障害者への「合理的配慮」4月から民間事業者にも義務化

4月1日に「改正障害者差別解消法」が施行され、民間の事業者も障害のある人の求めに応じて合理的な配慮を行うことが義務づけられることを受けて、都内の会社では28日、障害者に配慮した接し方などを学ぶ研修会が開かれました。

“合理的な配慮” の理解深める研修会 都内企業

研修を開いたのは、企業向けの会計ソフトなどを提供している東京・品川区のIT関連会社で、営業担当の社員などおよそ40人が参加しました。

4月1日に施行される「改正障害者差別解消法」では、国や自治体だけでなく民間の事業者も、障害のある人から困りごとなどについての申し出があった場合に合理的な配慮を行うことが義務づけられます。

研修では、声に障害がある人などへの理解を深めるため、口にマスクをつけて会話ができない状態などでコミュニケーションを体験し、パソコンに文字を打ち込むと音声で読み上げるソフトを活用するなどして意思疎通を図りました。

このあと合理的な配慮のあり方について意見を交わし、会社の受け付けに聴覚障害のある人が訪れた場合には、社内で情報を共有して手話ができる社員を探し、対応すべきだといった意見などが出されていました。

参加した30代の社員
「人によって欲しい情報や支援が違うと思うが、いろいろなツールを使ってできるだけ対応したい」

研修を企画した社員の1人で全盲の中根雅文さん
「改正法の施行によって社会全体が急速に変化することはないかと思いますが、中長期的にみれば何かの結果に結びつくかもしれないと、当事者が思い始めるきっかけになると思います」

この会社では、今後も継続的に研修を行いたいとしています。

「改正障害者差別解消法」負担重すぎない範囲で “配慮” 求める

4月1日に施行される「改正障害者差別解消法」。

最大のポイントは、国や自治体などだけではなく、民間の事業者に対しても、障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務づけられる点です。

内閣府によりますと、「合理的配慮の提供」とは、障害のある人が社会生活を送る上で障壁となっているものについて、取り除いて欲しいと求めがあった場合に、障壁を取り除くための行動を行うこととされています。

例えば、段差がある場合にはスロープなどをつけて補助することや、筆談をする際に文字が小さくて読みづらい場合には、大きな文字を書くことなどです。

こうした配慮は負担が重すぎない範囲で行うとされ、食事の介助を行っていない飲食店が介助を求められた場合に断ることなどは法律に違反しないと考えられるということです。

一方で、前例がないとして個別の事情を検討せずに一律に対応を断ることや、「もし何かあったら」という漠然としたリスクを理由に対応しないことなどは避けるべきだとしています。

違反行為を繰り返した場合などには、国から報告を求められたり、指導や勧告を受けたりする可能性があります。

内閣府は、社会的な障壁を取り除くためには障害のある人と事業者が対話を重ねてともに解決策を検討することが重要だとしています。

また、法律に関する質問や障害を理由とする差別に関する相談窓口を設置していて、電話やメールで受け付けています。

電話相談 0120-262-701(午前10時~午後5時 祝日除く)

メールでの相談 info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp

障害者への意識調査 配慮不十分で諦める場合も

障害のある人からは、日常生活のさまざまな場面で「合理的配慮」が不十分だとする声があがる一方、配慮の足りない対応をされても諦めて何もしないという人は少なくありません。

弁護士や学識経験者、民間企業で作るグループは去年、障害のある人を対象に「合理的配慮」に関する意識調査をオンラインで行い、2362人が回答しました。

このなかで、日常生活で合理的配慮が不十分だと思う場面について複数回答で尋ねたところ、
▽「仕事や職場」が40%と最も多く、
▽「公共交通機関」が36%、
▽「買い物や飲食などのサービスを利用する時」が29%
などとなりました。

自由記述では、
「筆談を求めても応じてもらえなかった」とか、
「買い物をした時の袋詰めを拒否された」などの声が寄せられたということです。

また、「合理的配慮」が提供されないと感じたときの対応について尋ねた質問では、
▽「何もしない」が31%と最も多く、
▽「問い合わせ窓口がわからず諦めている」
という声も多くあったということです。

調査を行った企業の担当者は、「障害のある人のなかには、自分たちの声を事業者側にどう届けたらいいかわからず、SNSに不満を投稿して炎上するケースも散見され、事業者側も硬直した態度になってしまうこともある。障害のある人が利用しやすい問い合わせ窓口を用意するなど建設的な対話ができる素地をつくることが重要だと思う」と話しています。

専門家「普通のサービスを障害者にも 対話で合意形成を」

障害のある人への「合理的配慮の提供」が民間の事業者にも義務づけられることについて、障害者政策に詳しい静岡県立大学の石川准名誉教授は、「健常者の人たちが普通に得られているサービスを、障害者も得られるようにするための調整や変更をしてほしいということが法律の趣旨であって、特別なサービスや待遇を行う必要があるわけではない」と指摘しています。

また合理的配慮の範囲について飲食店を例に挙げ、「視覚障害者であればトイレの場所まで店員が案内すること。聴覚障害者であれば筆談で注文できるようにすることなどが合理的配慮にあたる。一方で店から自宅まで送迎するようなことはあたらない。合理的配慮の範囲が際限なく広がっていくことは考えられないので、事業者は過度に心配しないでほしい」と話しています。

その上で、「障害者は、自分が困っていることを遠慮なく穏やかに相手に伝える。事業者は、対応が可能なことと難しいことを、分かりやすく説明する。こうした対話を通して両者で合意を形成することで、障壁をなくしていくことが大事だ」と訴えています。