【QA解説】自民党39人処分 決定の内幕は?政権への影響は?

【QA解説】自民党39人処分 決定の内幕は?政権への影響は?
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題。

4日、処分が決まりました。

安倍派幹部で、派閥の座長を務めた塩谷 元文部科学大臣と、参議院側のトップだった世耕 前参議院幹事長が離党勧告、下村 元政務調査会長と西村 前経済産業大臣は1年間の党員資格停止など、処分を受けたのは39人に上りました。

離党勧告の処分を受けた世耕氏は4日夜、離党しました。

処分決定にあたって舞台裏でどういう判断があったのか?
今後の政権運営への影響は?詳しく解説します。

Q.今回の処分決定 舞台裏でどういう判断があったのか?

A.ポイントは「国民の納得」です。
信頼を回復するためには欠かせない。
岸田総理は、けじめをつけるためにも、ある程度、厳しい処分が必要と考えていました。

一方で、もう1つのポイントが「党内の結束」です。

多くの議員を厳しく処分すれば、党内から反発が出て、結束が乱れる可能性もあります。

党幹部の1人は次のように話していました。
「この2つのバランスを取るような、うまい案を考えないといけない」(自民党幹部)
しかし、処分決定の出た4日夜、ある自民党の議員は次のように話していました。
「今のところ、処分の結果、国民の納得も党内の結束もいずれも十分とは言えない状況ではないか」(自民党の議員)

Q.39人の詳しい処分内容は?

A.こちらが自民党が決定した安倍派と二階派の議員ら39人の処分の全貌です。
(※金額はおととしまでの5年間の収支報告書への不記載などの額)
安倍派でキックバックの扱いを協議した幹部4人のうち、派閥の座長を務めた塩谷 元文部科学大臣と、参議院側のトップだった世耕 前参議院幹事長が離党勧告、また下村 元政務調査会長と西村 前経済産業大臣は1年間の党員資格停止となりました。

安倍派で事務総長を務めた高木 前国会対策委員長は半年間の党員資格停止、同じく事務総長経験者の松野 前官房長官と、二階派で事務総長を務めるなどした武田 元総務大臣、林 元経済産業大臣、平沢 元復興大臣は1年間の党の役職停止となりました。

また、萩生田 前政務調査会長ら5年間の不記載などの額が2000万円以上だった議員も1年間の党の役職停止となりました。

さらに不記載などの額が1000万円から2000万円の議員は半年間の党の役職停止、500万円から1000万円の議員らは戒告となりました。
一方、5年間の不記載が3526万円と最も多かった二階・元幹事長は次の衆議院選挙に立候補しない考えを表明したことを踏まえ、処分の対象とはなりませんでした。

また、岸田総理はみずからが会長を務めていた岸田派の元会計責任者が有罪となりましたが、処分されませんでした。

関係者によりますと、出席者から「処分が厳しすぎるのではないか」といった意見も出されたということです。
処分の決定を受けて、世耕氏は離党届を提出し、受理されました。
その上で次のように述べ、議員辞職を否定しました。
「今後は長年築いてきた各界との人間関係などを生かしながら、議員としての仕事を一生懸命やることに徹したい」
また記者団から「衆議院にくら替えして立候補する意向はあるか」と問われ「1日1日議員活動を懸命に務めていくということに尽きる」と述べました。

Q.処分に細かく差をつけたがなぜこういう形に?

A.派閥での役割や不記載などの金額がそれぞれ違う点を考慮したためです。

今回の問題では衆参両院で政治倫理審査会が開かれましたが、キックバックが始まった経緯などははっきりしませんでした。

このため、派閥での役割などを、処分を検討するいわば「物差し」としたわけです。
ただ、安倍派と二階派の幹部の処分に差を付けるかどうかで執行部内の意見が食い違い調整は難航しました。

最後は岸田総理に判断に委ね、4日の午前中になってようやく決着したんです。

しかし、処分が決まった議員からは、次のような不満の声も出ていて、党内に禍根を残す可能性もあると思います。
「金額で線引きされたのは納得できない」(処分が決まった議員)

Q.処分対象となった議員はどう受け止めた?

A.安倍派の座長を務めた塩谷氏は、4日、離党勧告の処分を受ける見通しとなる中、弁明書を提出していました。
「スケープゴートのように安倍派の一部のみが不当に重すぎる処分を受けるのは納得できない」
「独裁的・専制的な党運営には断固として抗議する」
処分決定の出た4日夜、塩谷氏は元会計責任者が有罪となった派閥を率いた岸田総理の責任も問うべきだという考えを示しました。
「なぜ安倍派と二階派を対象にし、線を引いたのか理解できない。各派閥で同じように処分を受けることが公平な考え方だ」

Q.岸田総理と二階元幹事長は処分されず、思惑は?

A.今回の問題で党が大きなダメージを受ける中、政権を維持していくには、岸田総理の処分は難しいと判断したんだと思います。
党幹部の1人は、次のように対応の難しさを打ち明けていました。
「党の役職を停止したら総裁ではいられなくなるし、戒告といっても誰が総理を注意するのか」(自民党幹部)
また、二階氏については歴代最長となる5年以上幹事長を務めた党の重鎮ということもあり、党内からは厳しい処分を行えば反発が出るという指摘が出ていました。

さらに派閥のトップであった二階氏を処分すれば岸田総理の責任を問う声も強まりかねないと判断したものとみられます。

Q.自民党内ではどう受け止めている?

A.自民党の処分が国民の納得を得られるか、難しさを感じる議員もいます。
「政治とお金の問題をめぐって、皆様に大変な不信を抱かせてしまったことに心より申し訳なく存じます」
無派閥の牧原秀樹議員は、市民の厳しい視線を日々感じています。
「この数か月は(下野した)あの2009年の時よりも厳しい。いまはただただ無視をされる。『自民党?知らねえよ』みたいな」
「岸田総理自身もこの中で処分の対象になるべきだとに思うか?」という問いに、次のように答えました。
「岸田総理に何の処分もくだらないということではおそらく国民も党内も納得感を得るのは難しいのではないか」

Q.処分をうけて自民はどう対応するのか?

A.自民党としては、処分をひとつの区切りとして、政治資金規正法の改正など、再発防止に向けた取り組みに軸足を移したい考えです。

政治資金規正法の改正をめぐっては与野党各党がいわゆる「連座制」の導入などを盛り込んだ案をまとめていますが、自民党の本格的な検討はこれからです。

今後、具体的な作業を急いで、国会に設けられる特別委員会で各党協議に臨みたいとしています。

Q.では野党はどうか?

A.立憲民主党の泉代表は次のように述べています。
「処分の軽重がぐちゃぐちゃで、不公平だという声が自民党内からも上がっており、自民党はコントロールを失っている。岸田総理大臣は、他人をさばくばかりで、みずからに一番甘い。非常に恣意的(しいてき)で、党内抗争でやっているような国民不在の処分だ」
野党側は、処分は幕引きのセレモニーにすぎないと批判を強め、引き続き実態解明が必要だとしています。

今後も森・元総理の説明や安倍派幹部らの証人喚問を強く求めていく方針で、後半国会でも与野党の攻防が続くことになりそうです。

Q.岸田政権への影響は?今後どうなっていくのか?

A.厳しい局面が続きそうです。

読み解くカギ、キーワードは“逆算”です。

与野党ともに意識しているのは、衆議院の解散・総選挙の時期です。

10月には残り任期が1年となり、その前には自民党の総裁選挙が行われる予定です。

ここからの逆算で与野党の攻防が展開される見通しです。
4月28日には衆議院の補欠選挙の投開票が行われますが、ある与党幹部は次のように話していました。
「補選は処分の評価を受ける機会になる」(与党幹部)
さらに、岸田総理は、これまで最大派閥の安倍派に支えられてきた面がありますが、今回の処分で次のように話す議員もいます。
「もう岸田さんを応援することはない」
二階派も含めて反発が強まれば、岸田総理が目指す総裁選挙での再選、これに影を落とす可能性もあります。

Q.総裁選挙からの「逆算」 うまくいかなくなることも?

A.そういうこともあり得ます。

岸田総理としては、逆算して政権浮揚を目指すとみられます。
「党全体としてこの政治不信を招いたこと、これは事実であります。党総裁としての責任、これは重く受け止めなければなりません。再発防止、政治改革に全力で取り組まなければならない。私自身については政治改革に向けた取り組みの進捗などを見てもらった上で最終的には国民や党員に判断してもらう」
今後の政権の行方は、政治資金規正法の改正など政治改革を、後半国会で実現し、信頼を回復できるかにかかってきます。

(4月4日「ニュースウオッチ9」などで放送)