欧州人権裁判所 “スイス政府の気候変動対策 不十分”初判断

ヨーロッパ人権裁判所は、スイス政府の気候変動対策が不十分だとする、スイス市民の訴えについて、「私生活をめぐる権利が侵害されている」として認める判決を言い渡しました。政府の気候変動対策が人権に関わるとする判断をヨーロッパ人権裁判所が示したのは初めてで、原告側は画期的だとしています。

スイスの女性たちで作る市民団体は、スイス政府の気候変動対策が不十分で、熱波などで健康や生活に影響が出ているとして、2020年、フランスのストラスブールにあるヨーロッパ人権裁判所に訴えを起こしました。

裁判所は9日、ヨーロッパ人権条約に反して「私生活や家族生活が尊重される権利が侵害されている」とする判断を示した上で、原告側の訴えを認める判決を言い渡しました。

その上でスイス政府は、状況の改善のため具体的な対策を検討しなくてはならないとしています。

裁判所はNHKの取材に対して、政府による気候変動対策が人権に関わるとする判断を示したのは例がなく、初めてだとしています。

原告の1人で75歳の女性は「訴えが正しいと認められてうれしい。私には孫もいるので、まともな地球で暮らせるようになってほしい」と話していました。

原告側の代理人を務める弁護士は「歴史的な瞬間だ。今回の判断は世界中で行われている同じような裁判に影響を与える可能性がある」と述べ、画期的だとしています。