こども家庭庁 あす発足1年 最重要課題の少子化 具体的な成果を

こども家庭庁の発足から4月1日で1年です。危機的な状況にある少子化への対応が引き続きの最重要課題で、児童手当の拡充などの新たな対策を国民の理解も得ながら実行に移し、具体的な成果につなげていけるかが問われています。

こども家庭庁は子ども政策を推進するため、去年4月に内閣府や厚生労働省の関係部局を一元化して発足し、12月には児童手当や育児休業給付の拡充などを柱とした「こども未来戦略」を策定しました。

発足から4月1日で1年となるのを前に、加藤こども政策担当大臣は「子ども政策の司令塔として、さまざまな取り組みを進めてきた。これを多くの方々にしっかり届けていく」と述べました。

最重要課題は引き続き、危機的な状況にある少子化への対応で、「未来戦略」の内容を盛り込んだ法案は後半国会で重要法案の1つとなる見通しです。

ただ、戦略をめぐっては、公的医療保険を通じて少子化対策の財源を集める「支援金制度」に野党側から批判が出ているほか、大学などの高等教育への経済支援が不十分だなどといった指摘もあります。

こども家庭庁には、財源の確保などに幅広い国民の理解を得ながら、新たな対策を実行に移し、具体的な成果につなげていけるかが問われています。

「こどもまんなか社会」の実現を掲げる

こども家庭庁は去年4月に発足して以降、「こどもまんなか社会」の実現を目標に掲げ、さまざまな取り組みを進めてきました。

政府全体で子どもに関する政策を強力に推進するため、12月にはこども基本法に基づいて、今後5年程度の子ども政策の方向性を定める初めての「こども大綱」を閣議決定しました。

「こども大綱」では、重点項目として
▽子どもの貧困対策
▽障害児などへの支援
▽児童虐待や自殺を防ぐ取り組みの強化
などを掲げています。

また
▽子どもや若者が安心して過ごせる居場所づくりを進めるための指針
▽幼児期までの子どもの育ちを切れ目なく支援するための指針
も新たに策定しました。

令和6年度はさまざまな取り組みが具体的に動き出すことになり、このうち、政府による「次元の異なる少子化対策」の一環として
▽児童手当の抜本的な拡充
▽4・5歳児の保育士の配置基準の見直し
▽子どもが使用する車椅子や補聴器などの費用を補助する制度の所得制限の撤廃
などが予定されています。

また、すべての子どもの育ちを支えることを目的に、政府が創設を目指す「こども誰でも通園制度」の試行的な事業も、令和6年度から全国各地の自治体で開始されることになっています。

さらに、子どもを性犯罪から守るため、子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことなどの確認を求める制度「日本版DBS」の導入に向けた法案を、今の国会に提出し会期内での成立を目指しています。

制度の施行は公布後2年半以内となっています。

政府はこの1年で27のテーマについて、子どもや若者のべ2600人から対面やオンラインなどで意見を聴いてきたということで、今後、こうした当事者の声を政策にどこまで反映させていけるのかも課題になります。

審議会委員「若者の意見を政策に反映 評価」

若者のまちづくりへの参画を進めるNPO法人の代表で、こども家庭庁の審議会委員のひとり、土肥潤也さん(29)は「これまでは子どもは支援の対象であり、大人たちが施策を考えてきたが、子ども本人の視点が不在だった。こども家庭庁が子どもや若者の意見を聴いて政策に反映しようとしていることは大きく評価できる」としています。

中でも、こども家庭庁が取り組む「こどもの居場所づくり」について、「不登校の子どもが増える中、さまざまな環境で学べる場所を作ることが重要だ。学校外にも子どもや若者の居場所を作ることを政府が推進していくと示したことも評価できる」としています。

一方で、情報発信について、「少子化対策に終始している印象で、政府から子どもを産むように押しつけられている感じがするという若者の声も聞くので、もっと子どもを中心にした政策の推進や情報発信を広げてほしい。子どもたちに権利があるということを学校でも教えるなど、こども家庭庁がリーダシップを発揮して、学校教育とも密に連携してほしい」と訴えていました。

親や専門家 取り組み評価も周知が課題

こども家庭庁の取り組みについて、子ども政策の方向性を定めた初めての「こども大綱」をつくるなど、国が基本的な考え方や理念を定めたことについては評価する声が上がる一方で、子育て世帯などの当事者にどう周知していくのかが課題となっています。

横浜市の子育て支援施設を訪れていた2歳の双子を育てる女性は「誰でも保育園に通えるようになる取り組みは友人との間でも話題になっていたので、期待はあります」と話していました。

一方、1歳の長女を育てる女性は「発足したことは知っているものの、直接自分にいい影響があったかというと、まだ感じられないです」と話していました。

この子育て支援施設を運営する「NPO法人びーのびーの」の奥山千鶴子理事長は去年、政府が閣議決定した幼児期までの子どもの育ちを切れ目なく支えるための指針づくりに携わりました。

こども家庭庁の取り組みについては「子どもとその周りの家族への支援を法令化し、こども大綱をつくるなど、国が基本的な考え方や理念を定めてきたのは非常に大事なことで、今後、都道府県や市町村の事業計画などにどう反映させていくのかが重要になる」と、一定の評価を示しました。

そのうえで、今後の課題として、「国の少子化対策などの取り組みが本格的にスタートするのはこの4月以降となるため、変化を十分に感じるのはまだ難しいと思う。子育てをスタートした人たちが社会に応援されていると実感できるような制度や支援体制ができてはじめて、子どもや若者が結婚や子どもをもつことをイメージできるようになると思うので、自治体だけでなく、NPOや企業も巻き込んで、子育てしやすい社会を作っていく必要がある」と指摘しています。