【29日詳細】人道支援の措置命じるICJにイスラエル反論

ガザ地区の人道状況が深刻さを増すなか、ICJ=国際司法裁判所はイスラエルに対し、人道支援が確実に届くよう、搬入ルートの拡大などあらゆる措置を講じることを、追加の暫定措置として命じました。
これに対し、イスラエル外務省は「必要不可欠な支援物資の流入は制限していない」などと反論しています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間3月29日の動きを随時更新してお伝えします。

ICJ「ガザ地区の生活環境さらに悪化 すでに飢きん始まる」

イスラエル軍は29日、ガザ地区北部のシファ病院でハマスの軍事部門の幹部を殺害したとしているほか、ガザ地区の中部や南部でも軍事作戦を続けています。

ガザ地区の保健当局は、過去24時間で62人が死亡し、死者数は3万2552人にのぼるとしています。

戦闘が続くなか、ICJ=国際司法裁判所は28日、「ガザ地区のパレスチナ住民の生活環境がさらに悪化し、すでに飢きんが始まっている」という認識を示し、イスラエルに対し、人道支援がガザ地区全体のパレスチナの人々に確実に届くよう、すみやかに国連と協力し、支援物資の搬入ルートの拡大などあらゆる措置を講じることを命じました。

イスラエル「必要不可欠な支援物資の流入 制限していない」

これに対して、イスラエル外務省の報道官は29日、「必要不可欠な支援物資の流入は制限していない。イスラエルは、人道支援を含む法的義務を果たすべく努力をしている」などと反論しました。

また、ネタニヤフ首相は28日、ガザ地区で拘束されている人質の家族たちと面会し、「強力な軍事的圧力の継続によってのみ人質を取り戻すことができる」と述べたうえで、ラファへの地上作戦の準備を進めていると明らかにしました。

イスラエルが強硬な姿勢を崩さないなか、国際司法裁判所の命令が人道状況の改善につながる見通しはたっていません。

UNRWA事務局長 日本の資金拠出再開に期待

ガザ地区の人道支援を担うUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関をめぐって、一部の職員が去年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いがもたれ、日本を含む主要な援助国の多くが資金の拠出を停止しました。

日本を訪れているUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は29日、NHKなどの取材に応じ、「ガザ地区では人々が飢えて亡くなっていて、もはや支援は時間との闘いになっている」と強い危機感を示しました。

そのうえで、「資金が枯渇すれば、ガザ地区の支援だけでなくUNRWA職員の立場も危うくなる。ガザ地区では未曽有の人道危機が発生していて、現地に拠点をおく私たちの活動を継続することは極めて重要だ」と訴えました。

ガザ地区の人道危機が深まるなか、3月に入ってカナダやスウェーデン、フランスなどが相次いで資金拠出の再開を表明していて、去年6番目の拠出国だった日本の対応も焦点になっています。

ラザリーニ事務局長は「日本とは70年にわたってパートナーシップを築いてきた。財政的な貢献に加え政治的な支援にも期待したい」と述べ、日本も拠出を再開することに期待を示しました。

一方で、最大の資金拠出国だったアメリカについては「2025年3月まで拠出の再開はないと決定されていて、私たちの活動に影響を及ぼすだろう」と懸念を示し、資金不足を補うために、従来の支援国に加えて、新たに拠出を申し出ている東南アジアなどの国々の協力を仰いでいく考えを示しました。

ラファ地上作戦「政府や軍が住民退避計画」イスラエルメディア

イスラエルメディアは28日、住民150万人が身を寄せる南部ラファへの地上作戦について、政府や軍が住民を退避させるための詳細な計画をたてていると報じました。

このなかでは、南部ハンユニスや北部ガザ市を退避先として挙げ、軍関係者が住民の退避に1か月から2か月かかるという見方を示したと伝えています。

ラファへの地上作戦をめぐっては、後ろ盾となっているアメリカも「住民の安全を確保した計画であることが重要だ」とイスラエル側に伝えるなど、国際社会から懸念の声が強まっていて、イスラエルとしては国際社会の懸念を払拭させながら、具体的な検討を進めているものとみられます。

ただ、イスラエルが去年、ガザ地区北部の住民に対し、南部への退避を通告し住民が避難を強いられたことについても、国際法違反にあたる可能性が指摘されていて、再び多くの住民が避難を強いられれば、国際社会から批判の声が高まりそうです。

ガザ地区当局「シファ病院避難の200人以上が処刑された」

イスラエル軍は28日もガザ地区各地で軍事作戦を続けていて、このうち、北部のシファ病院では3月18日以降、戦闘員およそ200人を殺害したと発表しました。

一方、ガザ地区の地元当局は「入手可能な情報によれば、シファ病院に避難していた200人以上が処刑され、およそ1000人が拘束された」として、イスラエル軍を強く非難しています。

フランス政府 UNRWAへの資金拠出 再開する方針明らかに

ガザ地区の人道支援を担いながら日本を含む各国が資金拠出を停止していたUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関について、フランス政府は拠出を再開する方針を明らかにしました。

UNRWAをめぐっては、一部の職員が去年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いがもたれ、主要な援助国の多くが資金の拠出を停止しましたが、ガザ地区の人道状況が悪化するなか、今月に入り、カナダやスウェーデン、オーストラリアなどが拠出の再開を発表しています。

こうしたなか、フランス外務省のルモワーヌ報道官は28日の記者会見で、「UNRWAが憎悪や暴力を呼びかけず使命を果たす条件が満たされているかを確かめながら貢献を続ける」として、フランスも拠出を再開し、年内に3000万ユーロ以上、日本円で49億円以上の拠出を行うことを明らかにしました。

日本を訪れているUNRWAのラザリーニ事務局長は28日に上川外務大臣と会談し、組織改革の取り組みについて説明を行っていて、日本も拠出の再開に踏み切るのか注目されています。