓子や日用品を格安で販売していて、店舗網は、2020年の創業から4年で250店以上に拡大しました。

安徽省合肥にある店舗にもスナック菓子やジュースなどが並べられ、天井には「特価の天国」とか「驚きの安さ」といった手書きのポップがつるされています。

中には、賞味期限まで1か月を切っている商品もあり、その多くが定価の半額から5分の1の価格で販売されていました。

また、都市部にある食品を販売する店の間では、売れ残った商品を集めて定価よりも安く福袋の形で販売する取り組みも広がっています。

こうした店の場所を検索できる専用のスマートフォンのアプリもあり、利用者はこのアプリを通じて注文ができます。

安徽省合肥のショッピングモールにあるパン屋では、閉店時間が近づく午後8時すぎになると、売れ残った商品が袋に詰められ、事前に購入を予約した人たちが買い求めていました。

購入した女性は「その日の夜に食べるし、とても安いから節約にもつながる。お店にとっても私たちにとっても節約になる」と話していました。

こうした売れ残った食品の販売は、節約とともにフードロスの削減にもつながるとして、若者の間で人気が高まっています。

不動産不況 内需停滞 先行きに不透明感広がる中国経済

中国の国家統計局が4月16日に発表した、ことし1月から3月までのGDPの伸び率は、物価の変動を除いた実質で、去年の同じ時期と比べてプラス5.3%となりました。伸び率は、前の3か月のプラス5.2%から、わずかに拡大しました。

また、前の3か月間と比べたGDPの伸び率もプラス1.6%と、回復の勢いが加速しました。ことし1月から2月にかけて輸出が増え、企業の生産が上向いたことや、旧正月の春節の大型連休で旅行需要が高まり、飲食や宿泊などの業種で好調が続いたことなどが、主な要因です。

ただ、先行きについては、不動産不況や内需の停滞などを背景に不透明感が広がっていて、中国政府は、ことしから1兆元、日本円で20兆円余りの特別国債を発行し、景気を下支えするほか、内需拡大に向けて、家電製品や自動車などの買い替えを促す対策を打ち出しています。

中国政府はことしの経済成長率の目標を、去年と同じ水準の5%前後としていますが、こうした対策を通じて景気回復の勢いを今後持続させることができるかが焦点となります。

失業率15.3% 若者の雇用情勢も厳しく

中国では景気の先行きへの不透明感から若者の雇用情勢も厳しくなっています。

不動産市場の低迷などで企業が採用活動に慎重になる一方、大学と大学院の卒業生の数が合わせて1179万人とことしは過去最多となる見込みです。

また、ことし2月の学生を除いた16歳から24歳までの失業率は、15.3%と高止まりしています。

4月13日、北京で開かれた就職面接会には、日系企業などがブースを設け、学生や求職中の若者280人が参加しました。

ブースでは、学生などが企業の担当者に事業の内容を尋ねたり、志望の動機をアピールしたりしていました。

参加した女性は「就職はかなり難しいし、優秀な人がたくさんいるように感じる。面接をすればするほど、自信を失っていくという感じです」と話していました。

さらに、希望する職種に就けない中、中国では、公務員試験の受験者が過去最多となるなど若者の間で安定を求める傾向が強まっているといいます。

面接会を開いた人材派遣会社、パーソルケリーの川端一史コンサルタントは「就職が難しかった場合は進学や留学を検討する人もいるし、公務員を受ける人もいる。若者は安定を求めていて、経営が安定している企業は人気がある」と話していました。

不動産低迷 家具業界不振続く

不動産不況で住宅に関連する家具の販売不振も続いていて、業界は打撃を受けています。

中国南部・広東省仏山には3000以上の家具店が集まる地区があり、家具の街として知られています。

しかし、街なかにある家具の販売センターでは、客の姿はほとんど見られず閑散とした様子でした。

寝具などを手がける業者の販売員の女性は、「ことしの売り上げは本当に悪く、以前の5分の1も売れない状況です。この2、3日の間、商品は1つも売れていません」と話していました。

別の業者の男性は「ことしは売れ行きが特に悪くなっています。客がいなくても、家賃を払い続けなければならず家族を養っていかなければなりません」と厳しい経営状況を語りました。

国内需要の低迷で、販売戦略の見直しを迫られる業者も出てきています。

先月、広東省広州で開かれた家具の国際見本市に出展した家具メーカーの1つは、売り上げを維持するため輸出に力を入れる方針です。

担当者の男性は「国内と海外での販売の割合は現在は8対2ですが、今後は6対4程度になると思います。国内で商品が売れないと困るので、海外での販売を増やすことにしています」と話していました。

専門家 “当初想定より高い伸びも 不動産不況が懸念材料”

中国のことし1月から3月までのGDP=国内総生産について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの丸山健太 研究員は「1月と2月の生産や投資が堅調だったことで、製造業が景気を押し上げ当初想定されたよりも高い伸びだった」と述べました。

その一方で、消費に関しては「雇用情勢の悪さを背景にしたマインド面の悪化が消費を押し下げている。人々がモノを買おうという意欲がそがれている」と述べました。

そのうえで、内需拡大に向け中国政府が打ち出している自動車や家電製品の買い替え促進策について、丸山氏は「自動車や家電業界に恩恵はあるが、中国では、個人消費の5割がサービス、3割が食品で、こうした分野も合わせて刺激しないと消費は増加していかない」と述べ、現在の政策では景気の押し上げ効果は限定的だと指摘しました。

そして、景気の先行きについては「不動産不況がいつまで続くかがカギになるが、不動産開発投資や住宅の販売面積などが下げ止まっていない。こうした状況が続くかぎり、中国経済が勢いよく回復していく姿は描きにくい」と述べ、引き続き不動産不況が景気回復に向けた懸念材料になるという認識を示しました。

また、日本経済への影響については「中国の内需が弱くなれば日本から中国に向けた輸出は減少が懸念される。中国人のインバウンドもコロナ前の6割程度までしか戻っていない」と述べ、中国の景気が減速すれば日本の輸出や観光産業に影響を及ぼすという見方を示しました。

中国国家統計局副局長 経済成長率の目標達成に自信示す

中国国家統計局の盛来運 副局長は、GDPの発表後の記者会見で「第1四半期の経済指標のデータは良好だ」と述べ、中国政府が5%前後とすることしの経済成長率の目標達成に自信を示しました。

その一方で、「対外情勢は依然として複雑で厳しく、国内は構造調整とモデルチェンジの重要な段階にある。企業の信頼と景気回復の原動力をさらに増強する必要がある」と述べ、経済政策の実行によって景気を下支えすべきだという認識を示しました。

また、「消費の回復は生産に及ばず、中小零細企業の回復は大企業に及ばない。経済回復には明らかに不均衡が存在している」と述べ、国内の動向を注意深く見ていく必要があるという考えを示しました。

国内外のブランド集まる見本市 政府の対策に期待の声

景気を下支えするため、中国政府は、ことしを「消費促進年」と位置づけ、自動車や家電製品などの買い替えを促す対策をことし2月に打ち出しました。

政府は、製造から15年を超える車が700万台以上に上り、家電製品は毎年2億7000万台が使用期限を超えるとしていて、日本円で数兆円の規模の市場を生み出すとしています。

こうした中、中国南部の海南島で開かれている国内外の4000を超えるブランドが集まる大規模な見本市では、政府の対策に期待する声が聞かれました。

このうち、湖北省にある自動車メーカーの担当者は「国の買い替え促進策の具体的な内容や詳細を待っているところだが、この政策は今後の車の消費にとって、爆発的な促進になると信じている」と話していました。

中国政府は自動車ローンの頭金の比率の引き下げや、古い自動車や家電製品の下取りの円滑化、それに、環境に優しい製品を購入する際の補助金などを通じて買い替えを進めたいとしていて、消費の押し上げを通じた経済の活性化にどこまで効果があるのか注目されます。

3月分の経済指標 いずれも弱く景気回復の持続力問われることに

中国の国家統計局がGDP=国内総生産と合わせて発表した先月分の主要な経済指標では、企業の生産や消費の伸びが鈍化したほか、不動産市場の低迷が続いていることも改めて示されました。

このうち、先月の工業生産は、去年の同じ月と比べて4.5%のプラスと、伸び率がことし1月と2月の2か月分の7.0%から縮小しました。

消費の動向を示す先月の「小売業の売上高」は去年の同じ月と比べて3.1%のプラスと、前の2か月間の5.5%から伸びが鈍化しました。

また、ことし1月から先月までの不動産開発投資は、去年の同じ時期と比べてマイナス9.5%と、下落幅が拡大したほか、新築の販売面積も19.4%減少しました。

さらに先月の新築の住宅価格指数は、主要な70都市のうち、8割以上に当たる57都市で前の月から下落し、都市の規模を問わず、不動産価格の低迷が続いています。

ことし1月から先月までのGDPは景気回復の勢いが加速した形となりましたが、先月分の経済指標については、いずれも弱めとなっていて、景気回復の持続力が問われることになりそうです。