【処分一覧】自民党 39人処分決定 塩谷氏 世耕氏 離党勧告

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で自民党は安倍派と二階派の議員ら39人の処分を決定し、安倍派幹部の塩谷 元文部科学大臣と世耕 前参議院幹事長は離党勧告となりました。

これを受けて世耕氏は離党届を提出し、受理されました。

安倍派と二階派の議員ら39人の処分決定

今回の問題で自民党は4日午後、党本部で党紀委員会を開き、安倍派と二階派の議員ら39人の処分を決定しました。

それによりますと安倍派でキックバックの扱いを協議した幹部4人のうち、派閥の座長を務めた塩谷 元文部科学大臣と、参議院側のトップだった世耕 前参議院幹事長が離党勧告、また下村 元政務調査会長と西村 前経済産業大臣は1年間の党員資格停止となりました。

安倍派で事務総長を務めた高木 前国会対策委員長は半年間の党員資格停止、同じく事務総長経験者の松野 前官房長官と、二階派で事務総長を務めるなどした武田 元総務大臣、林 元経済産業大臣、平沢 元復興大臣は1年間の党の役職停止となりました。

また、萩生田 前政務調査会長ら5年間の不記載などの額が2000万円以上だった議員も1年間の党の役職停止となりました。

さらに不記載などの額が1000万円から2000万円の議員は半年間の党の役職停止、500万円から1000万円の議員らは戒告となりました。

一方、5年間の不記載が3526万円と最も多かった二階・元幹事長は次の衆議院選挙に立候補しない考えを表明したことを踏まえ、処分の対象とはなりませんでした。

また、岸田総理大臣はみずからが会長を務めていた岸田派の元会計責任者が有罪となりましたが、処分されませんでした。関係者によりますと、出席者から「処分が厳しすぎるのではないか」といった意見も出されたということです。

処分の決定を受けて、世耕氏は離党届を提出し、受理されました。

39人の処分一覧

処分を受けた議員ら39人の氏名、おととしまでの5年間の収支報告書への不記載などの金額、選出された選挙区です。

「離党の勧告」は安倍派の2人です。
▽塩谷立氏、234万円、衆議院比例代表東海ブロック選出です。
▽世耕弘成氏、1542万円、参議院和歌山選挙区選出です。

1年間の「党員資格の停止」は安倍派の2人です。
▽下村博文氏、476万円、衆議院東京11区選出です。
▽西村康稔氏、100万円、衆議院兵庫9区選出です。

半年間の「党員資格の停止」は安倍派の1人です。
▽高木毅氏、1019万円、衆議院福井2区選出です。

1年間の「党の役職停止」は安倍派と二階派のあわせて9人です。
安倍派は6人で、衆議院議員は
▽萩生田光一氏、2728万円、東京24区選出です。
▽堀井学氏、2196万円、比例代表北海道ブロック選出です。
▽松野博一氏、1051万円、千葉3区選出です。
▽三ツ林裕己氏、2954万円、埼玉14区選出です。

参議院議員は
▽橋本聖子氏、2057万円、比例代表選出です。
▽山谷えり子氏、2403万円、比例代表選出です。

二階派はいずれも衆議院議員の3人で
▽武田良太氏、1926万円、福岡11区選出です。
▽林幹雄氏、1608万円、千葉10区選出です。
▽平沢勝栄氏、1817万円、東京17区選出です。

半年間の「党の役職停止」は安倍派の8人です。
衆議院議員は
▽衛藤征士郎氏、1070万円、大分2区選出です。
▽小田原潔氏、1240万円、東京21区選出です。
▽菅家一郎氏、1289万円、比例代表東北ブロック選出です。
▽杉田水脈氏、1564万円、比例代表中国ブロック選出です。
▽中根一幸氏、1860万円、比例代表北関東ブロック選出です。
▽宗清皇一氏、1408万円、比例代表近畿ブロック選出です。
▽簗和生氏、1746万円、栃木3区選出です。

参議院議員は
▽宮本周司氏、1482万円、石川選挙区選出です。

「戒告」は安倍派の17人です。
衆議院議員は
▽大塚拓氏、994万円、埼玉9区選出です。
▽尾身朝子氏、623万円、比例代表北関東ブロック選出です。
▽柴山昌彦氏、896万円、埼玉8区選出です。
▽関芳弘氏、836万円、兵庫3区選出です。
▽高鳥修一氏、544万円、比例代表北陸信越ブロック選出です。
▽西村明宏氏、554万円、宮城3区選出です。
▽細田健一氏、564万円、新潟2区選出です。
▽吉野正芳氏、660万円、福島5区選出です。
▽和田義明氏、990万円、北海道5区選出です。

参議院議員は
▽岡田直樹氏、774万円、石川選挙区選出です。
▽加田裕之氏、648万円、兵庫選挙区選出です。

▽末松信介氏、584万円、兵庫選挙区選出です。
▽羽生田俊氏、818万円、比例代表選出です。
▽堀井巌氏、876万円、奈良選挙区選出です。
▽丸川珠代氏、822万円、東京選挙区選出です。
▽山田宏氏、560万円、比例代表選出です。

次の衆議院選挙の立候補予定者となる支部長は
▽中山泰秀氏、908万円です。

以上となります。

(※派閥別、衆参ごとに五十音順)

塩谷氏「まずは説明を聞き 地元の後援会とも相談する」

安倍派で座長を務め、離党勧告の処分を受けた塩谷 元文部科学大臣は記者団に対し「非常に厳重な処分で残念だ。検察の捜査を受け、政治倫理審査会に出席し、事実を正直に話したので、事実に基づいて判断してもらいたかった。党紀委員会がどの程度の役割を果たしたか疑問だ」と述べました。
その上で「なぜ安倍派と二階派を対象にし、線を引いたのか理解できない。各派閥で同じように処分を受けることが公平な考え方だ」と述べ、元会計責任者が有罪となった派閥を率いた岸田総理大臣の責任も問うべきだという考えを示しました。

また記者団から離党する考えがあるか問われたのに対し「まずは説明を聞き、地元の後援会とも相談する必要があると思っている。その上で結論を出したい」と述べました。

下村氏「責任は免れないので甘受」

自民党から1年間の党員資格停止の処分を受けた下村 元政務調査会長は、都内で記者団に対し「処分について私から不服を申し立てることはない。派閥の事務総長や会長代理という立場にあった責任は免れないので甘受しなければならない」と述べました。

また、離党や議員辞職を否定したうえで、次の衆議院選挙には自民党の公認が得られなくても立候補する考えを示しました。

一方、下村氏は「いつから還付や不記載が始まったのか、なぜ還付が復活したのか、党としてしっかり調べてほしい。その結果を踏まえての処分であればまだ納得感もある」と述べました。

西村氏「裸一貫でもう一度ゼロから再出発したい」

自民党から1年間の党員資格停止の処分を受けた西村 前経済産業大臣は記者団に対し「大変厳しい処分だが真摯(しんし)に受け止めて初心に戻り、いわば裸一貫でもう一度ゼロから再出発したいという覚悟だ」と述べた上で、離党や議員辞職については否定しました。

また「少し党から離れる立場になるが、もう一度、自民党のあり方を考え、政治改革、資金の透明化にも取り組んでいきたい」と述べました。

高木氏「処分を重く受け止め、判断に従いたい」

安倍派で事務総長を務めた高木 前国会対策委員長は記者団に対し「長きにわたって不記載という状況が続いたことは反省しなければならない。処分を重く受け止め、党紀委員会の判断に従いたい。襟を正して一から出直す気持ちで政治活動を頑張り、信頼回復に努めていきたい」と述べました。

また、離党の考えはないと説明した上で、次の衆議院選挙について「いつ行われるかわからないが、選挙に立候補して審判を仰ぎたい」と述べました。

萩生田氏「叱声を肝に銘じ 信頼回復に努める」

自民党から1年間の党の役職停止の処分を受けた萩生田 前政務調査会長は「還付額の多寡に限らず、派閥内での役割や収支報告書の訂正内容、説明責任の果たし方などを踏まえ、処分に至ったと推察している。政治不信を招く結果となったことを強く反省し、心よりおわび申し上げる。国民の叱声を肝に銘じ、今後、政治資金の適正管理に取り組み、国民の信頼回復に努めていく」というコメントを出しました。

松野氏「重く受け止める 深刻な政治不信 心よりおわび」

自民党から1年間の党の役職停止の処分を受けた松野 前官房長官は「処分を受けたことを重く受け止めるとともに、改めて国民の皆様に深刻な政治不信を招き心よりおわびする。二度とこのような事態を招くことがないよう初心に立ち返り、これまで以上に誠心誠意、政治活動に取り組み、政治と党の信頼回復のため真摯に努めていく」というコメントを出しました。

大塚氏「処分は遺憾 プロセスに強い不信感」

戒告となった、大塚拓 衆議院議員は国会内で記者団に対し「疑義が生じた際には、党のコンプライアンス組織にも相談し、指導に従って会計処理を行ってきたので、党から処分を受けることは筋が通っておらず甚だ遺憾に感じている。また、今回の処分に至るプロセスについて強い不信感を持っていて、極めて大きな問題だ。党を立て直していくため全力で政治活動をしていく」と述べました。

また「岸田総理大臣は派閥の会長を長年務めてきたので、おそらく総理自身の身の処し方について今後、考えていくものだと思う」と述べました。

高鳥氏「処分を厳粛に受け止めたい」

戒告となった、高鳥修一 衆議院議員は国会内で記者団に対し「私自身、不記載だったお金を触ったことも、使ったことも一切ないが、私の事務所に不記載があったことは事実だ。最終的な責任はすべて私が負うということで、処分を厳粛に受け止めたい。新潟県連の会長はみずから辞任し、私なりに責任はしっかり受け止めさせていただいている」と述べました。

茂木幹事長「派閥幹部の政治責任は極めて重い」

自民党の茂木幹事長は記者会見で「派閥の政治資金パーティーの不正な処理に関わる問題について、大きな政治不信を招いており、極めて深刻な問題であると受け止め、 党紀委員会に審査を要請した。特に『清和政策研究会』=安倍派では、長期にわたり大規模かつ継続的に派閥の政治資金収支報告書だけでなく、大半の議員の報告書に還付金の不記載が判明するなど、組織的な不正が疑われている」と述べました。

その上で「党紀委員会では、これらの不正、不適切な会計処理について、派閥の幹部の立場にありながら適正対応をとらず、大きな政治不信を招いた者の政治責任は極めて重いとの審査結果だった。これまでに党の執行部としてさまざまな聴き取りや追加の調査、アンケートも行い、把握した事実関係や問題認識については党紀委員長に話した。それも踏まえた処分であったと考える」と述べました。

また、今回の処分で国民の納得が得られるかと問われたのに対し「党紀委員会の審査をお願いした私の立場からコメントは差し控えたいが、これだけ多くの処分者が出て、厳しい処分も含まれていることを重く受け止めたい」と述べました。

処分の対象とならなかった議員などへの対応について「不記載額が過去5年間で500万円未満の45人については、党の聴き取り調査などでも意図的な不正な処理に関与したという事実は認められなかった。党則に基づく処分ではなく、幹事長による対応として厳重注意を早急に行いたい」と述べました。

さらに、世耕氏については「世耕 前参議院幹事長が離党届を出したということであれば、受理することになると思う」と述べました。

一方、記者団が「森元総理大臣への聴取は行われたのか」と質問したのに対し「追加の聴取などは必要に応じて実施しているが、聴き取りの対象や内容は外部に明らかにしない方針だ」と述べました。そのうえで「事実関係を究明することは極めて重要でその努力は続けなくてはいけないが、一定の処分はいつまでも延ばすことはできない。調査結果や事実確認を踏まえ、再発防止策についても早急に検討を深め、具体的な内容を詰めていきたい」と述べました。

「離党勧告は議員にとってかなり厳しく、党員資格停止も厳しい処分だ。こういう判断に至ったことは、それだけわが党に対する批判が大きく、政治不信を招いてしまったことについて強い反省が必要だということだ。仲間を処分しなければならないことは 率直に苦しい思いもあるが、それだけ危機的な状況にあることを改めて痛感しなければいけない。この処分を踏まえて、党の再生を進め、国民に対する信頼回復を図るスタートにしていきたい」と述べました。

1年間の党の役職停止となった萩生田 前政務調査会長が務めている、東京都連会長の取り扱いについては「役職停止は基本的に党本部の役職が停止になる。その上で、それぞれの都道府県連で役員を決めており、そこで判断することになる」と述べました。

逢沢 党紀委員長「自民党の再生や党を変えていく一歩に」

自民党の逢沢 党紀委員長は記者会見で、4日の党紀委員会の議論について、個別の発言は公表しない約束をしているとした上で「党紀委員会の委員は31人の議員から提出された弁明書を精読して委員会に臨んだ。今回の処分の結果が国民や全国の党員に広く積極的に受け止められ、未曽有の危機的状況である自民党の再生や新しく党を変えていく機運に一歩でもつながるように、思いを集中させて真剣に議論した」と述べました。

また、処分は全会一致で決定したとした上で「ルールに従い10日間の異議申し立ての期間がある。今月13日まで異議申し立て期間があり、処分は14日から効力を発する」と述べました。

岸田首相「深刻な政治不信 心からおわび ガバナンス改革進める」

自民党の処分の決定を受けて、岸田総理大臣は4日夜、総理大臣官邸で記者団の取材に応じました。

この中で岸田総理大臣は今回の処分について「関係者の政治責任を明らかにする観点から行われたものだ。長年にわたり集団的に不記載が行われてきた疑いの強い派閥については、長年の慣行を是正することなく、結果的に放置してきた幹部の責任を重く見る内容となっている」と説明しました。

その上で「国民から多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こす結果となったことは党総裁として心からおわびを申し上げる。今後は二度とこうした事態を招くことがないよう、党のガバナンス改革を進めるとともに政治資金規正法の改正に向けて全力を尽くしていきたい」と述べました。

また岸田派の元会計責任者が有罪となったものの、派閥を率いていたみずからは処分されなかったことについて「個人として不記載がないことなどから、今般の処分の対象とならなかったと承知している。しかし、党全体として政治不信を招いたことは事実で、党総裁としての責任は重く受け止めなければならない。政治改革に向けた取り組みの進捗(しんちょく)などを見てもらった上で最終的には国民や党員に判断してもらう立場にあると考える」と述べました。

さらにかつて派閥会長を務めた森 元総理大臣への対応について「私の判断で森 元総理大臣についても私が直接電話をかける形で事情を聴いた。しかしながら引き続き具体的な関与については確認できていない」と述べました。

党紀委員会委員 金美齢氏「処罰だけが先行 納得いかない」

自民党の党紀委員会の委員で評論家の金美齢氏は記者団に対し「物事はすべて納得するということにはならず、いろいろな人がいろいろな意見を言ったが、厳しすぎるというのが私の感想だ。国のためにたくさん頑張った人たちがいるので、少しのことで処罰だけが先行することには納得いかない」と述べました。

39人の処分は郵政民営化関連法案の処分に次ぐ規模

自民党によりますと党紀委員会が行った処分で最も人数が多かったのは、2005年に郵政民営化関連法案に反対した59人だということです。

この時は綿貫民輔 元衆議院議長ら10人が除名され、27人が離党勧告となりました。39人が処分された今回は、それに次ぐ規模だということです。

野党4党 参院国対委員長 処分内容の説明要求で一致

自民党の党紀委員会が開かれるのを前に、立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党の野党4党の参議院の国会対策委員長が会談し、今後の対応を協議しました。

この中で野党4党は、あすにも参議院予算委員会の理事懇談会を開き、自民党から処分の内容や安倍派の幹部4人に行った追加の聴取の結果などについて説明を求めることで一致しました。

また、これまで参議院政治倫理審査会に出席していない29人の議員に、改めて出席を求めていくことを確認しました。

このあと立憲民主党の斎藤 参議院国会対策委員長は記者団に対し「一部の議員は自民党の党紀委員会には弁明書を出しているようだが、審査会で弁明をしておらず、国会軽視も甚だしい。審査会に対し、意思表示をしてもらい、具体的な審査を進めたい」と述べました。

自民党の8段階の処分の種類と事例は

自民党は、所属議員に政治不信を招く政治的・道義的な責任があると認めた場合、党則に基づいて8段階の処分を行うと規約に掲げています。

処分は重い順に「除名」「離党の勧告」「党員資格の停止」「選挙における非公認」「国会および政府の役職の辞任勧告」「党の役職停止」「戒告」「規定の順守の勧告」となっています。

最も重い「除名」は、直近では派閥の政治資金パーティーをめぐる今回の事件で逮捕・起訴された池田佳隆衆議院議員が受けています。

また2005年には、郵政民営化関連法案に反対し、新党に参加した綿貫民輔・元衆議院議長や亀井静香・元政務調査会長ら10人が除名されました。

「離党勧告」は、郵政民営化関連法案に反対し直後の衆議院選挙で無所属で立候補した野田聖子・元総務大臣ら衆参両院の議員あわせて27人が一度に処分を受けました。

「党員資格の停止」は最近では、2021年の衆議院選挙で立憲民主党の候補者の応援演説を行った山崎拓元副総裁が1年間の処分を受けた例があります。

「党の役職停止」は、おととし(2022年)安倍元総理大臣を「国賊だ」などと発言した村上誠一郎・元行政改革担当大臣が1年間の処分を受けています。

「戒告」は、民主党政権だった2012年、当時の野田内閣に対する不信任決議案の採決で、党の方針に従わなかった小泉進次郎・元環境大臣ら7人が処分を受けた例があります。

一方、自民党によりますとこれまでに「選挙における非公認」の処分を受けた議員はいないということです。

また、2021年に新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が続く中、深夜まで銀座のクラブに出入りした議員3人に対し当時の二階幹事長が離党を促し3人が離党しましたが、これは規約に基づく処分ではありませんでした。

処分を受けたらこうなる

自民党が党則に基づいて行う8段階の処分のうち、2番目に重い「離党の勧告」は党が自発的に離党するよう勧告するものです。処分を受けてみずから離党すれば、その後、党紀委員会の審査を経て復党することができます。復党までに必要な期間は定められていません。
一方、勧告を受けても離党しない場合は「除名」されることになります。

3番目に重い「党員資格の停止」は原則3か月以上2年以下の期間を定め、党員としての資格を停止するものです。この処分を受けると総裁選挙への立候補や投票ができなくなり、党役員の選出などにも関われなくなります。また国政選挙の立候補予定者となる支部長は解任されます。
一方、党員ではあるため、党費の支払いなどの義務は継続します。

6番目の「党の役職停止」は原則3か月以上2年以下の期間を定め、党の役職を停止するものです。今回の問題では安倍派幹部らがすでに政府や党、国会の役職を退いているため、こうした処分では実効性がないという指摘が出ていました。

「戒告」は、8段階の処分のうち下から2番目で、対象者に文書か口頭で注意するものです。この処分を受けても議員活動に制約は生じません。党関係者の1人は「サッカーでいう『イエローカード』のイメージで次はより厳しい処分を下すと警告する意味合いもある」と話しています。

なお、今回の処分では、最も重い「除名」、4番目の「選挙における非公認」、5番目の「国会および政府の役職の辞任勧告」、そして最も軽い処分の「規定の順守の勧告」はありませんでした。

自民党の党紀委員会とは

自民党の党紀委員会は「党の規律をみだす行為」などを行った議員らに対する処分を決める機関で、衆参両院の議員や元議員、それに民間人のあわせて18人で構成されます。委員長は逢沢一郎・元国会対策委員長が務めています。

幹事長からの要請か、5人以上の党紀委員による請求があった場合に招集され、審査を行った上で処分を決定します。

党紀委員会が決定する処分は重い順に「除名」から「規定の順守の勧告」までの8段階あります。

処分の審査の対象となった議員らは、党紀委員会に弁明書を提出することができ、委員会はその内容も踏まえ処分を決定することになります。

党紀委員会が決定した処分に不服がある場合は、総裁に対し、再審査の請求を行うことができます。

再審査が請求されると、総務会で扱いが協議され、相当の理由があると認められた場合には党紀委員会で再度審査が行われることになっています。

塩谷氏「処分の基準を明確にしてもらいたい」

安倍派の座長を務めていた塩谷 元文部科学大臣は、処分が決まる前に記者団に対し「事実に基づいて、処分の基準を明確にしてもらいたい。まだ処分が出ていないからわからないが、離党勧告は厳しいと思う」と述べました。また記者団から岸田総理大臣の責任について問われ「党の代表としての責任はあるのではないか」と述べました。

林官房長官「説明責任を果たすことが重要」

林官房長官は午前の記者会見で「政府として自民党の処分について申し上げる立場にはないが、一般論として、それぞれの政治家が必要に応じて適切に説明責任を果たすことが重要だ」と述べました。

各党の反応

立民 泉代表「総理が処分の対象にならず 紛糾して当然」

立憲民主党の泉代表は党の会合で「不記載が500万円以上という処分の基準も全くわからず、何より、自分の派閥の元会計責任者が略式起訴されている岸田総理大臣自身が処分の対象になっていないのだから、紛糾して当然だ。真相をしっかりと語り、それに基づいて秩序だった処分が行われなければならないが、やっていることは、党内抗争ではないか。自民党はコントロールを失っており、党運営の能力もない」と述べました。

また、記者団に対し「処分の軽重がぐちゃぐちゃで、不公平だという声が自民党内からも上がっており、 自民党はコントロールを失っている。岸田総理大臣は、他人をさばくばかりで、みずからに一番甘い。非常に恣意的(しいてき)で、党内抗争でやっているような国民不在の処分だ」と述べました。

立民 長妻政調会長「総理が処分対象外は非常に不可解」

立憲民主党の長妻政務調査会長は記者会見で「実態解明なしに、処分だけでふたをしては困る。野党側は国会で10人の証人喚問を要求しているので、説明を果たした上で、処分すべきだ。岸田総理大臣も、派閥の会長をしていて、元会計責任者が有罪になっているので、処分対象になることは明白だが、外れているのは非常に不可解だ。きちんとした対応をすべきだ」と述べました。

維新 馬場代表「処分の物差しがはっきりわからず不可解」

日本維新の会の馬場代表は記者会見で「真実の解明ができていないので、処分の物差しがはっきりわからず、非常に不可解な思いを国民は持っているだろう。企業で言えば、何か不正が起こればトップが責任を取るのは常識で、岸田総理大臣はみずからを処分すべきだ。自民党の中のみならず、国民が『なるほど』と思うことをやってほしい」と述べました。

公明 北側副代表「党内が混乱することはないように」

公明党の北側副代表は、自民党の処分が決まる前の記者会見で「説明責任をしっかり果たして政治責任を明確化し、再発防止策を今の国会できちんと仕上げていくことが大事であり、国民の理解が得られるような判断をしてほしい。政策を前に進めていくためにも党内が混乱することはないようにしてほしい」と述べました。

共産 小池書記局長「幕引き図ろうとすること許されない」

共産党の小池書記局長は記者会見で「処分の基準が全く分からず、党の最高責任者で、岸田派の会長でもあった岸田総理大臣自身が処分されていないのは、保身ありきで、みずからに波及しないところで線を引いていると思われてもしかたない。けじめには程遠く、このような処分で幕引きを図ろうとすることは許されない。証人喚問も含めて、徹底的な真相解明が必要だ」と述べました。

国民 玉木代表「国民の納得得られない 全容解明が必要」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し「役職の重さなどで処分を決めたのであれば、いちばん責任がある岸田総理大臣が処分を受けていないのは、国民の納得を得られない。全容解明が行われていないからこそ、処分の基準があいまいだったり不満が出たりしている。これで幕引きを図ることになってはならず、証人喚問をして、全容解明をしっかり行っていくことが必要だ」と述べました。

れいわ 山本代表「茶番もいいところ」

れいわ新選組の山本代表は、記者会見で「茶番もいいところだ。離党勧告と言っても、一定の期間がたてば党に戻るのだろうから、いったい何の意味があるのか。少なくとも議員辞職させるくらいの話でなければ筋は通らない」と述べました。

塩谷立氏とは

塩谷立氏は、衆議院比例代表東海ブロック選出の当選10回で、これまでに文部科学大臣や党の総務会長、選挙対策委員長などを歴任しました。

安倍派では、2012年11月から5年余り、当時の町村会長や細田会長のもとで事務総長を務めました。

そして、おととし7月に安倍元総理大臣が亡くなり、会長が不在となったあとも会長代理を務め、去年8月に派閥の意思決定にあたる常任幹事会が発足してからは、取りまとめ役の「座長」を務めました。

所属議員へのキックバックの取り扱いを話し合ったおととし8月の幹部協議に出席した1人でもあります。

政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、派閥が解散を決めるまでの意見集約を担い、みずからは衆議院政治倫理審査会長の役職から退きました。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載の額は234万円でした。

先月には衆議院政治倫理審査会に出席し、派閥の会計処理について「去年8月から、清和会が解散を決定したことし2月1日までの5か月余り常任幹事会の座長を務めてきたが、政治資金パーティーをめぐる問題に関しては一切関与していない」と述べていました。

また、おととし8月の幹部協議については「多くの所属議員から『困っている』という意見があり、『ことしに限って継続するのはしかたがないのではないか』という話し合いがなされた。『継続していくしかないかな』という状況の中で終わったと思う」と述べていました。

世耕弘成氏とは

世耕弘成氏は、参議院和歌山選挙区選出の当選5回で安倍元総理大臣に近かったことで知られ、経済産業大臣や官房副長官などを歴任しました。

2019年からは自民党の参議院幹事長を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で去年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

所属議員へのキックバックの取り扱いを話し合ったおととし8月の幹部協議に出席していた1人でもあります。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載の額は1542万円でした。

先月には参議院政治倫理審査会に出席し、派閥の会計処理について「派閥の会計や資金の取り扱いに関与することは一切なかった。パーティー券販売のノルマやノルマ超過分の還付方法などについて関与したこともなければ報告・相談も受けてこなかった」と述べていました。

おととし8月の幹部協議については「この時に何か確定的なことは決まっていない」と述べていました。

一方、世耕氏は先週になって、おととし3月、安倍元総理大臣や西村前経済産業大臣らと4人で参議院選挙の候補者調整に関する打ち合わせを行ったと明らかにする一方、キックバックの扱いは協議していないと説明していました。

下村博文氏とは

下村博文氏は衆議院東京11区選出の当選9回で、これまでに文部科学大臣や党の政務調査会長などを歴任しました。

安倍派では、2018年1月から2019年9月まで当時の細田会長のもとで事務総長を、安倍元総理大臣が会長に就任した2021年11月から去年8月まで塩谷 元文部科学大臣とともに会長代理を務めました。

所属議員へのキックバックの取り扱いを話し合ったおととし8月の幹部協議に出席した1人でもあります。

ただ、かつて派閥の会長を務めた森 元総理大臣や「5人衆」と呼ばれる有力議員とは距離があるとされ、去年8月に発足した新たな体制では派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーにはなりませんでした。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載の額は476万円でした。

先月には衆議院政治倫理審査会に出席し、キックバックが続いた経緯について「いつ誰がどんな形で決めたか本当に知らない」と述べていました。

また、おととし8月の幹部協議については「結論が出たわけではなく、この会合で還付の継続を決めたということは全くない」と述べていました。

西村康稔氏とは

西村康稔氏は衆議院兵庫9区選出の当選7回で、経済再生担当大臣や官房副長官などを歴任しました。

おととし8月からは、経済産業大臣を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で去年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では、2021年10月から、おととし8月まで、当時の細田会長や安倍会長のもとで事務総長を務めました。

また「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

所属議員へのキックバックの取り扱いを話し合った、おととし8月の幹部協議に出席した1人でもあります。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載などの額は100万円でした。

先月には衆議院政治倫理審査会に出席し、派閥の会計処理について「会長のもとで事務局長が対応していたので、ほかの幹部、特に事務総長は関与していない」と述べていました。

また、おととし8月の幹部協議については「ノルマ以上に売った議員から『返してほしい』という声があり、どう対応するかを共有したが、結論は出なかった」と述べていました。

高木毅氏とは

高木毅氏は、衆議院福井2区選出の当選8回。これまでに復興大臣や衆議院議院運営委員長などを歴任しました。

2021年10月の岸田政権の発足以来、自民党の国会対策委員長を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて去年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では、安倍元総理大臣が亡くなったあとのおととし8月から事務総長を務めてきました。

また「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載額は1019万円でした。

高木氏は先月衆議院政治倫理審査会に出席し、派閥の会計処理について「私が事務総長の立場で政治資金パーティー収入を管理したり、収支報告書の作成や提出について事務局長から報告を受けたり、決裁などをしたりして関与することは一切なかった。そのため収支報告書の不記載や虚偽記載も全く認識していなかった」と述べていました。

またキックバックが続いた経緯については「どのような検討がなされたか、私自身は全く認識しておらず、検討の場にも出席したことはなく、一切関与していない」と述べていました。

萩生田光一氏とは

萩生田光一氏は、衆議院東京24区選出の当選6回。安倍元総理大臣に近かったことで知られ、経済産業大臣や文部科学大臣などを歴任しました。

おととし8月から党の政務調査会長を務めましたが、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で去年12月に辞任しました。

所属していた安倍派では「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載の額は2728万円で、今回の問題の関係議員ら85人の中で3番目に多くなりました。

衆議院政治倫理審査会には出席していません。

ことし1月に行った記者会見では「事務総長経験者でもなく、常任幹事会のメンバーに就任したのは去年であり、これまでのパーティーの開催概要や派閥運営に関して、どのようなやり取りがあったのかなどは存じ上げない」と述べていました。

松野博一氏とは

松野博一氏は、衆議院千葉3区選出の当選8回。文部科学大臣などを歴任したあと2021年10月の岸田内閣の発足以来、官房長官を務めました。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で去年12月に不信任決議案が提出され、決議案は否決されましたが、2日後に「国政に遅滞を生じさせたくない」などとして辞任しました。

所属していた安倍派では2019年9月からおよそ2年間、当時の細田会長のもとで事務総長を務めました。

また「5人衆」と呼ばれる議員の1人で、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーでした。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載の額は1051万円でした。

先月には衆議院政治倫理審査会に出席し、派閥の会計処理について「派閥のパーティー券の販売・収入の管理や収支報告書の作成といった経理、会計業務には一切関与していなかった。事務局から経理・会計に関する決裁を含め、判断を求められたり報告を受けたりしたことは一度もなかった」と述べていました。

武田良太氏とは

武田良太氏は、衆議院福岡11区選出の当選7回。これまでに総務大臣や国家公安委員長などを歴任しました。

所属していた二階派では2021年10月から事務総長を務めました。

おととしまでの5年間の収支報告書への不記載などの額は1926万円でした。

ことし2月に衆議院政治倫理審査会に出席し、派閥の会計処理について「私も派閥会長の二階元幹事長も会計責任者から収支報告書の内容の説明を受けることなく、虚偽記載などが行われていたことは全く知らなかった。二階氏も私も全く関与していない」と述べていました。