一度は辞退した内定 それでも、被災した地元で働く道を選んだ

「珠洲支店勤務を命ずる」

能登町に本店を置く信用金庫に新たに採用された、宮崎太陽さん。

一度は内定を辞退し、県外の別の企業に就職予定でした。

しかし地震を経て、改めて採用を願い出ました。

「地震が起きて地元がとても被災して。その中で、近くにいたかったっていうのが一番の思いです」

能登に根ざした信金「入庫式」

能登半島地震で大きな被害が出た石川県能登町に本店を置く興能信用金庫。

1日、入社式にあたる「入庫式」が行われました。

本店のホールは地震のあと資材置き場などに使われていて、ことしは金沢市内の支店で開かれました。

式にはこの春採用された16人が出席。

田代克弘理事長から一人ひとりに辞令が交付されました。

このあと新入職員を代表して、鷹野輝星さんが復興への決意を述べました。

新入職員代表 鷹野輝星さん
「1月1日に発生した能登半島地震の影響により、地域の方々の厳しい環境が続いています。この環境の中で、生まれ育った石川県を活気あふれる地域に戻し、地域の皆様の支えになる人材を目指して参ります。若い力と行動力で1日も早く皆様のご期待に添って行動できるようになりますことをここに誓います」

「まず地元にいることが大切」

新入職員の1人、宮崎太陽さんは地震で被災した珠洲市の出身です。

実は宮崎さんは一度は内定を辞退し、県外の企業に就職することになっていました。

しかし、能登半島地震のあと「地元の力になりたい」と改めて採用を願い出たということです。

その思いについて、「近くにいたかった」と話しています。

宮崎太陽さん
「地震が起きて地元が被災して、その中で、遠くにいるよりは近くにいたかったっていうのが一番の思いです。まずは地元にいることが大切だと思っていて、その中で地域密着を心がけて地域の人と話し合ったり悩みなどを聞いてお手伝いもボランティアもできればと思っています。金融面でももちろんなんですけど、金融以外のことでもお手伝いができると思っていて。勤務時間外でも地域の人との悩みなどもお聞きして、相談に乗れる人になりたいと思います。

仕事が始まるまで自分が何もできていないことに不安もあったり、自分の中ではモヤモヤする中で過ごしていました。きょうから自分の中では頑張るというか努力していきたいです」

入庫式の辞令交付では配属先も発表され、宮崎さんは希望どおり、地元の珠洲支店に配属されることになりました。

「支店はきょう初めて聞きました。なるだけ能登にある支店を希望はしていました。能登であることに安心したのと、より家族とも一緒に過ごせるので、まずは地元で頑張りたいと思っています」

輪島市 被災した新入職員が決意

一方、輪島市ではこの春採用された市の職員に辞令が交付されました。

輪島市では今年度、18歳から40歳までの職員14人が採用され、市役所で坂口茂市長から一人ひとりに辞令が手渡されました。

復旧復興に対応する職員が不足していることから、地震のあと追加募集で採用された病院で働く職員なども含まれています。

新入職員を代表して決意を述べた松野光さんは、地震で被災し、避難生活も経験しました。

松野光さん
「小さいころから輪島で育ってきて、千枚田とか海とか自然がすごく好きで、地域の絆とか好きだったので、この輪島市をもっとよりよい町にしていきたいという気持ちとともに県外にも輪島市のよさをアピールしたいと思って輪島市の市役所職員を志望しました。震災から2週間程度、最初は緊急避難所で避難生活をしていたんですけど、そのときは私、本当に4月から市役所の職員として仕事をやっていけるのかという漠然とした不安がありました。そのあと市外で2次避難をして、そのとき心も体も休ませてもらったので、そのときに気持ちの整理をしました」

「輪島市はひどい被害にあって、今は見るに堪えない光景ですけど、それを私が輪島市の仕事として頑張って行くことで、よりよい輪島市にしていきたい、頑張っていきたいと気持ちを切り替えることができました。震災の中で頑張っている市民の気持ちに寄り添って、少しでも市民と一緒に輪島市をよりよくしていけたらいいなと思って仕事に取り組みたいと思います」