新年度 多くの企業で入社式 初任給引き上げる企業も

新年度初日の1日、多くの企業で入社式が行われました。

このうち人材の確保に向け初任給を大幅に引き上げた日本製鉄の入社式では、およそ140人の新入社員が社会人としてのスタートを切りました。

東京・千代田区の日本製鉄本社で開かれた入社式では、1日付けで就任した今井正新社長が「グローバル事業の強化や脱炭素対策など困難な課題を乗り越えていくために社員一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮してほしい」と新入社員を激励しました。

会社は、アメリカの大手鉄鋼メーカーUSスチールの買収を発表するなど海外事業の強化を進めるほか、脱炭素化が業界共通の課題となっています。こうした中、人材の確保と強化が欠かせないとして新入社員の初任給を引き上げました。このうち大卒の総合職の初任給は月額で4万1000円引き上げ、26万5000円となっています。

新入社員の安部優志さんは「初任給の引き上げは驚くとともにうれしく思いましたが、給料に見合った活躍ができるようにしたい。周りの意見を吸収し、主体的に動いて成長していきたいです」と話していました。

初任給の引き上げは、航空や小売業界などさまざまな業種で広がり、若手人材の確保や定着に向けた企業の取り組みが活発になっています。

「金利のある世界」銀行の入社式は

横浜市で開かれた三菱UFJ銀行の入社式には新たに銀行に入ったおよそ350人が出席しました。

式では三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取があいさつし、「日本経済は失われた30年といわれる長期停滞から抜け出す大きなチャンスを迎えようとしています。世の中は変化を続け、非常にチャレンジングで同時にとてもやりがいのある時代だからこそ当行で成し遂げられることの可能性は無限大だ」と呼びかけました。

日銀が3月、マイナス金利政策などを解除したことで、今後、預金や貸し出しの金利上昇など「金利のある世界」の本格的な到来も想定されています。

これについて、新入行員の遠藤諒矢さんは「われわれにとっても新たな環境であり、お客様にとってもより難しく、重要な環境になってくる。一緒に乗り越えていけるよう伴走者のような支援をしたい」と話していました。

またこの銀行では、大学卒の新入行員の初任給が今年度から5万円引き上げられていて、これについて新入行員の野村桃花さんは「うれしく思っていて、初任給がもらえたら、家族や友人にごちそうしたい」と話していました。

東京都は5年ぶり対面で

また東京都では、新たに採用された新入職員に辞令を交付する「入都式」が開かれました。新型コロナウイルスの影響で対面で全員が参加するのは5年ぶりとなり、小池知事は都民の期待に応える仕事ができるようにと激励しました。

東京都には、今年度教員や、警察・消防の職員を除いておよそ1900人が採用され、豊島区の東京芸術劇場で開かれた式典には、およそ1700人が出席しました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「入都式」は、規模を縮小したり一部オンラインで実施されたりしていて、対面で全員が参加するのは平成31年度以来、5年ぶりとなりました。

式典では、小池知事が「いつも都民が第一の視点で都民の皆さんの期待に応える仕事ができるよう心がけてください。きょうからよろしくお願いします」と激励しました。

この後、新入職員の代表が「東京都職員としての責任と自覚を持ち全力で取り組むことを誓います」と宣誓しました。

式典のあと港湾局に配属されるという女性は「同期の顔を対面で見ることができてうれしかったです。私は東京都の出身で、東京に愛着があり志望しました。東京の物流を支えている港湾の維持管理に貢献したいです」と話していました。

新入職員は、2日以降、研修を受けながら業務につくということです。

「被災者に寄り添いながら」石川県庁では

石川県庁でこの春採用された職員の辞令の交付式が行われ、馳知事は、「能登半島地震で被災し、不安を感じている人たちに寄り添いながら、復旧や復興業務にあたってほしい」と訓示しました。

石川県庁では、1日から新たに採用された職員155人が入庁し、一人ひとりの名前や配属先が読み上げられたあと、馳知事から辞令が手渡されました。

そして馳知事は、「能登半島地震の被災者は1日1日がどうなるのかという不安を感じている。皆さんは県職員として被災者に寄り添い、市や町の職員とも連携しながら県民のために業務にあたってほしい」と訓示しました。

続いて、新入職員を代表し、厚生政策課に配属される土倉未来さんが「誠実・公正に職務を執行することを誓う」と宣誓しました。

石川県は、被災者の生活再建などを部局横断で進めていくため、新たな部署「復旧・復興推進部」を1日付けで立ち上げました。

「復旧・復興推進部」に配属される道下真優さんは、みずからも能登町で被災したということで、「被災者の気持ちが分かるので、思いに寄り添いながら少しでも早く復興できるよう業務に励みたい」と話していました。

外務省では

外務省で入省式が行われ、上川外務大臣が、外交官として一歩を踏み出した新人職員にエールを送りました。

外務省に新年度、新たに採用された職員は213人で、このうち半数あまりの111人が女性で、ここ数年、同じような傾向だということです。

上川大臣は入省式の訓示で「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している中、外交の果たす役割はかつてなく大きくなっている。困難があればあるほど工夫して乗り越えていくやりがいも大きい」と述べました。

その上で「日本外交の力の源は職員の皆さんの多様性だ。1人1人が、みずからがもたらす多様性に自信を持ち、自分の頭でしっかりと考え、議論を尽くしてほしい。巨大な組織の一つの歯車ではなく、大きなチームの1人のプレーヤーであってほしい」と激励しました。

式のあと、新人職員の赤木芙実加さんは「気が引き締まる思いだ。大臣の訓示で女性が活躍できる職場だと話していた部分に感銘を受けたので、これから頑張っていきたい」と話していました。

ことしの新入社員の特徴「新NISAタイプ」

民間の調査会社「産労総合研究所」は、学生や企業、それに大学などにアンケート調査を行い、毎年の新入社員の特徴をまとめています。

ことしの新入社員について、黒田正浩さんは、制度変更で選択の幅が広がった「新NISA」とかけて、『セレクト上手な新NISAタイプ』と表現し、その理由について、「自分なりのビジョンをしっかり持っている人が多く、世の中にたくさんの情報があふれる中で必要な情報を選び出して、効率的に目的を達成するプランを組み上げられる人が非常に多い」と評価しています。

新入社員を受け入れる会社へのアドバイスとしては、「自分が定めた目的には真面目に頑張れるが、仕事に納得感が得られないと『なぜこの業務をしなくてはいけないのか』と感じてしまう。仕事の指示を出す場合は、理由も含めて具体的に伝えてあげて、本人が納得できる道筋を示してあげることが大事だ」と提案します。

また、ことしの新入社員は、コロナ禍で学生時代を過ごし、キャンパスライフやアルバイト先などで、さまざまな人たちと対面で交流する機会が非常に少なかったことを指摘した上で、「目上の人と話す機会もかなり少なく、上司や先輩が普通に話しているつもりでも、すごくプレッシャーを感じたりまじめな顔だと怒られていると受け取ったりする人が多い」と分析しています。

こうしたことから新入社員へのメッセージとして、「上司や先輩は一生懸命頑張ってもらって、成長してほしいと願っている。怖がらずに積極的に話しかけ、コミュニケーションを図ることが大切だ」とエールを送っています。