政府 シェルターの整備方針決定 沖縄の5市町村に新施設

有事に備え、政府は、住民を守るシェルターの整備方針を決めました。
沖縄の5つの市町村に堅ろうな構造の新たな施設を作るほか、全国に5万か所以上ある一時的な避難施設もシェルターと位置づけ、設備の拡充を検討するとしています。

整備方針では、いわゆる「台湾有事」なども念頭に、近接する沖縄の先島諸島の住民を守る対策を強化する必要があるとして
▽石垣市
▽宮古島市
▽与那国町
▽竹富町
▽多良間村の
5つの市町村に「特定臨時避難施設」とする新たなシェルターを作るとしています。

「特定臨時避難施設」は、ミサイルの爆風にも耐えられるよう、外壁の厚さが30センチ以上ある鉄筋コンクリートの堅ろうな構造にし、国の財政支援を受けた自治体が公共施設などの地下に設けるとしています。

また、避難者1人当たり2平方メートル程のスペースを確保し、備蓄倉庫や電気・通信設備なども備え、2週間程度は身を寄せられる環境を整える計画です。

一方、有事への対応をめぐり、政府は、全国の頑丈な建物など5万6000か所以上を「緊急一時避難施設」に指定してきていますが、これらもシェルターに位置づけ、設備の拡充を検討するとしています。

政府は、自治体などとも連携し、整備方針の具体化を進める考えです。

沖縄 玉城知事「説明は十分ではない」

沖縄県の玉城知事は29日夕方、県庁で記者団の取材に応じ「シェルターが必要になった時にどれくらいの人数が入るのか、シェルターはどこにつくるのか、先島諸島だけでいいのかなど、いくつか確認させてもらわないといけない点がある」と述べ、政府に詳細な説明を求めていく考えを明らかにしました。

そのうえで「かねてから『対話による平和構築こそが日本が取るべき正しい外交手段だ』と言い続けてきた。基地の計画ありき、配備ありき、シェルターの建設ありきでは説明は十分ではない。平和であるための取り組みをどうするのかということも含めて説明を受けたい」と述べました。

石垣市 中山市長「シェルター早急につくる必要ある」

沖縄県石垣市の中山市長は29日夕方、市役所で記者団に対し「有事が起こった際は全島民を避難させる想定だが、航空機・船舶などで避難させるのに時間がかかるので、間に合わなかった場合や、最終的に残る市の職員や消防、警察などの担当者が万が一逃げ切れない場合に避難する場所が必要で、最低限必要なシェルターは早急につくる必要がある」と述べました。

そのうえで「今回示された武力攻撃を想定した避難施設の確保にかかわる基本的な考え方や技術ガイドラインを踏まえ財源の確保など必要な手続きを進めていく」と話していました。

石垣市は
▽今後、整備が進む市役所に隣接する防災公園のほか
▽老朽化した消防本部庁舎の建て替えや
▽消防本部の西出張所を新設する際に「地下シェルター」の整備を検討しているとしています。

宮古島市 座喜味市長「国と連携取りながら整備進める」

沖縄県宮古島市の座喜味市長は「同時に公表されているシェルターにかかる技術的ガイドラインを参考に国と連携を取りながら整備を進めていく」とするコメントを発表しました。

与那国町 避難計画の担当者「安心して避難できる態勢整う」

与那国町で住民の避難計画を担当する洲鎌浩二 課長補佐は「台湾が近く、『国境の島』だということで、今の避難施設はとても堅ろうとは言えないのでシェルターができることで住民が安心して避難できる態勢が整うと考えている」と話していました。

そのうえで「まずは町役場の新庁舎の地下駐車場を避難施設にするよう進めていくことになるが、施設の大きさや収容人数については今後調整しながら検討していきたい。また、与那国町としては、町役場の新庁舎に続き、久部良地区と比川地区にも避難シェルターを整備できるよう、国と連携していきたい」と述べ将来的には島内の3か所にシェルターを整備したい考えを示しました。

竹富町 前泊町長「9つの島抱える町 各島に必要」

竹富町の前泊町長は「町は9つの島を抱えているので基本的には各島々にシェルターが必要だと思う。島民の皆さんの意見を聞いてどれくらいシェルターが必要なのか検討していきたい」と述べました。

竹富町では西表島の大原に建設する方向で調整を進めている新たな庁舎の地下に駐車場を設けて、有事の際には島に残らざるをえない人のためのシェルターとして利用したい考えで、去年、政府に対して地下駐車場の整備に対する財政支援を求めています。

多良間村 担当者「シェルターに残る具体策を」

政府が「特定臨時避難施設」とする新たなシェルターを作る方針を示したことについて、沖縄県多良間村の担当者は「シェルターを使う事態が起きないことを望むが、村としては、万が一を考えればシェルター機能は必要だと以前から考えていた。外部から孤立した場合でも2週間程度は電気や水が使えるというのも安心材料だ」としています。

外国からの武力攻撃が予測される事態に備えた国民保護をめぐって、国は、多良間村について島外へ避難して熊本県で受け入れる計画の具体案を熊本県に示していて、村は「先島諸島は畜産の島でもあり、村内には人口の3倍にあたるおよそ3000頭の牛がいる。島外避難になった場合も、牛の世話をする農家や行政の担当者など40人近くをシェルターに残ることができるよう具体策を考えてもらいたい」とコメントしています。