京都 脳腫瘍手術で誤摘出 裁判で病院側がミス認める文書を提出

4年前、京都市の病院で脳腫瘍の手術を受けた女性が腫瘍ではない脳の組織を誤って摘出されたなどとして医師と病院側に賠償を求めた裁判で、病院側がミスを認める文書を裁判所に提出したことがわかりました。一方、女性が手術後に出たと主張するしびれなどの症状と、ミスとの関係については裁判で争うとしています。

この裁判は4年前、京都市にある京都第一赤十字病院で脳腫瘍の手術を受けた70代の女性が、腫瘍ではない脳の組織を誤って摘出され、しびれなどの症状が出たとして、執刀した医師と病院を運営する日本赤十字社に合わせて2800万円余りの損害賠償を求めたものです。

病院側が裁判所に提出した準備書面には「手術した医師が開頭すべき位置を誤り、指導医も気づかないまま、本来摘出すべき腫瘍ではなく、脳の他の組織を摘出した」などとミスを認める内容が書かれていることがわかりました。

このミスについて病院側は女性と家族に対し、手術から3年が経過した去年、改めて謝罪したとしています。

一方、女性が訴える症状との関係については「原告の主張は事実に反する」などとして、裁判で争うとしています。

この病院の脳神経外科をめぐっては、手術の説明や記録などが不十分なケースが3件あったとして、京都市がことし1月に行政指導を行っていて、この3件には今回の女性の手術が含まれているということです。

病院は取材に対し、「係争中の件に関しては回答を差し控えます」とコメントしています。

専門家「起きたことをきちんと説明することが大切」

患者の安全の問題に詳しい名古屋大学医学部附属病院の長尾能雅 教授は「手術で部位を誤認することは起こりうることでもあり、防ぐための手順も定まっている。手順を誤って健常な組織を取ってしまうのは極めて深刻で重大な問題と考えなくてはいけない。誤って健常な組織を摘出したことが分かった時点で、直ちに患者や家族に説明する必要がある。対策を講じても時にはミスやエラーが生じることはありえるが、それを防ぐ努力をすると同時に同時に、起きたことをきちんと説明することが大切だ。それが十分でないと、培ってきた信頼が失われてしまう」と話していました。