高校野球 大阪桐蔭が勝ち準々決勝へ 西谷監督は歴代最多勝利

センバツ高校野球、大会8日目の第3試合は、大阪桐蔭高校が鹿児島の神村学園に4対2で勝って準々決勝に進みました。大阪桐蔭の西谷浩一監督は、これで春夏の甲子園通算の勝利数が「69」となり、単独で歴代最多となりました。

大阪桐蔭 競り勝ち8強へ 西谷監督は甲子園勝利数が最多に

大阪桐蔭は、1対1と同点の3回、2アウト一塁で3番の徳丸快晴選手が低めの変化球をうまくすくい上げて、センターの頭上を越えるタイムリースリーベースを打ち、1点を勝ち越しました。

5回には、俊足の1番、境亮陽選手がフェンス直撃の大きな当たりを打ち、ボールが跳ね返って転がる間に、一気にホームにかえって大会第3号となるランニングホームランで1点を追加しました。

さらに続く6回にも1点を加えてリードを広げ、主導権を渡しませんでした。

投げては森陽樹投手と中野大虎投手の2年生、2人の継投で神村学園の強力打線を2点に抑え、大阪桐蔭が4対2で勝って準々決勝に進みました。

大阪桐蔭の西谷浩一監督は、これで春夏の甲子園通算の勝利数が「69」となり、単独で歴代最多となりました。

神村学園は、3点を追う9回に、4番の正林輝大選手が、この試合3本目のヒットとなるタイムリーツーベースを打って1点を返し、粘りを見せましたが、反撃は及びませんでした。

大阪桐蔭 西谷監督 甲子園勝利数 単独で歴代最多に

大阪桐蔭を指揮する西谷浩一監督が、春夏の甲子園であげた勝利数が合わせて69勝となり、智弁和歌山高校などを率いた高嶋仁さんを上回って、単独で歴代最多となりました。

54歳の西谷監督は、報徳学園から関西大を経て1998年に大阪桐蔭の監督に就任しました。甲子園で初めて指揮をとった2005年の夏に、監督として初勝利をあげたあと勝利を重ね、センバツと夏の全国高校野球で、それぞれ4回ずつチームを優勝に導いていて、合わせて8回の優勝経験は歴代最多となります。

出場校で最長となる5年連続の出場を果たしたことしのセンバツでは、1回戦で北海道の北海高校に勝って、最多記録に並んでいました。

◇春夏の甲子園 監督の通算勝利数

◎1位 69勝:西谷浩一監督 大阪桐蔭(大阪)
◎2位 68勝:高嶋仁 元監督 智弁和歌山/智弁学園(奈良)
◎3位 58勝:中村順司 元監督 PL学園(大阪)
◎4位 54勝:馬淵史郎監督 明徳義塾(高知)
◎5位 51勝:渡辺元智 元監督 横浜(神奈川)
◎5位 51勝:前田三夫 元監督 帝京(東京)

《大阪桐蔭 監督・選手談話》

西谷浩一監督「ここまで来たら 一戦一戦集中して」

西谷浩一監督は、甲子園での勝利数が単独で歴代最多となったことについて「私の数字ではなく、これまでのOBを含めた選手が積み重ねてきた結果です。うれしく思っています」と笑顔を見せました。
継投で相手の強力打線を2点に抑えた2年生2人については「2人で投げ切れたことは大きいと思う」と好投をたたえました。
特に5回から登板した中野大虎投手については「上級生を合わせても一番気持ちが強く誰もが認めるハートの強さがあり、1球1球魂を込めて投げてくれました」と話しました。
そして「ここまで来たら楽に勝てる試合など1つもないと思います。一戦一戦集中していきたいです」と気を引き締めていました。

徳丸快晴選手「期待に応えることができよかった」

1安打2打点と活躍した徳丸快晴選手は「きのう、西谷監督から『あしたは打ってくれると信じている』と声をかけていただいたので、期待に応えることができてよかったです」と話しました。
28日以降の試合については「自分のスイングをしっかりして、バッティングでチームを引っ張りたいです」と意気込んでいました。
また、西谷監督の甲子園での勝利数が単独で歴代最多となったことについては「OBの方たちの積み重ねでこの数字が大きくなっているので僕たちも乗っかっていきたいです」と話しました。

境亮陽選手「バットに当たった瞬間 伸びてくれと」

ランニングホームランを打った境亮陽選手は「バットに当たった瞬間、伸びてくれと思いました。監督からは、『ナイスバッティング』と言われて、チームも盛り上がっていたのでうれしかったです」と打席を振り返りました。
そして「新基準のバットでボールが飛びにくくなった気はしますが、自分の足は変わりません。速さを活かしたプレーをしたいです」と自慢の俊足について話しました。

◆大阪桐蔭“キーマンは経験豊富な3年生”

「カギになるのは徳丸とラマル」

試合前、大阪桐蔭の西谷浩一監督は2人の名前を挙げました。

徳丸快晴選手とラマル ギービンラタナヤケ選手。去年のチームでも甲子園を経験した3年生が試合のキーマンになると考えていたのです。

ベスト8をかけたこの試合、先発に抜てきされたのは甲子園初登板となる2年生の森陽樹投手でした。最速150キロを超える注目のピッチャーですがさすがに緊張の色は隠せず、ピッチング練習からストレートが高めに浮いていました。

「少し空回りしているのを感じていた」と西谷監督が言うように、立ち上がりの1回、先頭バッターにフォアボールを出し、ランナーを三塁に進められたあと、みずからのワイルドピッチで先制点を許しました。

そんな森投手に徳丸選手は「1点取られてもすぐに取り返せば問題ない。焦っていたら相手に流れがいくのでしっかり余裕を持って行こう」と声をかけたといいます。

そしてその言葉のとおり、徳丸選手は直後の1回ウラの打席で犠牲フライを打って同点に追いついたほか、3回には勝ち越しのタイムリースリーベースも打ちました。

援護をもらった森投手は立ち直って4回までを1失点に抑えたほか、その流れを受けて登板した2年生の中野大虎投手も好投を見せました。

徳丸選手は「下級生のころからずっと試合を経験しているので引っ張っていかないといけないと思っています。バッティングだけでなくベンチでの声かけもチームが悪い雰囲気にならないように意識してやっています」と、プレー面でも精神面でも西谷監督の期待に応えました。

西谷監督が徳丸選手について「試合の前に『全然役に立てていないから、もうそろそろやってよ』と声をかけた。よくやってくれたけど、もっともっと活躍してほしいですね」と冗談を交えて話す様子に、信頼の厚さがうかがえました。

もう1人の「キーマン」ラマル選手もヒットを打ったほか、ファーストの守備で好プレー。さらに状態が落ち気味だったという3年生の境亮陽選手も自慢の俊足をいかしたランニングホームランを打つなど3安打の活躍で、チームを引っ張りました。

大舞台の経験豊富な頼もしい3年生たち。

そしてその支えを受け、神村学園の強力打線を2点に抑えた2年生のピッチャー陣。

互いの力がかみ合ったこの試合は、センバツ5回目の優勝を目指す大阪桐蔭のチーム力の高まりを感じさせるものになりました。

《神村学園 監督・選手談話》

小田大介監督「ピッチャーみんな粘り強く投げてくれた」

敗れた神村学園の小田大介監督は「エースの今村のコンディションがあまりよくない中で5人のピッチャーの継投になったが、みんな粘り強く投げてくれた。バッターに対して逃げるのではなく、とにかく強い気持ちでストライクゾーンに投げ込んでみろと伝えていた」と話しました。
また、9回に2点差に迫った場面については「本当によく1点を返してくれた。意地を見せられたと思うし、次につながる1点になった」と振り返りました。
そして、今後へ向けて「よい点も課題も見つかった。私自身も悔しいし、選手のほうがもっと悔しい思いをしていると思う。また夏に向けてあすから準備していきたい」と話していました。

正林輝大選手「守備でミスが多かったので負けた」

4番 正林輝大選手は「強いチームと対戦できてよかったですが悔しいという気持ちが強いです。自分たちの持ち味である守備でミスが多かったので、そこで負けたと思います」と試合を振り返りました。
また、9回にタイムリーツーベースを打った場面については「次へつなぐ意識を持って打席に入りました。前の打席では変化球で空振り三振だったのでその反省を生かして捉えることができてよかったです」と話しました。
正林選手はこの試合、3本のヒットを打ったほか前の試合ではホームランも打っていて「自分自身のバッティングは甲子園でも通用するとわかりました。これからは警戒もされると思うので、もっと恐れられるようなバッターになりたいです」と話していました。

◆神村学園 “不動の4番” 最後の夏に向けて

「もっと恐れられるバッターになりたい」

正林輝大選手はそう言い残し、甲子園を去りました。

神村学園の「不動の4番」である正林選手はこの冬、新基準のバットに対応するためトレーニングを重ねてきました。筋力トレーニングでパワーの向上を図るだけでなく、さらなるミート力が必要と感じ、テニスや陸上のやり投げを参考にしながら打撃フォームの見直しにも取り組みました。

そんな正林選手が、強力なピッチャーがそろう「投手王国」大阪桐蔭を相手にどのようなバッティングを見せるのかが、この試合の注目点の1つだったと言えます。

1回の初打席では、森陽樹投手の140キロを超えるストレートをセンター前へ。9回には中野大虎投手の高めに浮いた変化球を振り抜き、2点差に迫るタイムリーツーベース。チームは敗れましたが、正林選手は2年生ピッチャー2人を相手に3安打と意地を見せました。

今大会を通しての成績は2試合でホームランを含むヒット5本、3打点。打率にすると、ベスト4に入った去年夏の甲子園を上回る5割超えの活躍です。

「全国のトップレベルの投手陣を相手に、低反発のバットで長打も単打も出たのは、自分にとって自信になりました」

正林選手は確かな手応えを口にする一方で、決して満足はしていませんでした。

「自分より上のバッターはいっぱいいるなと思ったし、その選手たちを越えたい。これからは警戒もされると思うけれど、もっと恐れられるようなバッターになりたいです」

「大きく輝け」という願いが込められた名前のとおりの活躍を甲子園で見せた正林選手。しかし、目標とする日本一にチームを導くためにはさらなる成長が求められます。

最後の夏に向けて「不動の4番」がどのような輝きを見せるのか、期待が高まります。