新年度予算が成立 参院本会議で採決 自公両党など賛成多数

一般会計の総額が112兆円余りとなる新年度・令和6年度予算は参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。

新年度予算案は28日、参議院予算委員会で締めくくりの質疑のあと採決が行われ、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。

これを受けて参議院本会議ではまず討論が行われ
◇自民党の中西祐介氏は「避難生活が続く被災地の不安や物価高、生活コストや社会構造の変化に伴う国民の将来への憂いなど、現下の課題に即応する政策を実現しなければならない。強い責任感と覚悟で政策と予算を実現する政治の力が今、求められている」と強調しました。

◇立憲民主党の小沼巧氏は「政治不信に拍車をかけている象徴が自民党政治と『裏金』をめぐる大問題だ。国民からの厳しい指摘を受けても、なぜ何も変わらず、何も明らかにしないのか。『裏金』疑惑や不公正な政治姿勢が凝縮された政府予算案に反対票を投じるべきだ」と訴えました。

そして、採決が行われた結果、自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立しました。

新年度予算は、一般会計の総額が112兆5717億円と、2年連続で110兆円を超え、過去2番目の規模となっています。

令和6年度予算 その内訳は

28日の国会で可決・成立した新年度・令和6年度予算は、一般会計の総額が112兆5717億円。

過去最大だった今年度・令和5年度の当初予算を1兆8095億円下回ったものの、2年連続で110兆円を超えました。

【歳出】
主な歳出では
▽高齢化や少子化対策の強化に伴い、社会保障費が37兆7193億円と、今年度の当初予算より8506億円増えて歳出全体の3分の1を占めています。

また、
▽防衛費も翌年度以降の防衛力強化に充てる分を除いて7兆9172億円と、1兆1292億円増えました。

▽これまで発行した国債の償還や利払いに充てる国債費は、長期金利の上昇を踏まえて利払い費が増加することを見込み1兆7587億円多い、27兆90億円。

▽災害の復旧費用などに充てる予備費は能登半島地震を受けて1兆円に倍増したほか、これとは別に
▽物価高騰などに対応するための予備費として1兆円を計上しています。

【歳入】
一方、歳入では
▽税収を今年度の見通しとほぼ同額の69兆6080億円と見込んでいます。

このうち、
▽法人税は企業業績の回復傾向を反映して今年度を2兆3840億円上回る、17兆460億円と見込んでいるほか
▽堅調な消費や物価の上昇を踏まえて、消費税も8310億円多い、23兆8230億円と見込んでいます。

一方、
▽所得税は、定額減税で2兆3000億円の減収が想定されるため、3兆3900億円減って17兆9050億円としています。

これに各省庁が所管する「基金」からの返納金など、税外収入を加えても不足する35兆4490億円は新たに国債を発行して賄う計画で、財源の3割以上を国債に頼る厳しい財政状況が続いています。

また、これに伴って普通国債の発行残高は、来年3月末には29兆円増えて1105兆円となる見通しです。

鈴木財務相「被災地の状況など踏まえ迅速かつ着実な執行を」

鈴木財務大臣は新年度=令和6年度予算の成立を受けた記者会見で「能登半島地震の復旧・復興への対応はもとより歴史的な転換点のなか、変化の流れをつかみ取るための予算だ。被災地の状況などを踏まえつつ、予算の迅速かつ着実な執行を進めていく」と述べました。

そのうえで、今後の財政運営について鈴木大臣は「日銀がマイナス金利の解除という大規模緩和策の修正を行った。今後のリスクとして気をつけなければいけないのは長期金利の動向だ。国債の利払い費が増加すれば政策的経費が圧迫されるおそれがあり、財政の持続可能性への信認が失われることがないよう適切な舵取りを行っていく」と述べました。

自民 茂木幹事長「スピード感を持って執行」

自民党の茂木幹事長は「新年度予算には能登半島地震からの復旧・復興など、わが国が直面する内外の諸課題の解決に向けたさまざまな施策が盛り込まれており、スピード感を持って執行していきたい。国会の会期末まで3か月を切り、重要政策の推進に向け、提出法案や条約の成立に万全を期していく」というコメントを出しました。

立民 泉代表「『裏金問題』引き続き追及」

立憲民主党の泉代表は記者団に対し「本来、予算の議論をしなければならないのに、自民党はずいぶん『裏金問題』の追及に時間を割かせる状況をつくり、真実を語らなかった。森元総理大臣の証人喚問も必要になってきており、引き続き追及していく。新年度予算は、少子化対策の支援金制度が不透明なままで、ごまかしを続けて国民負担が増える状況を強行するのは誠実性を欠き問題がある」と述べました。

維新 馬場代表「抜本的な構造改革にチャレンジすべき」

日本維新の会の馬場代表は記者会見で「国内外ともに問題は山積しており、国民が安心して暮らしていくための税や社会保障、働き方などの改革を強烈に進める時がきている。新年度予算には問題点があり、予算が成立したから一安心ではなく、抜本的な構造改革にチャレンジすべきだ。政治とカネの問題も、真実が究明されていないというのが国民の思いだ。引き続き、あらゆる機会を通じて追及していく」と述べました。

公明 山口代表「政治資金規正法の改正 合意形成を進めたい」

公明党の山口代表は記者団に対し「予算には賃金と物価の好循環を促進するための施策や能登半島地震の復旧・復興の財源の裏付けとなる予備費などが盛り込まれており、必要な現場や待ち望む人々に一刻も早く届けたい」と述べました。

また後半国会について「政治に対する国民の不信感が強まり与党に対する支持も非常に厳しい状況であり、信頼回復に向けて再発防止策を積極的に議論して効果的な内容に仕上げることが重要だ。自民党の奮起を促して早く政治資金規正法の改正の具体案を提案してもらい、国会での合意形成を進めていきたい」と述べました。

共産 小池書記局長「証人喚問 徹底的に求めていく」

共産党の小池書記局長は記者団に対し「成立した予算は、国民の切実な願いに応えることができないものだ。社会保障を充実させ中小企業を支援することと、大軍拡を進めることは矛盾しており両立しない。自民党政治を終わらせるために全力をあげて奮闘する決意だ。予算審議を通じて、自民党の派閥ぐるみの裏金づくりが大問題になり、いよいよ証人喚問が必要な段階に来たので徹底的に求めていきたい」と述べました。

国民 玉木代表「政治とカネの問題 幕引きにならず」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し「5月以降のガソリン代が上がり、中小企業の賃上げに水を差す可能性がある予算であり、反対だ。予算が成立したからといって、政治とカネの問題が幕引きになるわけではない。事実の全体像を明らかにすることなく、適切な処分も法改正もできないので、証人喚問などで改めて全容解明を強く求めていきたい」と述べました。

れいわ 山本代表「自民党と資本家だけが潤う『ドロボウ予算』」

れいわ新選組の山本代表は「能登半島地震や不況による経済災害の被災者を切り捨て、自民党と資本家だけが潤う『ドロボウ予算』だ」とするコメントを出しました。

後半国会の焦点は

後半国会では自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けた政治資金規正法の改正が最大の焦点となります。

近く設置される政治改革を議論するための特別委員会で◇収支報告書に虚偽記載があった場合に国会議員も責任を負う「連座制」の導入や、◇収支報告書のデジタル化など、罰則の強化や透明性の向上が検討される見通しです。

国会として実効性のある再発防止策を講じるため、与野党でどのような合意点を見いだせるかが注目されます。

このほか▽経済安全保障上、重要な情報へのアクセスを国が信頼性を確認した人に限定する「セキュリティークリアランス」制度の創設に向けた法案や、▽児童手当や育児休業給付の拡充などを盛り込んだ法案をめぐっても与野党の活発な論戦が交わされる見通しです。

政治日程の焦点は

今後の政治日程の焦点の1つが、政治とカネをめぐる問題への国民の批判が高まる中、来月28日に行われる東京15区、島根1区、長崎3区の3つの衆議院の補欠選挙です。

補欠選挙は、ときの政権運営に影響を与えてきただけに、結果が注目されます。

衆議院の解散・総選挙の時期もポイントです。

6月の国会会期末を経て、秋までに自民党総裁選挙を控えているのに加え、10月には衆議院議員の任期が残り1年となります。

岸田総理大臣がいつ解散に踏み切るのか、与野党でさまざまな見方が出ていて、今後、各党の動きや発言が活発になることも予想されます。

一方、岸田総理大臣は、来月、国賓待遇でアメリカを訪問するほか、6月にはイタリアでのG7サミットも予定されるなど、外交日程も続きます。

ことしはアメリカ大統領選挙など、国際情勢を左右する重要な選挙が相次ぐことから、岸田総理大臣にとっては、国内外で難しいかじ取りを迫られる局面が続きそうです。