【16日詳細】イスラエルの対応が焦点 緊張した状況続く

イランによる大規模攻撃を受けてイスラエルの対応が焦点となる中、軍のトップが「反応することになるだろう」と述べ、対抗措置をとる考えを示しました。
一方、イランのライシ大統領は「イランの国益に反するいかなる措置に対しても厳しく対処する」と述べ、緊張した状況が続いています。

※日本時間4月16日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエル軍トップ「領内への攻撃には反応することになる」

イスラエル軍トップのハレビ参謀総長は15日、イランの弾道ミサイルが着弾した南部のネバティム空軍基地を訪れ「われわれは次のステップを検討している。イスラエル領内への数多くのミサイルや無人機による攻撃には反応することになるだろう」と述べ、イランの攻撃に対して何らかの対抗措置をとる考えを示しました。

一方、イランのライシ大統領は15日、カタールのタミム首長と電話で会談し、イスラエルの対抗措置を念頭に「イランの国益に反するいかなる措置に対しても厳しく、大規模に反応することを明確にしておく」と述べ、イスラエルをけん制し、両国の間で緊張した状況が続いています。

米メディア “イスラエル シリア内の施設攻撃の可能性”

アメリカのNBCニュースはアメリカ政府の当局者の話として、イスラエル国内の被害が限定的だったことから、イスラエルは、イランの国内ではなくシリアにあるイランが支援する勢力が武器などを保管する施設を攻撃する可能性があるという見方を伝えています。

IAEA事務局長 “イラン核施設への対抗措置を懸念”

こうした中、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は15日、記者団からイスラエルの対抗措置の標的がイランの核施設になる可能性を問われたのに対し「常にその可能性を懸念している。最大限の自制を呼びかけている」と述べました。

“対抗措置 目的は全面戦争ではない” イスラエルメディア

イランがイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛けたことを受け、イスラエルでは15日、ネタニヤフ首相が2日連続で戦時内閣の閣議を開きました。

イスラエルのメディアは「さまざまなレベルの対抗措置が戦時内閣の議論のテーブルにあがっているが、目的はイランを痛い目にあわせることで、全面戦争ではない」と報じています。

またアメリカの有力紙、ワシントン・ポストは15日、当局者の話として「ネタニヤフ首相は軍に対し標的の選択肢を提出するように求めた」としたうえで、「イスラエルはイランにメッセージを伝えつつ死者を出さない選択肢を検討している」と報じています。

具体的な選択肢については、サイバー攻撃やイランの石油施設への攻撃などが取り沙汰されていて、イスラエルがいつどのような対抗措置をとるかが焦点となっています。

イラン外相 イスラエルを改めてけん制

イラン外務省は15日、アブドラヒアン外相がイギリスのキャメロン外相と電話で会談し、イランが、大使館を攻撃されたことの報復として、イスラエルに大規模な攻撃を行ったことなどについて、意見を交わしたと発表しました。

会談の中で、アブドラヒアン外相は「イランはこの地域で緊張が高まることを望んでいない。ただ、イスラエルが危険を冒すのならば、イランは直ちにより強く、より大規模な対応をとるだろう」と述べ、イランへの対抗措置を検討するイスラエルを改めてけん制しました。

米大統領補佐官 “対抗措置の決定過程に関与しない”

イランがイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛けたことを受け、イスラエルでは2日連続で戦時内閣の閣議が開かれ、イランへの対抗措置の内容や時期について意見が交わされているとみられます。

これについてアメリカ ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は15日の記者会見で、「イランが行ったことに対して対抗措置をとるかどうかや、どのように行うかは、イスラエルが決めることだ。われわれは決定過程に関与しない」と述べました。

その上で「われわれはイランとの戦争やより広範な地域での紛争は望んでいない」と述べて、中東地域での紛争の拡大は望んでいないと強調しました。

またカービー補佐官は、今回のイランによる大規模攻撃を受けて、G7=主要7か国の間でイランへの新たな制裁を協議しているほか、メンバー国がイランの革命防衛隊を「テロ組織」に指定することを検討していると明らかにしました。

一方、カービー補佐官は、イランによる攻撃の前に、アメリカとイランの間でメッセージのやりとりはあったものの、攻撃が行われる時期や標的などの詳細についての通告はなかったと説明しました。

米メディア “イランの事前通告 UAEとサウジがアメリカに伝達”

アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルの電子版は15日、イランがイスラエルへの大規模攻撃の2日前に、サウジアラビアなどの周辺国に対して作戦の概要や時期について事前に通告していたと報じました。

これらの情報はUAE=アラブ首長国連邦とサウジアラビアによってひそかにアメリカにも伝達され、アメリカとイスラエルにとって重要な事前警告となったとしています。

さらに、アラブ諸国は領空を戦闘機に開放したりレーダーの追跡情報を共有したりしたということで、こうした協力もあって、イランからのミサイルと無人機をほとんど迎撃することが可能になったと分析しています。

また情報共有などの支援をめぐっては、イランが報復を宣言したあと、アメリカの政府高官がアラブ諸国に要請しはじめたと、サウジアラビアやエジプトの当局者の話として伝えています。

各国は紛争への直接的関与につながるなどとして、当初、慎重な姿勢を示しましたが、その後、アメリカとの協議の結果、UAE=アラブ首長国連邦とサウジアラビアが情報共有に、そして地理的にイスラエルとイランの間に位置するヨルダンが、自国の軍による迎撃支援やアメリカや他国の戦闘機が領空を使用することに同意したということです。

中国 王毅外相 イランを擁護 “報復攻撃は自衛権の行使”

中国外務省は、王毅外相とイランのアブドラヒアン外相が15日、電話で会談したと発表しました。

この中で王外相は、シリアにあるイラン大使館が攻撃されたことについて「国際法の重大な違反であり、受け入れられない」と非難し、イランによるイスラエルへの報復攻撃は「限度のある行動をとっており、自衛権の行使だ」として、イランを擁護する立場を明らかにしました。

一方で、王外相は「イラン側が主権と尊厳を守ると同時に、さらなる事態の不安定化を避けることができると信じている」と述べ、事態の収束に向けた対応をイラン側に求めるとともに、両国関係を一段と強化する考えも示しました。

中国外務省によりますと、会談でアブドラヒアン外相は「中東地域の情勢は緊迫しており、イランとしては自制を保ち、状況をさらにエスカレートさせる意図はない」と述べたということです。

中国外務省は、王外相が15日にサウジアラビアのファイサル外相とも電話で会談し、中東地域の緊張がこれ以上高まることのないよう協力を確認したことも、発表しました。

中国としては、イランへの対抗措置を検討するイスラエルをけん制するねらいがあるとみられます。

上川外相 イラン外相に自制強く求める

イランによるイスラエルへの大規模な攻撃を受けて、上川外務大臣は16日、イランのアブドラヒアン外相と電話で会談し、事態をエスカレートさせたことを強く非難し、自制するよう強く求めました。

会談は日本側から呼びかけたもので、午後2時半から、およそ50分間行われました。

この中で、上川大臣は「今回の攻撃は中東情勢をいっそう悪化させるもので深く懸念しており、このようなエスカレーションを強く非難する」と伝えたうえで、さらなる緊張の高まりを防ぐため自制するよう強く求めました。

また、中東地域の海洋での航行の安全の確保や、イランに滞在するおよそ400人の日本人の安全確保に協力を求めました。

両外相は意思疎通を継続していくことで一致しました。

上川大臣は、会談の後の記者会見で「これまでのところ、日本人の生命・身体に被害が及んでいるという情報には接していない。引き続きハイレベルでの働きかけを含め、必要なあらゆる外交努力を行っていく」と述べました。

イスラエル外相とも電話会談 自制求める

これに続いて、夕方には、イスラエルのカッツ外相とも電話で会談しました。

会談は日本側から呼びかけたもので、上川大臣は、イランの攻撃に対する日本の立場を伝えました。

そのうえで「これ以上の緊張の高まりは制御不能な状況となりかねず、国際社会全体の利益にならない」として、イスラエルに対しても自制するよう強く求めました。

また、深刻化するガザ地区の情勢をめぐり、持続可能な停戦につながる行動をとるよう改めて求めました。

一方、上川大臣は今週イタリアで開かれるG7=主要7か国の外相会合に出席するため、16日夜、出発することを発表しました。

上川大臣は「中東では事態の緊迫度が高まっており、グローバルな視点から率直で突っ込んだ議論を行い、G7の結束をさらに強めたい」と述べました。