楽天グループ 金融事業の大規模再編検討の方針 正式発表

楽天グループは、傘下の金融事業の大規模な再編を検討する方針を正式に発表しました。銀行や証券、クレジットカードなどの子会社を1つのグループに集約して連携を強化するねらいで、各社の競争にも影響を与えそうです。

楽天グループは4月1日、傘下の銀行や証券、クレジットカードなど金融事業を行う子会社を再編し、1つのグループに集約する検討に入ることを正式に発表しました。

このうち楽天銀行は、今の上場を維持することを想定し、銀行の傘下にほかの子会社を置く案を軸に検討を進めるものとみられます。

楽天グループと楽天銀行が協議を開始することで1日に合意し、監督官庁の許認可を得たうえで、ことし10月までの完了を目指すということです。

一方、楽天証券ホールディングスについては、これまで目指していた上場を行わない方向で協議することにしています。

楽天は、グループ全体の決算が5年連続の最終赤字となり、その要因となっている携帯電話事業の黒字化を目指す一方、金融事業は好調な業績が続いています。

今回の再編を通じて、経営の効率化を図るとともに、それぞれの子会社の連携を強化するねらいがあります。

金融事業は、個人の資産運用の活発化やキャッシュレス決済の普及などを背景に業界の垣根を越えた競争が各社の間で激しさを増し、楽天の今回の再編は今後の競争にも影響を与えそうです。

◇楽天グループの金融事業とは

楽天グループの金融事業は、楽天銀行、楽天カード、楽天証券ホールディングスの合わせて3つの子会社に本体の「楽天グループ」が直接出資する形で傘下に置いています。

このうち楽天カードは、さらにその傘下に保険業務を行う「楽天インシュアランスホールディングス」と、キャッシュレス決済を手がける「楽天ペイメント」を置いています。

楽天証券ホールディングスは、さらにその傘下に「楽天証券」と、運用や投資助言を行う「楽天投信投資顧問」などを置いています。

一方、楽天銀行は株式を上場していて、楽天グループの出資比率は49%余りですが、実質的な経営権があるため子会社の位置づけとなっています。

今回の再編は、このように複雑な形となる金融子会社を1つのグループに集約することを目指します。

関係者によりますと、楽天銀行をグループの中心に置き、上場を維持したうえでその傘下にほかの金融子会社を置く案を軸に検討するということです。

ただ、銀行の直接の傘下にすべての子会社を置くのか、子会社といわゆる孫会社の形を維持することになるのかなど、再編後の具体的な体制は今後、検討することになります。

◆業界の垣根を越えた競争が激化

個人向けの金融事業は通信大手各社が力を入れ、業界の垣根を越えた競争が激しさを増しています。

NTTドコモは、ことし1月にマネックスグループの「マネックス証券」を子会社化したのに続き、3月にはオリックス傘下の「オリックス・クレジット」を子会社化すると発表しました。金融事業を強化し、優遇税制「NISA」や個人向け無担保ローンなどの事業を強化するねらいです。

KDDIやソフトバンクも、すでにグループ内に銀行や証券会社などを持ち、携帯電話事業とスマホ決済、ポイントサービスなどと連携する形で通信大手各社がいわゆる“経済圏”への囲い込み競争を繰り広げています。

こうした通信大手各社の動きに対し、金融業界も顧客の囲い込み競争を強化しています。

メガバンクグループでは、三井住友フィナンシャルグループがネット金融大手のSBIホールディングスに出資して資本業務提携を結んだほか、ポイント事業でも「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブと事業の統合を決めました。

また、楽天グループの傘下の楽天証券は、国内の株式の売買手数料の無料化でネット証券最大手のSBI証券などとの間ですでに顧客の獲得競争を繰り広げていて、業界の垣根を越えた競争は、さらに激しさを増しそうです。