北朝鮮 中距離弾道ミサイル「火星16型」発射実験成功と発表

北朝鮮は、極超音速で滑空する弾頭を装着した新型の固体燃料式の中距離弾道ミサイル「火星16型」の初めての発射実験に2日成功したと発表しました。

3日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもと、極超音速で滑空する弾頭を装着した新型の固体燃料式の中距離弾道ミサイル「火星16型」の初めての発射実験を2日、首都ピョンヤン郊外で行い、成功したと伝えました。

実験では、分離された弾頭が予定どおりの変則軌道で飛行し、1000キロ先の日本海に正確に着弾したとしています。

キム総書記は「さまざまな射程のミサイルの固体燃料化と弾頭の制御化、核兵器化が完全無欠に実現した。敵の対象物を迅速かつ正確、強力に攻撃するという3大原則を貫徹することになった」と成果を強調しました。

北朝鮮が開発を急いでいる極超音速ミサイルは、分離された弾頭が音速の5倍以上で低空を変則軌道で滑空するため、探知や迎撃が難しいとされています。

北朝鮮としては、アメリカ軍の戦略拠点であるグアムなどを射程に収める中距離弾道ミサイルでも、従来の液体燃料式より迅速に発射できる固体燃料式への置き換えが進んでいると誇示することで、日米韓3か国を強くけん制するねらいもあるとみられます。

これに先立って韓国軍は2日、北朝鮮がピョンヤン付近から日本海に向けて中距離級の弾道ミサイルと推定される1発を発射し600キロ余り飛行したと明らかにしていて、北朝鮮の発表はこのミサイルを指すとみられます。

◇北朝鮮の極超音速兵器開発は

北朝鮮が4年目に入った「国防5か年計画」で5つある最優先事業の1つと位置づけて開発を急いでいる極超音速兵器は、音速の5倍以上で低空を変則軌道で滑空するため、探知や迎撃が難しいとされます。

北朝鮮は、2021年9月に北部チャガン(慈江)道から弾道ミサイル1発を発射し、国防科学院が新たに開発した極超音速ミサイル「火星8型」の初めての発射実験を実施したと発表しました。

おととし1月には極超音速ミサイルの発射実験を行い「発射地点から700キロ先の目標に誤差なく命中した」と主張。

その6日後、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと、極超音速ミサイルの「最終発射実験」が実施され、ミサイルから分離された弾頭が滑空して変則軌道で飛行し目標に命中したと強調しました。

さらに北朝鮮は、ことし1月に首都ピョンヤン付近から日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射し、従来の液体燃料式より迅速に発射できる固体燃料式の中距離弾道ミサイルの発射実験に成功したと発表。

ミサイルには極超音速で滑空する弾頭が装着され、その性能が確認されたと主張しました。

北朝鮮のねらいについて、防衛省は「ミサイル防衛網の突破を企図し能力の向上を追求している」と指摘した上で、より長い射程のミサイルへの応用など、今後の技術的な進展を注視していく必要があるとしています。

朝鮮中央テレビ 発射実験の映像を約10分放送

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、2日行われた新型の固体燃料式の中距離弾道ミサイル「火星16型」の発射実験の映像を、3日、およそ10分間にわたって放送しました。

映像では、片側7輪の移動式発射台に搭載された「火星16型」が、かたわらを歩くジャンパー姿のキム・ジョンウン総書記とともに軍の訓練場の一角へ移動し、ミサイルの先を格納するカバーが開くと、白と黒の市松模様が施された、とがった弾頭が現れました。

そして、発射管ごと立ち上げられた「火星16型」は、ガスなどの圧力によって射出されたあと空中で点火する「コールド・ランチ」と呼ばれる技術を使って発射され、垂直に上昇していく様子がさまざまな角度から捉えられています。

ミサイルからふき出す炎は、大量の白煙とともにスカートのように広がっていて、固体燃料式の特徴が確認できます。

さらに、2段式とみられるミサイルが一定の高度まで上昇したあと、分離した弾頭が角度を変えて飛行していくように見えます。

林官房長官「引き続き米韓など緊密に連携」

林官房長官は午前の記者会見で「北朝鮮がきのう発射した弾道ミサイルはこれまでに得られた情報を総合的に勘案すると新型の固体燃料推進方式の中距離弾道ミサイル級だったと推定している」と述べました。

その上で「一般的に固体燃料のミサイルは液体燃料のものに比べ、保管や取り扱いが容易で、即時の発射などの観点で優位だとされている。発射の詳細は防衛省で分析中であり、政府としては引き続きアメリカや韓国などとも緊密に連携しつつ、必要な情報の収集と分析や警戒・監視に全力を挙げていく」と述べました。