神宮外苑再開発 高層ビルフロア活用などで全事業費賄う計画

東京の明治神宮外苑の再開発についてNHKが事業計画書を入手したところ、新たに高層ビルを建設することで得られる収益などで3400億円に上る再開発の費用全額を賄う事業スキームの詳細が明らかになりました。

明治神宮外苑の再開発は三井不動産や明治神宮など4つの事業者が計画し、神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置を変えてそれぞれ建て替えるほか、高層ビル3棟が新たに建設される予定です。

高層ビルは最も高いもので190メートルになり、周辺住民からは景観の悪化への懸念や必要性を疑問視する声が上がっています。

NHKはなぜ高層ビルが必要なのか調べるため、再開発の事業計画書などを入手しました。

計画書には再開発にかかる事業費は3490億円余りで、その全額を「保留床処分金」で賄い自己資金は「0」と記載されています。

具体的には神宮球場やラグビー場上空の容積率を移して高層ビルを建てられるようにして、新たに生み出される「保留床」と呼ばれるフロアを活用して得られる収益などを事業費に充てる計画です。

「保留床」で得られる収益は、あわせて3490億円余りと事業費と同額を見込んでいて、再開発にかかる費用の全額を補てんする仕組みです。

高層ビルの建設が前提の事業スキームについて、三井不動産は「今回の事業は公的な資金に頼らない形で成立させる計画となっている。われわれが事業を行ってしっかり稼いでいくことも経済的に必要だ。こういうスキームが根底にあることを理解してもらいたいが、伝わりにくい部分もあるので一般の方がわかるように発信していく必要があると考えている」と話しています。

三井不動産 単独インタビューでの説明は

明治神宮外苑の再開発を行う4つの事業者を代表し、三井不動産が3月、初めて単独インタビューに応じました。

今回の再開発の意義について、インタビューに応じた三井不動産の鈴木眞吾取締役は「明治神宮の内苑の緑を守ることが非常に重要な目的となっている」と述べました。

事業者の1つとなっている明治神宮には、社殿と広大な森が広がる内苑と、神宮球場などのスポーツ施設がある外苑があり、内苑の維持管理費の多くを外苑の収益でまかなっていて、その最大の収益源が神宮球場となっています。

今回の計画では、老朽化した神宮球場を建て替えることになっていて、鈴木取締役は「内苑の緑を守るためには、外苑の施設を利活用して、資金を捻出する必要がある。そのためには施設を新しくしなければいけない」と述べ、今後も安定的に収益を得るために再開発が必要だと説明しました。

こうした神宮球場を含む一帯の再開発にかかる事業費は、高層ビルの建設によって新たに生み出されるフロアを活用して得られる収益などで全額、補てんする仕組みとなっています。

一方、高層ビルをめぐっては周辺住民から景観を損なうなどとして疑問の声があがっていますが、これまで事業者は高層ビルが必要となる仕組みについて詳細な説明はしてきませんでした。

これについて鈴木取締役は「今回の事業は公的な資金に頼らない形で成立させる計画となっている。われわれが事業を行ってしっかり稼いでいくことも経済的に必要でこうした仕組みについてわれわれの情報発信が足りていなかったと反省している。伝わりにくい部分もあるので一般の方がわかるように発信していく必要がある」と述べ、住民の理解を求めながら事業を進める考えを示しました。

高層ビルには疑問の声も

高層ビルの建設について、初めて住民向けに説明があったのは2020年でした。

これ以降、都や事業者が開いた住民説明会などでは「高層ビルは圧迫感があり憩いの場になるか疑問だ」とか「景観が大きく損なわれる」などの声があがりました。

3月下旬、再開発に反対していた音楽家の坂本龍一さんをしのぶ集会が神宮外苑で開かれ、参加した会社員の男性は「都や事業者が高層ビルの必要性を説明していないところに不満があります」と話していました。

一方、事業者は、高層ビルの必要性について「オフィスや商業、ホテルなどの用途を前提とした高度利用を図り、一体的に市街地再開発事業を推進する」と説明していました。

専門家「東京都もより丁寧に説明を」と指摘

「今回の再開発は法律に準じて行われていて適正だと考えられるが、これだけたくさんの指摘を受けているので都はなぜ事業を認可し決定したのか都民に丁寧に説明していく必要があると思う。より市民の意向を反映していくことが求められる時代になっているので、自治体は事業の構想段階から市民の意見を聞いていく場を設けていくことが必要だ」(駒沢大学 内海麻利教授)