“おしゃれ”警備で変えていく

“おしゃれ”警備で変えていく
「警備」のお仕事についてどんなイメージを持っていますか?

「きつい・長時間」などネガティブなイメージもあり、警備の仕事は人手の確保が難しいと言われています。

「拘束時間が長くてきつそう…」取材した私自身、そんなイメージを警備業に対して持っていた1人でした。

とある“警備員”と出会うまでは。

(長崎放送局 ディレクター 川浪大吾)

“おしゃれ”警備で雇用創出 27歳社長の野望

長崎市で社員30人を束ねる警備会社社長、田崎相(すがた)さん(27)です。
警備業に“おしゃれ”というコンセプトを掲げ業界関係者から注目を集めています。
服装から移動する車まで徹底的に“おしゃれ”にこだわり、従来の警備のイメージを刷新することを目指しています。
田崎さん
「やっぱり“外見が大事”だから、ユニフォームとかスタイルがいいように見せるために全部採寸して、ロゴとかステッカーのスタイルはめちゃくちゃこだわっている」
おしゃれへのこだわりはオフィスにも。無機質だった作業スペースを一新しアメリカのビンテージハウスを意識した内装にリノベーション。
「事務所もお金をかけてフルリノベーションして、従業員が帰ってきたくなるような居心地のいい事務所を作りました」
なぜここまでおしゃれにこだわるのか。きっかけは6年前、入社まもなくして会社の経営を任されたことです。

当時、会社は人手不足により業績は悪化。若い人は全く集まらず仕事へのやりがいも見出せずにいました。
「身にまとったユニフォームが嫌でした。自分が見られたくないと思って仕事してたんですよね」
この状況を打開できないか。試してみたのが「趣味」を仕事に取り込むことでした。
「趣味でクラシックカーとか古着とかインテリアコーディネートとかありますけど、そういうのに触れてきた中で、そこから得られるものを仕事に生かす」
まず始めたのが、警備で使う道具を自分好みのデザインに作りかえること。
会社のロゴ、警備服や車両などをかえていくと社員が道具に愛着を持ち始め、日々の手入れを欠かさず行うようになったのです。
「ガワ(見た目)をかっこよくすることによって自分もそれに合わせないと行けなくなるから、ガワをかっこよく変えれば、マインドもそろってくるんじゃないか」
さらに、警備動作も“おしゃれ”にできないか研究も始めた田崎さん。ドライバーが認識しやすい旗の振り方や通行人が安全に移動できる方法など試行錯誤を重ねました。

特に大切にしようと決めたルールは、周囲への目配せと丁寧な声かけ。ドライバーや通行人には必ず会釈を徹底し笑顔を見せるのがポイントです。
「いかにストレスフリーで運転させてあげるか、こちらもプロとしての意地もあるじゃないですか」
「“おしゃれ”警備」は取引先や共に働く別の業者の人たちからも一目置かれるようになっているといいます。

若い人たちが続々と

“おしゃれ”を追求した独自の警備スタイル。SNSでPRしたところ若い人材も集まるようになりました。

そのひとりが、前職も警備業だった瀧本一孝さん(27)です。
瀧本一孝さん
「前の職場は制服も全然かっこよくなかったですからね。おじいちゃんが着るような制服を着てたんで。ただ、ぼーって感じで旗を振ってましたね。こんなきれいには振ってなかったです」
田崎さんから薫陶を受けた瀧本さん。「“おしゃれ”警備」を実践してみると人生を変えるできごとがありました。
SNSに投稿された瀧本さんの警備姿に30件をこえるメッセージが寄せられたのです。
「誘導の方のおかげで安心して交互通行出来ます。暑さ、寒さに関わらず、ありがとうございます」
「こんな丁寧な警備員みたことない。であったら深々お辞儀する!応援します」
「いろんな方からコメントいただけて自分のやりがいにつながってますし。もっと頑張ろうってなります」

警備を夢のある仕事にー社長の終わりなき挑戦

「“おしゃれ”警備」をはじめて6年。6年前は7000万円ほどの売り上げが今ではおよそ2倍の1億5000万円にまで成長しました。

次なる目標は社員の生活そのものをおしゃれにすること。

田崎さんは、銀行から融資を受けてマンション買い取り内装をフルリノベーション。3月から社員寮として提供を始めました。
仕事と暮らし、このふたつに誇りを持たせることが大切だと田崎さんは考えています。
田崎さん
「かっこよく、おしゃれに働いて、ライフスタイルも豊かになっていく。夢がある仕事なんだよということを世の中に伝えていけたらいい。それを自信を持って信じ続けるということに尽きるのかなと思っています」

=取材後記=

田崎さんはかつて、周りの仲間が長崎を離れていく姿を見て悔しさを感じていたと言います。警備業でも、長崎の若者が誇りを持って働くにはどうしたらいいのか。そんな課題意識が、一見すると相反する“おしゃれ”と“警備”を融合し、長崎の若い世代の雇用の在り方に新しい価値観をもたらしました。

仕事とプライベートは切り離して考えられがちですが、どちらも人生の一部であることには変わりありません。「私生活の充実があっての仕事だな」と痛感することが多々あるなか、私も今月で社会人4年目になりました。私自身、仕事への「やりがい」や「誇り」を見失いそうになった時は田崎さんの考え方を参考にしたいと強く思いました。
(3月26日「おはBIZ」で放送)
長崎放送局ディレクター
川浪大吾
2021年入局
制作局を経て現所属
私のおしゃれは「メガネ」から