石川 輪島と珠洲 孤立に備えた衛星携帯電話など配備されず

能登半島地震で通信が途絶え、多くの地区と一時連絡が取れなくなった石川県輪島市と珠洲市で、地域防災計画で「配備に努める」としていた衛星携帯電話などが、2つの市のどの地区にも配備されていなかったことがわかりました。
市の担当者は「多数の地区に配備することはコスト面などを考慮すれば難しかった」などとしています。

輪島と珠洲 地震のあと各地で固定電話や携帯電話使えず

輪島市と珠洲市では、能登半島地震のあと各地で固定電話や携帯電話が使えなくなり、道路の寸断も相次いだため、多くの地区と一時連絡が取れなくなりました。

このため被害の状況の把握が難しくなったほか、地区の住民が物資などを要請することができなくなったということです。

「災害に強い通信機器配備に努める」防災計画に明記するも

今回のような状況に備えて、輪島市と珠洲市はそれぞれの地域防災計画に「孤立化が懸念される山間地集落などには、衛星携帯電話などの災害に強い通信機器の配備に努める」と明記していますが、元日の地震が発生した時点で、2つの市のどの地区にも衛星携帯電話などの通信機器は配備されていなかったことが市への取材でわかりました。

通信手段の確保をめぐっては、2004年に発生した新潟県中越地震で孤立する集落が相次いだことを受けて、国が全国の自治体に「提言」を出して対応を促しています。

配備が行われていなかったことについて、それぞれの市の担当者は「衛星携帯電話などを配備する計画はあったが、多数の地区に配備することはコスト面などを考慮すれば難しかった」などとしています。

道路が寸断 集会所に住民100人余が避難

輪島市町野町の金蔵地区は、土砂崩れや倒木で指定避難所に向かう道が寸断されました。

区長を務める井池光信さんによりますと、やむをえず近くの集会所を自主避難所とすることになり、100人余りの住民が身を寄せたということです。

しかし、固定電話と携帯電話で連絡を取ることができなくなったため、地区の状況を市などに伝えられませんでした。

幸い、おせち料理などを持ち寄ることで食料は確保できましたが、飲み水の備蓄はなく、お年寄りや小さな子どもが体調を崩す懸念があったということです。

地区の区長「自分たちの状況伝えられず もどかしかった」

井池さんは「備蓄が尽きたり、体調を崩す人が出たりすれば助けに来てもらわないといけないので、自分たちの状況を伝えられないのはもどかしかったです」と話していました。

井池さんは地震の発生から2日後、急斜面の林の中を歩くなどしてなんとか最寄りの市の支所にたどりつき、職員に初めて地区の状況を伝え、翌日、自衛隊のヘリコプターで物資が届いたということです。

井池さんは「乳幼児がミルクを飲むための水がなかったので、なんとかしなければと険しい道を歩きました。真っ暗な夜が何日続くのかわからないままだと不安になるとも感じました。衛星携帯電話の備えはあるべきだと思いました」と話していました。

専門家「徒歩移動できるエリアに1つだけでも通信手段を」

防災や減災に詳しい関西学院大学の照本清峰教授は「孤立集落などの状況を伝えられない場合、救急救命や物資の調達を要請できずに災害関連死につながるおそれがある」と指摘しています。

そのうえで「いざという時のために衛星携帯電話などの通信手段を配備しておくことは重要だ。すべての集落に備えられなくても、徒歩で移動できるエリアに1つだけでも通信手段を確保しておくべきだ。そして、通信手段がある場所に行けば状況を伝えられることを住民が事前に知っておく必要がある」と話していました。