国内最古の蒸気機関車 SL人吉ラストラン
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3月23日、博多駅と熊本駅の間での運行を最後に引退したJR九州の観光列車「SL人吉」。
沿線や駅には、たくさんの人たちが駆けつけて最後の走りを見届けました。
引退と復活を繰り返し、100年を超えて九州を駆け抜けた蒸気機関車。
その歴史と、SLを愛した人たちの思いを取材しました。
(熊本放送局記者 藤崎彩智)
沿線や駅には、たくさんの人たちが駆けつけて最後の走りを見届けました。
引退と復活を繰り返し、100年を超えて九州を駆け抜けた蒸気機関車。
その歴史と、SLを愛した人たちの思いを取材しました。
(熊本放送局記者 藤崎彩智)
大正生まれの蒸気機関車
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「SL人吉」をけん引したのは、1922年(大正11年)11月18日に完成した「8620」形「58654号機」、通称「ハチロク」と呼ばれる蒸気機関車です。
JR九州によりますと、蒸気機関車の国産化が本格的に始まった時代につくられ、営業運転するものとしては国内最古です。
はじめに長崎県の浦上機関区に配置されたあと、福岡県、鹿児島県、大分県、佐賀県、熊本県と、九州各地で活躍しました。
完成から50年あまり後の1975年3月、役割をいったん終えて、肥薩線の矢岳駅で大切に保存されていました。
JR九州によりますと、蒸気機関車の国産化が本格的に始まった時代につくられ、営業運転するものとしては国内最古です。
はじめに長崎県の浦上機関区に配置されたあと、福岡県、鹿児島県、大分県、佐賀県、熊本県と、九州各地で活躍しました。
完成から50年あまり後の1975年3月、役割をいったん終えて、肥薩線の矢岳駅で大切に保存されていました。
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1988年8月。
この蒸気機関車は、豊肥本線の熊本駅と熊本県阿蘇市の宮地駅の間で「SLあそBOY」として復活しました。
雄大な阿蘇山をのぞむ車窓の景色や、急なこう配を運行する際に進行方向を転換するスイッチバックを楽しむことができることから人気を集めてきましたが、部品の老朽化により運行開始から17年となる2005年8月に引退しました。
この蒸気機関車は、豊肥本線の熊本駅と熊本県阿蘇市の宮地駅の間で「SLあそBOY」として復活しました。
雄大な阿蘇山をのぞむ車窓の景色や、急なこう配を運行する際に進行方向を転換するスイッチバックを楽しむことができることから人気を集めてきましたが、部品の老朽化により運行開始から17年となる2005年8月に引退しました。
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しかしSLの復活を望むファンたちの声を受けて、福岡県北九州市のJR九州の工場で約2年をかけて大規模な改修作業が行われました。
SL人吉として復活 多くの人を魅了
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保守整備を終えた蒸気機関車は2009年4月から、「SL人吉」として鹿児島本線の熊本駅と、熊本県人吉市にある肥薩線の人吉駅の間で運行を始めました。
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吹き上げる蒸気や甲高い汽笛の音、それにすぐ近くを流れる球磨川の雄大な景色を楽しめることなどから、観光客や地元の人たちを魅了しました。
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しかし2020年7月の記録的な豪雨により肥薩線は、球磨川にかかる長さ205メートルの「球磨川第1橋りょう」と、長さ179メートルの「第二球磨川橋りょう」の2本の橋が流失。
さらに線路の土台部分が流されるなど450か所で被害を受け、運行ができなくなりました。
さらに線路の土台部分が流されるなど450か所で被害を受け、運行ができなくなりました。
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2021年5月からは、運行する区間を変更し、鹿児島本線の熊本駅と佐賀県の鳥栖駅の間を走り始めました。
しかし完成から約100年となる蒸気機関車の老朽化がさらに進み、部品の調達やメンテナンスを担う整備士の確保も難しいことから運行を終えることになりました。
しかし完成から約100年となる蒸気機関車の老朽化がさらに進み、部品の調達やメンテナンスを担う整備士の確保も難しいことから運行を終えることになりました。
ラストランを見送った人たちは
3月23日。
SL人吉は博多駅と熊本駅の間で最後の営業運転、ラストランを迎えました。
SL人吉は博多駅と熊本駅の間で最後の営業運転、ラストランを迎えました。
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博多駅では出発式が行われ、午後1時50分頃、出発の合図で甲高い汽笛と蒸気をあげながら、熊本駅に向けて出発しました。
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沿線で見送る人たちの歓声に大きな汽笛で応え、また停車駅では、最後の走りを見届けようとたくさんの人たちが集まりました。
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午後4時50分頃に到着した熊本県玉名市の玉名駅には約10分間停車。
ホームでは家族連れや鉄道ファンなどが大勢集まり、記念撮影をしたり「おつかれさま ありがとう」などと書かれたパネルを掲げたりして別れを惜しんでいました。
ホームでは家族連れや鉄道ファンなどが大勢集まり、記念撮影をしたり「おつかれさま ありがとう」などと書かれたパネルを掲げたりして別れを惜しんでいました。
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出発の際には地元のコーラス隊の人たちが「蛍の光」を歌って見送りました。
コーラス隊の60代男性
「運転が終わってしまうのが残念です。もっと元気なSL人吉を見ていたい気持ちです」
「運転が終わってしまうのが残念です。もっと元気なSL人吉を見ていたい気持ちです」
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熊本市北区の沿線では「SL人吉 ありがとう さようなら」と書かれた長さ18メートルの巨大な看板などが設置され、近くの住民らが集まりました。
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午後5時16分頃、黒い煙と大きな汽笛をあげて通過すると、集まった人たちはスマートフォンなどで映像におさめたり、SL人吉が書かれた旗などを振ったりして見送りました。
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看板を設置した太田行雄さん(71)
「黒煙をあげて駆け抜ける最後の走りは最高でした。見ている人と乗客、機関士、それに機関車が1つになったようで、うれしかったですが、さびしくもあります」
「黒煙をあげて駆け抜ける最後の走りは最高でした。見ている人と乗客、機関士、それに機関車が1つになったようで、うれしかったですが、さびしくもあります」
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博多駅を出発して約4時間後、SL人吉は終点の熊本駅に到着しました。
ホームには約500人が詰めかけました。
ホームには約500人が詰めかけました。
乗車した男性
「沿線の人、地元の人問わず手を振っていたのが印象的で、みんなに愛された列車だったのだと感じました。最後にいい思い出ができ、本当によかった」
「沿線の人、地元の人問わず手を振っていたのが印象的で、みんなに愛された列車だったのだと感じました。最後にいい思い出ができ、本当によかった」
運行を支える人たちの思い
そして蒸気機関車はもう1つの終点、熊本市西区の熊本車両センターに向かいます。
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そこは蒸気機関車が整備士や機関士などの定期検査や点検を受けてきた場所です。
ラストラン前に取材した整備士の1人は作業を振り返り「年上だけど、わが子のようでした」とも話していました。
ラストラン前に取材した整備士の1人は作業を振り返り「年上だけど、わが子のようでした」とも話していました。
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熊本車両センターでは機関士や機関助士が待っていました。
薄い青色の「ナッパ服」と呼ばれる専用の制服と帽子をかぶった機関士たちが出迎えました。
暗い車庫の中で照明に照らされ、黒く光った蒸気機関車は最後の点検を受けました。
薄い青色の「ナッパ服」と呼ばれる専用の制服と帽子をかぶった機関士たちが出迎えました。
暗い車庫の中で照明に照らされ、黒く光った蒸気機関車は最後の点検を受けました。
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そして「2列横隊!」のかけ声で蒸気機関車の前に並んだ12人の機関士たちは約5秒間敬礼し、「お疲れ様でした」と声をかけて頭を下げました。
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機関士 岡部恭教さん
「沿線の人の見送りがすごく、仕事ができたことがよかったです。本当はもっともっと長く走ってもらいたいと思っています」
「沿線の人の見送りがすごく、仕事ができたことがよかったです。本当はもっともっと長く走ってもらいたいと思っています」
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のべ41万4000人を乗せたSL人吉は、約15年の運行を終えました。
SL人吉をけん引した蒸気機関車について、JR九州は人吉市からの「展示して保存したい」との要望などを受けて、市に無償で譲渡することを決めました。
市民からは「新たな観光名所になる」と歓迎の声があがっています。
緑豊かな景色を背景に力強く駆け抜ける姿が、九州のひとつの風景ともなってきたSL人吉。
走る役割を終えてもなお、多くの人の記憶に残り、愛され続けていくのでしょう。
(3月25日「クマロク!」などで放送)
SL人吉をけん引した蒸気機関車について、JR九州は人吉市からの「展示して保存したい」との要望などを受けて、市に無償で譲渡することを決めました。
市民からは「新たな観光名所になる」と歓迎の声があがっています。
緑豊かな景色を背景に力強く駆け抜ける姿が、九州のひとつの風景ともなってきたSL人吉。
走る役割を終えてもなお、多くの人の記憶に残り、愛され続けていくのでしょう。
(3月25日「クマロク!」などで放送)
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熊本放送局記者
藤崎彩智
2021年入局
警察・司法担当などを経て、2023年8月から熊本市政を担当
豪雨からの復旧や鉄道など経済も継続取材
藤崎彩智
2021年入局
警察・司法担当などを経て、2023年8月から熊本市政を担当
豪雨からの復旧や鉄道など経済も継続取材