【詳しく】イランのイスラエル攻撃(15日の動き)

イランによる大規模攻撃を受けてイスラエルでは戦時内閣の閣議が開かれ、ロイター通信は、対抗措置をとる方針は支持されたものの時期や規模については意見が分かれたと報じました。一方、ガザ地区の軍事作戦をめぐりイスラエル軍は予備役の部隊、2個旅団相当を招集すると発表し、戦闘休止の交渉が進展しない中、作戦の継続を強調しています。

※イランのイスラエル攻撃に関する日本時間4月15日の動きを随時更新してお伝えします。

イランは13日から14日にかけてイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルはアメリカなどの協力も得てそのほとんどを迎撃したとしています。

イランによる攻撃を受けて、イスラエルでは14日、ネタニヤフ首相が戦時内閣の閣議を開いて対応を協議しました。

閣議の内容は明らかにされていませんが、ロイター通信は、対抗措置をとる方針は支持されたものの、時期や規模については意見が分かれたと報じました。

また、イスラエルの複数のメディアは14日の時点で、即座に反撃すべきだという意見も戦時内閣の中であがったと伝えています。

このうちイスラエルの公共放送は、関係者の話としてネタニヤフ首相とアメリカのバイデン大統領との電話会談を受けて、即座の反撃については中止が決まったなどと伝えています。

一方、ガザ地区の軍事作戦をめぐりイスラエル軍は14日、予備役の部隊、2個旅団相当を招集すると発表しました。

イスラエル軍は今月上旬、ガザ地区南部のハンユニスから部隊を撤収させたばかりですが、イスラム組織ハマスとの戦闘の休止や人質の解放などをめぐる交渉が進展しない中、軍事作戦の継続を強調しています。

イラン大統領「敵のイスラエルに教訓を与えた」成果強調

イランは13日から14日にかけてイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルはアメリカなどの協力も得てそのほとんどを迎撃したとしています。

イランはこの攻撃について今月1日にシリアにあるイラン大使館がイスラエルの攻撃を受け、革命防衛隊の司令官らが殺害されたことへの報復だとしていて、ライシ大統領は声明で「敵のイスラエルに教訓を与えた」として成果を強調しました。

一方で革命防衛隊のサラミ総司令官は「作戦は限定的でイスラエルがわれわれの大使館への攻撃で使った能力と同じレベルに抑えた」と強調し、これ以上の事態の悪化は意図していないという姿勢をにじませました。

イスラエル前国防相「代償を支払わせる」

イスラエルの戦時内閣に入っているガンツ前国防相は「適切な時期に、正しい方法で、イランに代償を支払わせる」と述べていますが、いつどのような反撃に踏み切るのかは明らかにしていません。

また、ガラント国防相も声明を発表し、「イランの脅威に対抗するため、戦略的同盟を立ち上げるときだ」として、各国と協力してイラン包囲網を構築するべきだと主張しています。

イラン イスラエルの反撃を心配する声も

イスラエルに対し大規模攻撃を行った、イランの首都テヘラン中心部の広場では、今回の戦果を誇示するように多くのミサイルを描いた巨大な看板が掲げられました。

その中には去年、開発したと発表され、今回の作戦でも使われたと伝えられている国産の極超音速ミサイル「ファタハ」が描かれています。

市民に話を聞くと、今回の攻撃を支持する声があった一方、イスラエルの今後の反撃を心配する声もあがりました。

44歳の女性は「われわれの意志の力を世界に示すことができました。イスラエルやアメリカには何もさせず、打撃を与えることができました」と、今回の攻撃を支持していました。

一方、44歳の男性は「戦争はどんな形であれ非難されるべきもので、犠牲になるのは罪のない人々だけです」と述べ、賛同しない考えを示しました。

また、77歳の女性はイスラエルの反撃を懸念して「4人の子どものほか孫もいるので、心配せずにはいられません。私たちの国と暮らしの平和が保たれることを願います」と、不安げな表情で話していました。

<15日の動き>

米高官「イスラエルのいかなる対抗措置にも参加しない」

アメリカのバイデン政権の高官は14日、記者団に対し、イランによる報復攻撃を受けてイスラエルがどのような対応をとるかはイスラエル自身が決めることだと述べました。

その上で「われわれはイスラエルがとるいかなる対抗措置にも参加しない」と述べ、対抗措置にアメリカが加わることはないと強調しました。

また、バイデン大統領が13日に行ったイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談の中で「イスラエルの防衛への支援を伝えるとともに、事態がエスカレートすることのリスクについて慎重に、かつ戦略的に考慮しなければならないと明確に伝えた」としています。

国連安保理 双方に自制求めるも 互いを激しく非難

国連の安全保障理事会で日本時間の15日に緊急会合が開かれ、グテーレス事務総長は冒頭、「中東の複数の戦線で大規模な軍事衝突につながりかねないいかなる行動も避けることが極めて重要だ。中東にとっても世界にとってもこれ以上の戦争は許されない」と述べ、イランとイスラエルの双方に最大限の自制を求めました。

会合ではこのあと多くの国からも、中東情勢のこれ以上の緊張を防ぐため、イランとイスラエルの双方に自制を求める意見が相次ぎました。

しかし、イスラエルのエルダン国連大使はイランを激しく非難し「今回の攻撃は越えてはならない一線を越えた。イスラエルには報復する法的権利がある」と主張し、対抗措置をとる可能性を示唆しました。

これに対してイランのイラバニ国連大使は「安保理決議や国際法の義務を無視してより残虐な犯罪を犯しているのはイスラエルだ」と反論し、双方が互いを激しく非難しました。

イスラエル軍 無人機やミサイル迎撃の映像公開

イスラエル軍は、イラン側から発射されたミサイルや無人機を迎撃した戦闘機からとらえたとする映像を公開しました。映像には、無人機やミサイルだとする黒い物体に照準が合わされたあと、物体が次々に爆発する様子が写されています。

イスラエル軍は「数十機の空軍の戦闘機が戦略的パートナーの国々と協力して領空を守る任務にあたった」としています。

一方、イスラエル南部のアラドではミサイルや無人機の破片が落下したとみられていて、自治体が公開した写真からはミサイルの部品のような複数の物体が歩道などに落ちているのがわかります。

イスラエルの救急当局によりますと、アラド近郊では7歳の女の子が重傷を負い病院で治療を受けていて警察が詳細を調べているということです。

イラン外相 “攻撃前に一部の国に通告”

イランのライシ大統領は14日、声明を出し、「イラン国民の利益に反するいかなる試みも、より激しい対抗措置を招き、後悔することになるだろう」として、イスラエルをけん制しました。また軍全体のトップ、バゲリ参謀総長も、「作戦は成功裏に完了し、すべての目的は達成された」とアピールしました。

一方革命防衛隊のトップ、サラミ総司令官は「われわれは限定的な作戦を実施した。この作戦はもっと大規模に行うこともできたが、イスラエルがわれわれの大使館を攻撃するのに使った能力と同等のレベルまで抑えた」と述べ、攻撃は抑制的に行ったと主張しています。

さらにアブドラヒアン外相は会見で「作戦のおよそ72時間前にわれわれは周辺国などに対し、イランの対抗措置が正当な自衛の枠組みの中で確実に行われることを伝えていた」と述べ、大規模攻撃について事前に一部の国に通告していたことを明らかにしました。

G7首脳声明「前例のない攻撃 最も強い言葉で非難」

G7=主要7か国の首脳は14日、オンラインで首脳会合を開き、議長国のイタリアが首脳声明を発表しました。

それによりますと「イランによるイスラエルへの直接的、かつ前例のない攻撃を最も強い言葉で非難する」とした上で、「イスラエルと、その国民に対する全面的な連帯と支持を表明し、その安全保障に対するコミットメントを再確認する」と指摘しています。

その上で「イランの行動により地域は不安定化に向けてさらに踏み込み、制御不能な地域情勢のエスカレーションを引き起こす危険性がある」として、事態の悪化を避けるため情勢を安定させる努力を続けていくことを確認しました。

また「イランとその代理勢力に対し攻撃を停止するよう要求する。われわれはさらなる不安定化への行動に対して措置を講じる用意がある」として、イラン側をけん制しています。

トランプ前大統領「アメリカが弱さを見せたからだ」

秋のアメリカ大統領選挙で返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領は13日、東部ペンシルベニア州で演説し、イランがイスラエルに対する報復攻撃を行ったことについて「アメリカが大きな弱さを見せたからだ」と述べて、バイデン政権の姿勢がイランによる攻撃を招いたと批判しました。

そのうえでトランプ氏は「われわれが政権に就いていればこんなことは起きなかった」と主張し、「われわれは強さによって世界に平和を取り戻す。国内外でのアメリカの強さを復活させる」と訴えました。

米大統領補佐官「緊張をさらに高めること望んでいない」

アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は14日、ABCテレビのインタビューで「イスラエルへの前例のない攻撃はイスラエルだけでなくアメリカやパートナーの国々によって対処された。イスラエルは自国の防衛に成功し、アメリカはそれを支援するという約束を確かに果たした」と述べました。

またバイデン大統領は13日夜の電話会談でネタニヤフ首相に対し、改めてイスラエルの自衛を支援し続けると伝えたとした上で「バイデン大統領はイランとの戦争を望んでいないことをはっきりと表明してきておりアメリカはこの地域の緊張をさらに高めることも望んでいない」と強調しました。

またガザ地区での戦闘休止などをめぐる交渉については、情報交換が続いているとしてイスラム組織ハマスの対応次第で人質の解放や人道支援の拡大に向けた戦闘休止が可能になるという認識を示しました。

専門家「イスラエル 直ちに大規模攻撃は難しい」

イスラエルが今後イランに対してとりうる対抗措置について、専門家は、慎重な対応を求めているアメリカなどとの関係を重視する必要から直ちに大規模な攻撃に打って出るのは難しいという見方を示しました。

イランがイスラエルに大規模な攻撃を行ったことについて、防衛大学校の立山良司名誉教授は「イスラエルとしては、イランに対する抑止がきかなかったわけで、もう一度抑止力を回復しなくてはいけない」と述べ、イスラエルは何らかの軍事的な対抗措置をとらざるをえない状況にあると指摘しました。

そのうえで、イランの核施設や、無人機の製造施設などが攻撃の対象になりうるとしています。

一方で、アメリカをはじめとするイスラエルと協力関係にある国が慎重な対応を求めていることから対抗措置の規模や時期については、強い制約があると指摘しました。

その理由として、今回の攻撃では、アメリカやヨルダンといった複数の国が、無人機などの迎撃に関わっていたとみられることを挙げ「防空システムを構成している関係国との間に亀裂が入ることをやると、イランによる脅威が増す」と指摘し、イスラエルは、アメリカなどの意向を無視することはできないという見方を示しました。

さらに、ガザ地区でも戦闘を続けるイスラエル軍について「相当、運用能力の限界に達している」と述べ、現在のイスラエル軍には、自力で大規模な作戦を行うことは困難だと指摘しました。

そのうえで、今後のイスラエルの出方について「余裕をもって慎重に対応策を検討することが考えられる」として、直ちにイランに対する大規模な攻撃に打って出るのは難しいという見方を示しました。

共産 小池書記局長「軍事的対応 強く自制すべき」

共産党の小池書記局長は記者会見で「シリアのイラン大使館に対するミサイル攻撃は、イスラエルが行ったとみられており、重大な国際法違反で強く非難されるべきだ。イランは報復としてイスラエルへの攻撃を行ったが、報復の連鎖となることが強く懸念される。関係当事国は、緊張を高める軍事的対応を強く自制すべきだ。イスラエルが報復攻撃を行うことは断じて許されない」と述べました。