韓国総選挙 与党大敗 ユン大統領 政権与党の立て直し迫られる

10日に投票が行われた韓国の総選挙は、革新系の最大野党が過半数の議席を維持し、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領を支える保守系の与党は大敗しました。与党のトップが責任をとって辞任する意向を明らかにしたほか、首相なども辞意を表明し、任期が3年目に入るユン大統領は、求心力の低下が避けられない中で、政権与党の立て直しを迫られることになります。

10日に投票が行われた韓国の国会議員を選ぶ総選挙は、主要メディアの集計で、300議席が確定し、革新系の最大野党・共に民主党が系列の政党を含めて175議席を獲得して過半数を維持し、ユン・ソンニョル大統領を支える保守系の与党・国民の力は系列の政党を含めて108議席と大敗しました。

今回当選した国会議員の任期は5月末に始まります。

大統領府高官によりますと、ユン大統領は結果を受けて「国民の意思を謙虚に受け入れ、国政を刷新し、経済と暮らしの安定のために最善を尽くす」と述べました。

また、与党トップのハン・ドンフン(韓東勲)非常対策委員長が「国民の支持を得られなかった責任はすべて私にある」と述べ、辞任する意向を明らかにしたほか、ハン・ドクス(韓悳洙)首相や大統領府の複数の高官も辞意を表明しました。

任期が3年目に入るユン大統領は、求心力の低下が避けられない中で、政権与党の立て直しを迫られることになります。

一方、外交政策は大統領の権限が強く、今回の選挙結果が日韓関係に与える影響は限定的とみられていますが、去年3月に太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題の解決策を発表したパク・チン(朴振)前外相や、日本の国会議員と交流する韓日議員連盟のチョン・ジンソク(鄭鎮碩)会長は、いずれも今回の選挙で落選しました。

専門家 “ユン政権は極めて厳しい状況に置かれている”

韓国の政治に詳しい慶應義塾大学の西野純也教授は、今回の総選挙の結果について「ひと言で与党の歴史的な大敗だ」としたうえで、大統領の5年の任期中、少数与党であり続けるのは、1987年の民主化以降初めてで、ユン・ソンニョル政権は極めて厳しい状況に置かれていると指摘しました。

また、与党が大敗した要因については、「選挙戦に入ってから、独断的で妥協がないというユン政権のイメージを象徴する出来事がいくつか起きて、野党がそれを選挙キャンペーンに利用し、政権審判論を強く訴えた」と分析しました。

一方、外交や安全保障政策は、大統領の裁量が大きいとしたうえで、ユン大統領が北朝鮮に対して厳しく臨む姿勢は変わらないとし、「アメリカとの関係や日米韓の協力関係を進めるという流れには大きな変化はないだろう」と述べました。

さらに、ユン大統領が改善に努めてきた日韓関係をめぐっては、「ユン大統領の対日政策の方向性が変わることはないだろう。対日政策には、これまでも非常に厳しい声があったし、反対してきた人たちが選挙で大勝したことで批判の声はさらに高まると言わざるをえない」という見方を示しました。

そして、西野教授は「ユン大統領は、そういった国内世論により配慮し、より耳を傾けて対日政策を進める必要がある。日本側も、ユン政権が日韓関係で厳しい国内状況に直面しているのであれば、できるだけのことをして関係が安定的に発展していくようサポートし、ともに努力していく姿勢が望ましい」と指摘しました。