日米比首脳会議“南シナ海の中国による圧力で結束確認”米高官

アメリカ政府の高官は日本時間の12日行われる日米とフィリピンの3か国による初めての首脳会談について、フィリピンが南シナ海で中国の攻撃的な活動によって圧力を受けているとして、3人の首脳が結束を確認するとの見通しを示しました。

アメリカを訪問中の岸田総理大臣は、日本時間の12日早朝、バイデン大統領とフィリピンのマルコス大統領と初めての3か国による首脳会談を行う予定です。

この会談についてアメリカ政府の高官は記者団に対し、中国が海洋進出の動きを強める南シナ海情勢が議題の1つになるという見通しを示しました。

南シナ海では、フィリピンが実効支配するセカンド・トーマス礁の海域でフィリピン軍の拠点に向かっていた運搬船が中国海警局の船から放水銃を発射されて乗組員がけがをするなど、中国による威圧的な行動が相次いでいます。

アメリカ政府の高官は「フィリピンが中国の攻撃的な戦術で圧力を受ける中、バイデン大統領と岸田総理大臣からフィリピンを支援し、協力する用意があるという明確な支持と決意が示される」と述べて3人の首脳が結束を確認するとの見通しを示しました。

また別の高官は、ことし中に、アメリカの沿岸警備隊の船に日本の海上保安庁とフィリピンの沿岸警備隊の要員が乗船し、インド太平洋地域でパトロールを実施する予定だとして今回の会談で3か国の海洋での連携を強化する方針が示されると明らかにしました。

フィリピン 沿岸警備隊の組織拡大や強化進める 課題も

フィリピン政府は、南シナ海で海洋進出の動きを強める中国に対抗するために、沿岸警備隊の組織の拡大や強化を急ピッチで進めています。

隊員を毎年4000人規模で新規採用していて、隊員の総数はことしの年末までに3万4000人余りに増員し、7年前の4倍になる予定です。

一方で、組織の拡大に巡視船などの配備が追いついていません。

フィリピンは海岸線の長さが日本より長いものの、遠洋で活動できる巡視船の数は28隻と日本のおよそ5分の1にとどまります。

そのうち8隻は2000年代にオーストラリアから供与されたものですが、メンテナンス不足や故障でいずれも稼働ができない状況です。

こうした課題の解決のため、人的・物的両面から支援を行っているのが日本です。

2013年以降、合わせて12隻の巡視船をフィリピンに供与したほか、人材育成にも協力します。

現地では船を供与したあとも、日本の海上保安庁の職員が手入れや安全点検の方法など運用の指導を続けています。

また、おととしからはアメリカもフィリピンの沿岸警備隊の強化に乗り出し、日本と共同で指導や講習を実施したり、合同訓練を行ったりするなど、3か国の連携を深めています。