スーダン武力衝突1年 戦闘続く “820万人が住む場所追われる”

アフリカのスーダンで軍と準軍事組織による武力衝突が始まってから15日で1年となります。首都などで断続的に戦闘が続く中、1万人以上が死亡したと伝えられているほか、少なくとも820万人が住む場所を追われ、深刻な人道危機が続いています。

スーダンでは去年4月15日、軍と準軍事組織RSF(即応支援部隊)の武力衝突が始まり、大規模な戦闘に発展しました。

戦闘は首都ハルツームやその周辺などで続いていて、国連は世界の紛争地のデータを集めているNGOの数字として、先月上旬までに1万4790人が死亡したとしていて、犠牲者はさらに多いおそれがあると指摘しています。

また、OCHA(国連人道問題調整事務所)によりますと、少なくとも820万人が住む場所を追われ、このうち170万人以上が国境を越えてエジプトやチャドなどの周辺国で避難生活を余儀なくされています。

日本を含む各国の大使館や国連機関などは安全を確保できないとしてハルツームから退避していて、現地の実情の把握も難しくなっています。

WFP(世界食糧計画)は、スーダン国内では1800万人が深刻な食料不安を抱え、5歳未満の子どもおよそ380万人が栄養失調に陥っているとしています。

一方で、パレスチナのガザ地区やウクライナの情勢などに国際社会の目が向けられるなか、スーダンへの支援にことし必要な27億ドルのうち、集まったのはわずか6%にとどまっていて、国連は人道状況がさらに悪化しかねないとして各国に支援を訴えています。

スーダン武力衝突 1年の経緯

スーダンでは2019年に独裁的な長期政権が崩壊したあと、民主化への模索が続いたものの、2021年に軍がクーデターを起こして実権を握りました。

その後、軍の傘下にある準軍事組織のRSFが軍の再編などに反発し、去年4月15日、首都ハルツームや国際空港などで激しい衝突が発生しました。

軍事衝突が拡大する中、各国が自国民を退避させる動きが広がります。

日本も自衛隊機を派遣し、4月24日には日本大使館やJICA(国際協力機構)、それに支援団体などの関係者やその家族あわせて45人が東部の都市ポートスーダンから自衛隊機でジブチに退避しました。

国連のほかエジプトやサウジアラビアなど周辺国が停戦や和平交渉を呼びかけていますが道筋はたっておらず、1年たったいまも現地では戦闘が続いています。

このため教育や医療など社会基盤の崩壊が進み、人道危機が深まっていて、国連はおよそ4800万の人口の2人に1人が人道支援を必要としているとしています。

ただ、多くの支援関係者が退避を余儀なくされたほか、治安の悪化で支援を届けるのは容易ではなく、周辺国に逃れた避難民の支援も含め厳しい状況が続いています。

支援活動のNPO「現地に目を向けて」

武力衝突から1年となるのにあわせ、現地で支援活動をしてきた日本の団体などがオンラインの報告会を開き、人道危機が深まる現地への支援と関心の継続を訴えました。

今月9日に行われた報道機関向けの報告会にはスーダンへの支援活動を続けてきたNPOの「ロシナンテス」と「難民を助ける会」の職員などが参加しました。

スーダンでは、いまも軍と準軍事組織の戦闘が続き、人道危機が深まる一方、治安への懸念などで支援活動は困難に直面しています。

このうち医療や教育の支援を行ってきたロシナンテスは遠隔の支援を続けスーダン北部の2600人以上が身を寄せる3つの避難所で衛生環境の改善を目指してトイレなどの整備を進めることにしています。

ロシナンテスの川原尚行理事長は「単独での活動は難しいですが、国連機関などとともに現地に戻れないか調整を続けています。気持ちとしては年内にでも戻りたいと思っていますが、治安状況によるので情報収集を続け、判断したいです」と話していました。

また、「難民を助ける会」の職員でウガンダから支援を続ける相波優太さんは、スーダンにとどまる現地スタッフを通じて避難民に食料配付などの支援を行っていることを紹介しました。ただ、スタッフ自身も何度も避難を余儀なくされ、厳しい状況に置かれていると話していました。

相波さんは「情勢が安定したら、感染症対策事業なども再開したいと思っています。メディアにも関心をもってもらい、現地で何が起きているのか少しでも多くの人に目を向けてもらいたいと思います」と訴えていました。